日本の生命線の左サイドを担う中村、前田への期待も
ただ、三笘をスタメンでエースと位置づけるのなら、左のジョーカーも考えておかなければいけない。その候補者と言えるのが、今季オーストリア1部で公式戦14ゴールを奪っている新星・中村敬斗(LASKリンツ)。2000年生まれの22歳のアタッカーで、左からのドリブルの迫力は三笘に負けじ劣らずというレベルだ。2017年U-17W杯(インド)、2019年U-20W杯(ポーランド)と年代別代表も経験したエリートで、負けん気は人一倍強い。三笘と中村を併用できるようになれば、森保監督の戦い方の幅も広がる。今回のシリーズでは必ずどこかで彼をトライしてほしい。
名波コーチと談笑する中村(筆者撮影)
そしてもう1人、前田大然も左サイドで使える有益な人材。というのも、所属のセルティックではそのポジションに入ってドリブラーとして凄みを増しているからだ。
「元オーストラリア代表のハリー・キューウェルさんが今季途中からチームのコーチになって『もっと仕掛けろ』と言われるようになってから、ドリブル突破にトライするようになりました。失敗してもいいから前へ前へ行く姿勢を強く求められています」と前田も新たなスタイルを貪欲に追い求めていることを明かす。あれだけの速さとスプリント力を持つ男をこの位置で使えれば、また違った色合いが左サイドにもたらされる。選択肢はとにかく広いのだ。
前田大然もカタールW杯とは違ったプレーを見せるだろう(筆者撮影)
このように、新生ジャパンの攻撃は左サイドが大きなカギになる。三笘を筆頭に中村、前田、時には久保もここに入ることがあるかもしれないだけに、興味は尽きない。カタールと同じことをやっていても、北中米W杯で勝てない。しかも、48カ国に増える次の大会からは8強入りのために決勝トーナメントで2回勝たなければいけなくなるのだ、だからこそ、森保監督はどんどん新しいことにチャレンジすべきだ。
まずはウルグアイ戦である。ここで三笘らが期待通りの大活躍を見せてくれれば、明るい未来が開けてくる。注目の男の一挙手一投足を見逃してはならない。
森保監督と話をする堂安も注目(左端から中村、菅原=筆者撮影)
取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。