■連載/FIREの向こう側
世はすっかり「FIREブーム」。資産運用でお金を殖やし、「経済的な自由を得よう!」とうたう記事やテレビ番組がずいぶんと増えた。が、それらに現実味を感じることができずうんざりしている人も多いだろう。
どうしてFIRE(Financial Independence,Retire Early)は遠いものに感じてしまうのか――『投資をしながら自由に生きる』の著者で、自身もFIREしたという投資家の遠藤洋さんに、本企画では素朴な疑問をぶつけてみることで「自由に生きる」ための方法を探っていきます。
Question「経営者は、オン/オフを切り替えるのが上手な人が多くないですか?」
「経営者の中には、オフの時間や遊びの最中でも急にスイッチが入って仕事モードに切り替わる方が多くいます。そういった方はどうやってオン/オフを切り替えているのでしょうか?」(45歳・会社員・男性)
Answer「常に頭の片隅に仕事を意識している。オフの時間こそ、ビジネスにつながるチャンスやヒントがあることを知っているから」
私自身もそうですが、仕事と休みのオン/オフの垣根があまりなく、いつでもオンになれるんですよね。周りの経営者や優秀な方も、仕事とプライベートの時間のスイッチの切り替えがめちゃくちゃ早くて、無意識にサクサク切り替えている人が多いと思います。
どうしたら仕事とプライベートのオン/オフを素早く切り替えることができるのか。今回はこのテーマについてお話ししたいと思います。
注意を向けた情報だけ気づく「カクテルパーティー効果」
「カクテルパーティー効果」って知っていますか? 1953年にイギリスの認知心理学者エドワード・コリン・チェリーによって提唱されたもので、騒音のなかでも自分が必要としている情報や重要な情報は無意識に聞き取ることができる脳の働きのことをいいます。
聴覚だけでなく視覚など、脳は五感で感じたすべての情報を同時に理解しようとすると、処理が追いつかずパンクしてしまいます。脳がパンクするのを防ぐために、脳は「注意を向けた必要な情報のみ」を処理すると言われています。残りの大半の情報は、記憶されることなく消え去ってしまうのです。
騒音の中でも自分の名前には気付くのは、自分に関係のない名前は注意を向けないため脳で処理されることなく消えてしまいますが、自分の名前には注意を向けるため気がつくというわけです。これが、カクテルパーティー効果のメカニズムだと考えられています。
つまり人の脳は、「意識している情報でないと記憶に残らず見落としてしまう」ということを教えてくれているのです。
オン/オフを素早く切り替えるには?
私が会社を辞めて独立したとき、「時間とお金に不自由しない人生にする」というのが目標だったので、そこに対して常に興味を持っていて、仕事にしても遊びにしてもいつも意識して行動していました。
そんなころ、食事会で既にFIREを達成している人に出会ったんです。私は「どうやってFIREできたのか」を根掘り葉掘り聞いていました。しかし、そこに興味・関心や意識がない人は、そういう人がいても自分がFIREできるようになるための質問をすることなく、単に「すごいですね」で終わってしまっていたんです。
常に興味・関心を持つというのは、とても大事です。それを持っていないと、スイッチを切り替えられないのだと思いますね。
人との出会いや会話だけでなく、投資においても同様です。
たとえば投資本では、「コンビニに行ったとき、流行している商品やヒット商品があったら、その会社を調べて投資に役立てましょう」とよく書かれていますよね。
常に頭の片隅に「何か投資に役立つヒントはないか?」「このヒット商品の関連銘柄は何か?」と「投資」が意識されていないと、単に「この商品よく見かけるな」とか「ふ~ん、なんだかこの商品売れてるらしいね」くらいで終わってしまうと思うんです。
プライベートの時間だからといって「投資」のことを完全に忘れてしまうと、せっかくのチャンスも、ものにすることができません。オン/オフを素早く切り替えるには、「投資」のことを常に頭の片隅に入れ、興味を持ってアンテナを張ることが大切だと思います。
カクテルパーティー効果からいうと、アンテナを張って興味を持たないと、欲しい情報はキャッチできないということです。