「食用コオロギ」が日本で話題になっている。
いや、「話題になっている」というよりは「炎上している」と表現したほうが近いか。なぜ食用コオロギはあそこまで強い反発を生んだかというと、やはり多くの人にとって全く馴染みのない食材だからだろう。
しかし、反発の大小はともかくとして食用コウロギの生産もアグリテックビジネスのひとつである。
増え続ける世界人口を支えるセクターとして、アグリテック分野は日に日に注目されている。
そこで今回は食用コオロギよりも多少は日本人に受け入れられやすいであろう「注目のアグリテックビジネス」を取り上げ、解説していきたい。
海上に浮かぶ牧場
アグリテック分野は、以下の3通りに大別できるのではないかと筆者は考えている。
1.既に広く消費されている食品を、斬新な方法で生産する
2.現時点では需要は少ないが、実は食用可能のものを生産する
3.今ある生産拠点を効率化するシステムを開発する
食用コオロギの場合は、もちろん「2」に当てはまる。「3」はアグリテックから数歩踏み出して、流通の問題にもメスを入れるシステムである。そして今回の記事では、敢えて「1」に絞ってみたい。
オランダ・ロッテルダムの港に浮かぶ『Floating Farm』は、その名の通り海上に浮かぶ牧場である
「ちょっと何言ってるか分からない」と突っ込まれそうだが、本当に海の上に牧場があるのだ。
施設を維持するための電力は太陽光パネル、水は雨水を濾過することで確保し、内部には乳牛を飼育するケージが設置されている。ここでは牛乳、ヨーグルト、チーズ等の乳製品を生産しているのだ。
創業者のピーター・ファン・ウィンゲルデンは、2012年にアメリカ・ニューヨークを襲ったハリケーン「サンディ」からこのビジネスのアイディアを得たという。
サンディはアメリカとカリブ海諸国で200名以上の死者を発生させた大災害だった。ニューヨーク証券取引所は2日間の休場を余儀なくされ、当時配置に派遣されていた日本の自衛隊も撤収作業の延期を余儀なくされた。
自然災害は、都市の交通インフラを容赦なく破壊する。被災地の小売店では食料品の品切れが続き、市民を混乱に陥れてしまった。が、だからといってマンハッタン島に乱立するビルを撤去して畑や牧場を作るわけにもいかない。
ならば、海上にそれを作ればいいではないか。
もしも海上の浮島がそのまま牧場になれば、まさに自由の女神の目前で食料生産を実施することができる。
大人口を抱える地区のすぐ脇にあるため、自然災害で交通インフラが破壊されたとしても牧場が無事でさえいれば食料を供給することが可能だ。
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