ジャック・ドーシーとウォルト・ディズニー
2013年12月24日、ドーシーはウォルト・ディズニーの社外取締役にも就任しています。
とはいえ、これは結果的には一時的な就任となり、2018年には退任しています。
そもそもドーシーが就任した背景にはディズニー側がツイッターの買収を検討していたことが背景にあり、その可能性がなくなったことと、当時Twitterも動画配信事業に力を入れており、両社の利害関係の対立が大きくなることから、社外取締役の再任はなくなりました。
こうしたディズニーとの関わりも少なからずドーシーが第2のジョブズといわれた理由でもあります。なぜなら2006年にディズニーはピクサーを買収したことで、ディズニーの個人筆頭株主になったのがジョブズであり、同じ構図ではないもののジョブズとドーシーの縁を感じる出来事でもあったのです。
イーロン・マスクとの関係
イーロン・マスクといえば昨年Twitterを買収したことは記憶に新しいと思います。
この買収に際してドーシーはイーロンがTwitterの買収意向を発表した際に「イーロンが信頼できる唯一の解決策だ」と好意的な発言をしています。
ところが、いざイーロンがTwitterを買収して大量解雇を断行した際に、Twitter社員がドーシーを非難しました。これに対してドーシーは「今回の責任は私にあり、会社の規模を急激に大きくし過ぎたことが要因である。そのことについて謝罪する」と述べています。
ちなみにTwitterはイーロンが株式を100%買い取る形で2022年10月27日に買収完了後、ニューヨーク証券取引所への株式上場が廃止となっています。
おわりに ジャック・ドーシーによる次の一手「Web5」
歴史に「if」はないといわれますが、FacebookのザッカーバーグがもしもTwitterを買収していたら、現在のソーシャルメディアの在り方も随分と変わったかもしれません。
もしもドーシーに最初の退任がなければ、実際にツイッターが買収されていたのかどうか分かりませんが、仮に買収されていたとすると、Facebookはソーシャルメディアの大部分のシェアを握っていたかもしれません。
両社の違いはTwitterが匿名であるのに対してFacebookは実名であることです。
この場合、両社のUIがどのように変化していたのか想像を巡らせます。
Facebookが実名を崩していのか、それとも1つのアカウントで両方のサービスを使えるようになっていたのでしょうか。もしかしたらTwitterの特徴を上手く活かせなかった可能性もあるでしょう。いずれにせよソーシャルメディアの歴史的な出来事になったことは間違いありません。
またドーシーの次の一手を考える上で重要なキーワードになりそうなヒントは「Web3」に対して不満を公言していることです。ドーシー曰く、Web3はWeb2と同じく疑わしいものであり、Web3の代替案として「Web5」というビジョンを発表しています。
これはWeb3の方向性が間違っているという哲学が起点となっており、このプロジェクトの今後の広がりにも注目です。
最後にドーシーの仕事のスタイルに触れておきます。
ドーシー自身はノートパソコンは使わず、ほぼ全ての仕事を「メモ帳」アプリで完結させているといいます。これも「やること」「やらないこと」を区別して、できるだけシンプルであろうとするドーシーのこだわりでもあるのです。
またドーシーはまだ46歳という若き経営者であることも忘れてはなりません。
今後、TwitterやBlockを凌駕するサービスを立ち上げていても何ら不思議ではないのです。
1人のビジネスパーソンとして、同時代を生きるドーシーの次の一手に注目ではないでしょうか。
今回の米国起業家列伝シリーズは天才起業家ジャック・ドーシーについての解説でした。
文/鈴木林太郎