ここ数年、Z世代の間で盛り上がっている昭和レトロ。40代50代には懐かしいアイテムやファッションが令和時代の今、トレンドになっている。
フィルムカメラや純喫茶、カセットテープに花柄ポットなど、アナログで温かみのあるデザインやスタイルが若者の心を魅了。そんな中、「絶滅寸前の昭和レトロ」も存在している。それは「珠のれん」と「回転ベッド」だ。
今やこの2つを作り続けているのは、日本でただ一社のみ。今回、昭和を代表する逸品を唯一出掛けている企業を直撃。それはまさに昭和レトロ最後の砦。消えつつある「珠のれん」「回転ベッド」を一手に引き受けている最後の作り手たちに話を聞いた。
おばあちゃん家にあったジャラジャラ音の「珠のれん」!唯一製造する老舗の夢とは?
木製の玉にヒモを通して吊り下げた「珠のれん」。昭和を知る人は、玄関やお茶の間から台所に通じる鴨居の部分に取り付けられていたイメージが強いかもしれない。
そんな「珠のれん」を製造している唯一のメーカーが兵庫にある。来年で創業100年の木工品メーカー「ヒョウトク」。
今回、御年78歳の近田正義社長がその歴史とこだわりについて語ってくれた。
–珠のれんを作り始めた経緯を教えてください
「もともと、そろばん製造から始まった弊社ですが、私が中学生の頃そろばんの売れ行きが少し落ちかけてきたんです。そこで創業者の父と兄が木製の玉を使用した製品を考えた 結果、「珠のれん」作りが始まりました」
以来、70年近く「珠のれん」を手掛け、1960年代〜70年代は製造が間に合わないほど大盛況。日本中の家庭をヒョウトクの珠のれんが彩った。
その後、人気は下火になるも、近年の昭和レトロブームにより復活の兆しを見せているという。
「最近人気の理由は多々あると思いますが、コロナ禍で暗いムードが漂う中、せめて家庭内だけでも明るくディスプレイしたいという思いがあるのではないでしょうか」
「また、木製のみならずクリスタル珠のれんなど種類も増え、一般のお客様を始め飲食業界、医療業界でも癒し系インテリア商品としてご愛用いただいております」
唯一の「珠のれん」製造メーカーを牽引する近田社長。作り続けて良かったことは?
「日本における珠のれん製造が弊社のみとなったことも誇りですが、協力工場さんと今なお新製品の開発が出来ること、そしてその製品がとても魅力的で売れる喜びを感じる点ですね」
ちなみに、近田社長のご自宅でも「珠のれん」はちゃんと家族の毎日を潤している。
「二階に上がる所には開閉式珠のれん。玄関先前の和室にはアーチタイプを掛けています。おすすめです!」
–今後も「珠のれん」は作り続けていきますか?
「珠のれんは製造は分業のため、職人さんの事業継承が無い限り永遠に続けるのは至難の技と言えます。しかし、私は85歳までやり続けようと思っておりますのでこれからも挑戦していきます」