3. こんなことも犯罪? 意外な軽犯罪法違反の例
軽犯罪法では、非常に多岐にわたる秩序違反行為が違法・犯罪とされています。たとえば、以下のような行為も軽犯罪法違反に当たります。
・廃墟に潜伏する行為
・学歴詐称
・身体の一部をみだりに露出する行為
・田んぼや畑へ勝手に入る行為
3-1. 廃墟に潜伏する行為
人が住んでおらず、かつ看守していない邸宅・建物・船舶の内部に、正当な理由なく潜伏する行為は、軽犯罪法違反に当たります(同法1条1号)。
このような邸宅等は住居侵入等罪(刑法130条前段)の対象外ですが、治安維持の観点から、潜伏行為を軽微ながらも犯罪としたものです。
3-2. 学歴詐称
学位などの法令で定められた称号を詐称する行為は、軽犯罪法違反に当たります(同法1条15号)。
たとえば、就職活動の際に学歴を詐称する行為などは、軽犯罪法違反です。
3-3. 身体の一部をみだりに露出する行為
公衆の目に触れるような場所において、公衆に嫌悪の情を催させるような方法で、尻・ももなど身体の一部をみだりに露出する行為は、軽犯罪法違反に当たります(同法1条20号)。
「公衆に嫌悪の情を催させるような方法」が要件とされているため、正当な表現行為と認められる場合などは、軽犯罪法違反に当たりません(たとえばコスプレイベントで、ある程度露出度が高めのコスプレをするなど)。
なお、性器を露出するなどの「わいせつな行為」に及ぶ場合は、より重い犯罪である「公然わいせつ罪」が成立します(刑法174条)。
※わいせつ行為:いたずらに性欲を興奮・刺激させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義に反する行為(最高裁昭和32年3月13日判決参照)
3-4. 田んぼや畑へ勝手に入る行為
正当な理由がなく、他人の田畑に無断で侵入する行為は、軽犯罪法違反に当たります(同法1条32号)。
農業従事者にとって重要な財産である田畑が、不法侵入によって荒らされることを防ぐための規定です。なお、作物を勝手に収穫して持ち帰った場合は「窃盗罪」が成立します(刑法235条)。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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