視覚障がい者の歩行を補助するナビシステム「あしらせ」
いきなり私事で恐縮だが、親戚に目をわずらって、日々の外出に四苦八苦していた人物がいた。
元々30代半ばまで目が見えていたものの、病気で視力を失ったこともあって、視覚に頼らない生活に慣れるまで、20年近くという相当な時間がかかってしまった。
そのうち何とか自分で電車やバスなど、公共交通機関を利用できるレベルにはなったものの、意外と私たち健常者が意識していないだけで、歩道には色んな障害物が多く、それらにつまづくことは一度や二度ではなかったそうだ。また、土地勘のない場所に出向く際には、どうしても迷ってしまうということもあったらしい。
すでに鬼籍に入って久しいが、時折「視力はなくなったけど足はあるんだから、あちこち意味なく散歩したい」とつぶやいていたのが印象に残っている。視覚障がいを抱える方にとっては、晴眼者が当たり前にこなす歩行も、難しい場合がある。
だからこそ、その歩行をアシストする技術が普及すれば、きっと視覚障がい者の方々の日常の選択肢はもっと増えるに違いない。
世界中の視覚障がい者の日常が変わる!?歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」
前置きが長くなってしまった。ここからが本題である。
視覚障がい者の歩行をアシストする、全く新しい新技術を生み出した企業が日本国内に存在する。
その企業こそが株式会社Ashirase。
東京都墨田区に本社を構えるこの企業が生み出したのが、視覚障がい者向けの歩行ナビゲーションシステム。その名も「あしらせ」である。
「あしらせ」はスマートフォン専用アプリによる音声入力と靴に装着する振動インターフェースによるルート案内で構成された歩行ナビゲーションシステム。
1人で自由に出歩くことを実現するために生み出された、今までに類を見なかった着眼点で開発されたこの「あしらせ」。
2023年の1月5日から8日にかけて、アメリカ・ラスベガスで開催された世界最大級のテクノロジーの祭典『CES2023』において、特に評価されたプロダクトに贈られる「Innovation Award」を受賞するなど、既に世界的にも大注目されている。
これまでなかった技術を用いて、視覚障がいを持つ方々の生活をアシストするという、全く新しい「あしらせ」が何故誕生したのかについて、筆者はこのたび、株式会社Ashiraseにコンタクトを敢行。
忙しい合間を縫って、インタビューにご協力いただけたので、以下にその模様をご紹介したい。
普及すれば視覚に障害を持つ方々のQOLも大いに高まる可能性に満ちた「あしらせ」誕生と開発の経緯を、ぜひご覧いただきたい。