こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
裁判例をザックリ解説します。
「休憩時間なのに、休憩できねー!」と会社を訴えた事件です。結果、従業員が残業代をゲットしました。
以下の方は残業代をゲットできる可能性があります。
・休憩時間も顧客が来たら対応しなければならない
・休憩時間なのに「電話がなったらとれ」と言われる
以下、くわしく解説します(クアトロ(ガソリンスタンド)事件:東京地裁 H17.11.11)
登場人物
▼ 会社
ガソリンスタンドを経営(24時間営業)
▼ Xさんら
スタンド従業員:4名
どんな事件か
▼ 休憩できないやん
このガソリンスタンドには「休憩時間も客が来たら仕事してね」という決まりがありました。
従業員雇用規定
申し訳ありませんが休憩している間も営業に支障をきたさないように業務を優先して行ってください。休憩時間内に業務を行った場合はその分を振り替えて他の時間に取って頂けるようにお願いします
この決まりのせいで従業員はぜんぜん休憩できなかったようです。
▼ 基本的に1人体制
というのも、このガソスタは基本的に1人体制だったからです。なので、食事をしていても顧客が来たら「いらしゃいませー!」と対応し、トイレに行くことも難しかったようです。
▼ 従業員の不満が限界突破
そこで従業員4名が「休憩をとれない!この時間は労働時間だ!」と主張し、残業代を求めて提訴しました。
裁判所の判断
従業員の勝訴です。裁判所は「休憩とれてないじゃん。これは労働時間ね。残業代を払いなさい」と命じました。
▼ 休憩時間とは?
そもそも休憩時間とは、休息するために【労働から完全に解放されている時間】のことをいいます。その時間はアナタのわがままに自由に過ごせるんです
労働基準法 34条3項
使用者は〜休憩時間を自由に利用させなければならない
▼本件
裁判所は「食事をしていても顧客が来たらと対応せねばならず、トイレに行くことも難しかった」とし「これは休憩時間じゃねー。労働時間だ」と認定しました。
会社は「顧客が途切れてスタンド内で待機している時に休憩をとれるんです」と主張しましたが、裁判所は「休憩をとれる保証がないのでコレは労働時間といえる(手待時間)」と判断。
■ 外出禁止
というのも、このガソスタでは休憩時間は外出禁止だったんです。じゃー客が来たら対応する必要がある。休める保証ねーじゃんってことです。
ほんで、なんぼ?
▼ 残業代
裁判所が命じた残業代は以下のとおり。
Aさん 約65万円
Bさん 約67万円
Cさん 約65万円
Dさん 約37万円
★ 慰謝料も
これはめずらしいです。裁判所は「慰謝料も払え」と命じました。
A〜Cさん 20万円
Dさん 10万円
理由は以下のとおり。
・食事ができないトイレに行けないという精神的苦痛
・会社は2年くらい前から「この扱い違法かも」って気づいてたよね
(以前にも訴訟を提起されていた)
・従業員と交渉したときも賃金を引き下げるような提案をしてたよね
裁判所は「従業員が苦しんどるのに、この会社不誠実やなー。けしからん!」と感じたんだと思います。
ほかの裁判例
裁判所が「休憩時間になっても30分くらいは顧客対応してたよね。この分、残業代を払え」と判断したケースがあります(日本ケミカル事件控訴審:東京高裁 H29.2.1)
薬剤師さんのケースです。「休憩時間でも来客対応しなさいよ」と暗にプレッシャーがかけれられていたようです。以下、判決文より引用。
さいごに
休憩時間に何だかんだ顧客対応をさせられている人は残業代を請求できる可能性があります。電話番をさせられている人も多いですね。仮に毎日30分だったとしてもチリツモで残業代がマシマシになります。
休憩時間を自由に過ごせない方がいれば労働局に申し入れてみましょう(相談無料・解決依頼も無料)。労働局からの呼び出しを会社が無視することもあるので、そんな時は社外の労働組合か弁護士に相談しましょう。
今回は以上です。「こんな解説してほしいな〜」があれば下記URLからポストして下さい。ではまた次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。
webメディアで皆様に知恵をお届け中。「
https://hayashi-jurist.jp(←
https://twitter.com/