【AJの読み】産業廃棄物の在り方を変える石坂産業の取り組み
工場見学や三富今昔村を散策すると、すれ違う社員の方々が気持ちよく挨拶をしてくれる。また、工場見学のガイドや三富今昔村のスタッフなど、多くの女性社員が活躍しているという印象を受けた。
「性別や国籍、年齢を問わず多彩な人材を活用することにも力を入れています。当社の代表取締役(石坂典子氏)が女性ということもあり、全体の3割、間接部門では5割が女性社員です。
戦略的に女性を採用してきたのではなく、環境や地域保全に興味がある学生さんが増えている、女性代表のリーダーシップに魅力を感じているなどで、優秀な女性が集まるようになりました。社員は20、30代が50%と若い世代が多いですが、最高齢は78歳。ライフスタイルに合わせた働き方として、人によって雇用形態を変えており、農園や清掃を担当している部署では半日だけ働くシニア層が活躍しています」(石坂産業 専務取締役 石坂知子氏)
同社では福利厚生、多様な人材の登用など快適な環境づくりの施策を打ち出している。2017年に完成した社員専用の「プラント休憩棟」は、ウッドテラスのあるカフェテリアのようなスペースで、横になって休むことができる大広間も完備している。
社員と搬入のトラックドライバーを対象にした「しあわせキッチン」では、働く人の健康を考えた、地元で採れた野菜や「金芽米」といった栄養価の高い身体にやさしい素材を使った食事やお弁当を提供している。
石坂産業の環境への取り組みは高い評価を受けており、国内のみならず、世界40カ国以上から環境教育関係者が視察に訪れている。2月には、石坂典子社長が審査員を務める、ロフトワーク主催の循環型経済をデザインするグローバル・アワード「crQlr Awards」のイベント「crQlr Summit 2023 JAPAN」が開催。世界30カ国の企業・団体・スタートアップ・デザイナーなど131点の応募の中からプロジェクト53点が受賞した。
参加者は工場見学や、サーキュラーエコノミー実現に向けた動向や課題についてディスカッションを実施。crQlr Awards 2022受賞者で、打楽器奏者・楽器発明家の「みらい楽器ラボ」原創平氏や、ミュージシャンの和田永氏が率いるELECTRONICOS FANTASTICOS!による演奏会も行われた。
産業廃棄物の在り方や産廃業界のイメージを変え、「廃棄物」という言葉そのものをなくすことをミッションとしている石坂産業。工場見学で同社の「ごみにしない技術」を目の当たりにして、「ごみを出さないライフスタイル」や「循環型経済」について改めて考える機会となった。
文/阿部純子