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中古レコードの高価買取を謳う広告の査定額は妥当なのか?

2023.03.11

帯だけでも売れるのか?

数年前に実家の家具調ステレオ(昭和!)の周りを整理していたら、中高校生の僕が買ったレコードの帯が30枚ほど出てきた。ツェッペリン、ビートルズ、ピンク・フロイド……。帯の価値を知る僕は“帯だけでも売れる?”と考えてヤフオクに出してみると、ツェッペリン(ポリドールではなく、ワーナーパイオニア盤)やビートルズは2000円前後で落札された。50年前に2000円で買ったレコードの帯だけで2000円だ。こちらは安かろう思いつつ、当時は前述のバンドよりはるかにマイナーだったジェファーソン・エアプレインやドアーズも出品した。するとジェファーソンは8000円ほど、なんとドアーズは2万円超で売れた。帯、かように恐るべし。

定価2000円帯の『狂気』。

裏に補充注文票が残っている帯は価値が高い。

『狂気』の付録。完品だ。

話を少し複雑にする。50年前の帯付きレコードの買い取り価格は1枚300円としたが、モノによってはその何倍何十倍が相場ということもある。例えば僕の持っているピンク・フロイド『狂気』の定価2000円帯の付録完品盤。発売された1973年、レコードの定価は2000円から2200円に上がった。そのため帯の定価表記は、2000円、2200円、そして2000円の上に2200円のシールと、3種類ある。また『狂気』には付録でポスター2枚、表裏印刷のカード1枚、カラー・ブックレットが付く。よって1973年発売の『狂気』はどの帯でどの付録があるか(もちろん盤やジャケット、各付録のコンディションも左右する)で価格は相当違う。ヤフオクの落札履歴で最も価値のある2000円帯の付録完品盤を見ると2万円くらいが落札相場、となれば買い取り価格は300円どころではない。

イギリス盤のラベルは、ブルー・トライアングル。

では輸入盤はどうだろう。やはり『狂気』を例にとる。80年代前半の『FMレコパル』編集部在籍時から約40年にわたる僕のロックとオーディオの師匠、音楽ライター/プロデューサーの岩田由記夫さんは『狂気』リリース時の1973年、新宿の輸入レコード店で発売されたばかりのイギリス盤『狂気』を3000円強で買った。そのイギリス盤は、そのラベルのデザインからブルー・トライアングルと呼ばれる初版=ファーストプレスだ。僕は数年前にファーストプレスを4万円ほどで買ったが、今買えば10万円級(帯があるのは日本盤だけでイギリス盤にはないが、付録は完品が前提)となる。3000円強で買ったなら、50年経って約30倍だ。買い取り価格100円の訳がない。

復刻盤『クリムゾン・キングの宮殿』。帯上の四角いマークの付いた帯は“花帯”と呼ばれ、70年代初期頃のワーナー・パイオニア発売のロックのレコードに使われた。当時の花帯なら、どんなレコードでもかなりの価値がある。

ロックの世界では『狂気』はメジャー中のメジャーだが、中古レコードの世界では僕の経験上、マイナーなものほど希少性があるのか、高価格で取引されるようだ。つまり親が買ったか兄弟姉妹が買ったかもわからない、実家にある邪魔で見たことも聞いたこともないアーチスト/歌手のレコードに驚くほどの価値がある可能性がある。あるいは自分で買ったけれど、その存在すら忘れていたレコードに思わぬ値が付くかもしれない。ましてや帯付きをや、だ。蛇足だが、以上のことはロックに限らず、歌謡曲、演歌、アニメ、ジャズ、クラシック、どのジャンルにも当てはまる。

中古レコードをお持ちの方、処分する際にはこの拙文を思い出しあれ。

文/斎藤好一

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