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なぜ炎上したのか?陰謀論ではなく、正しい文脈で理解すべきコオロギ食を扱う上場企業

2023.03.26

敷島製パン(Pasco)が販売する食用コオロギの粉末を練り込んだコオロギパンが、SNS上で大炎上しました。昆虫食はその見た目から、忌避されがちなものの一つ。食品として提供されることに嫌悪感や、甲殻類アレルギーに対する危機感がネガティブな共感を呼びました。やがて、企業が政府から補助金や利権を狙っているとのデマにまで拡大してしまいます。

敷島製パンはKorogi Caféの公式ホームページにて、コオロギ食品が他の製造ラインとは異なること、他の製品にコオロギパウダーが使われないことなどを目立つように告知しました。

コオロギ食は陰謀論ではなく、正しい文脈で解釈する必要があります。

コオロギ食が地球を救うと言われる3つの理由

コオロギ食は、長らく持続可能な社会を実現するものとして語られてきました。敷島製パンは製パン業界第3位の一流企業であり、意味もなくゲテモノ商品を扱っているわけではありません。国内を代表する企業だからこそ、SDGsへの取り組みとしてコオロギ食を事業化していたのです。

コオロギ食のメリットは3つあります。1つ目は食糧危機解消に期待されていること。2つ目は牛などと比べて環境負荷が低いこと。3つ目はコオロギの飼育が手軽なものであり、貧困問題の解決に貢献することです。

世界の人口は2050年に98億人に達すると言われています。中間層の増加により、動物性タンパク源の不足が危惧されています。牛肉、豚肉、鶏肉の世界的な生産量は増加し続けています。人口の増加と中間層の拡大によって今後も増えることが予想されます。

しかし、需要が増加するからといって、畜産農家を無限に増やせるわけではありません。

農畜産業振興機構より

しかも、気候変動によって農作物の不作も深刻化。ウクライナ情勢も重なって、家畜用の配合飼料が高騰しました。不測の事態で食肉単価が上がり、貧困家庭を中心にタンパク源が不足する可能性もあります。

食肉生産は農場を作り、長い時間をかけて飼育します。牛の可食部1㎏の生産に必要な餌は25㎏。水は22,000ℓ必要と言われています。そして温室効果ガスを2,850g排出します。

その一方で、同じ可食部の生産に必要なコオロギの餌は牛肉の1/12、水は1/52。温室効果ガスは1/1780と言われています。

生産効率が極めて高く、環境負荷が低いのです。

ファインシンター「焙煎コオロギ飴の販売予定(店舗・Web)についてのお知らせ」より

業界をけん引する大手企業にこそ昆虫食が求められた

畜産は広大な土地を手に入れ、飼育に必要な器具や道具を揃えなければなりません。まとまった設備投資資金が必要な事業です。しかし、昆虫の飼育には広い土地が必要なく、ケースに入れて積み上げることができます。

コオロギは温かい場所を好み、日本のように四季があるエリアでの飼育は向きません。東南アジアの気候が向いていると言われ、タイやカンボジアでの飼育が盛んです。コオロギの飼育は低投資で行えることから、東南アジアを中心とした貧困対策にも貢献します。

2006年に国連が「責任投資原則」を提唱しました。投資家が投資の意思決定をするに当たり、ESGの観点を考慮すべきであるというものです。このころから、企業と投資家は持続可能な社会活動に取り組むようになりました。食品を扱う一流企業がコオロギ食に手を出すのは、むしろ自然な流れだったと言えます。

昆虫食への理解者は1割にも満たない

ただし、消費者の理解は進んでいません。日本トレンドリサーチは、昆虫食に関するアンケートを実施しています。

「昆虫食をしてみたいと思いますか?」との質問に対して思うと答えたのはわずか9.1%。1割にも届いていません。

※日本トレンドリサーチ「昆虫食に関する調査」より
https://trend-research.jp/12913/
https://www.nexer.co.jp/

消費者は昆虫食に対して興味を持っておらず、あえて食べようとはしていません。一部の意識の高い人だけが、栄養価が高い、社会貢献ができるなどの理由で進んで商品に手を伸ばしています。

コオロギ食が大炎上した際、1年前に河野太郎大臣が試食した写真が出回りました。このように、影響力のある有名人がパフォーマンスしなければ浸透しないのです。

消費者の理解が得られないのは、昆虫食の一番の課題でしょう。社会貢献をしようとした企業の取り組みが、陰謀論の文脈で語られてしまった今回のケースが、それをよく物語っています。

NTTがコオロギの飼育環境をデータ化

今後、コオロギ食は株価を良い意味でも悪い意味でも、揺さぶる存在にかるかもしれません。コオロギを扱う会社にどのようなものがあるでしょうか。

良く知られているのがNTT。NTTは2023年1月にベンチャー企業のグリラスと共同で、食用コオロギのスマート飼育を目指す実証実験を開始しました。NTT中央研修センター内にコオロギの飼育施設を設置。稼働後は一般見学の受付も予定しており、飼育風景を見ることができます。

NTTは餌や温度などのデータを集積し、飼育にかける手間を極限まで省こうとしています。この技術が確立されれば、誰でも簡単にコオロギを飼育することができるでしょう。生産者を増やすことができます。

自動車や鉄道向けのギヤ、すり板などの製造を行うファインシンターもコオロギ食に積極的の企業の一つ。もともと熱処理や粉末加工技術に強みがあり、コオロギの燻製や粉末化に目をつけました。

2023年3月には「コオロギスナック」「コオロギラーメン」に次ぐ、「焙煎コオロギ飴」を販売しています。

「無印良品」の良品計画もコオロギ食の商品開発に邁進中。コオロギ粉末入りのチョコレートやせんべいを販売しています。良品計画はサステナビリティへの取り組みを積極化しており、コオロギ食もやはりその流れから生まれたものです。

こうした企業の取り組みが消費者の理解を得られるのか。そこが一番のポイントになります。

取材・文/不破 聡

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