東京~山形・新庄を結ぶ山形新幹線「つばさ」のさらなる速達化を目指し、JR東日本は新型車両「E8系」の投入を発表。先日この車両が完成し、報道陣に公開された。実際のデビューは2024年春予定とまだ先だが、これから各種走行試験を行っていく予定だ。
これが山形新幹線向け新型車両「E8系」だ!
山形新幹線って?
山形新幹線は1992年に東京~山形間が開業し、その後1999年には山形~新庄間が延伸開業。日本初の“新在直通新幹線”と呼ばれる、ちょっと特殊な新幹線として運行されている。
東京~福島間は東北新幹線を走行し、最高時速275kmで駆け抜ける一方で、福島~新庄間は在来線を走り、最高時速は時速130kmとなり、途中には線路が一本の単線区間や踏切もある、新幹線というにはちょっと異なる、ユニークなスタイルを持つ。
速達性はフル規格の新幹線にはかなわないが、かつて福島駅で発生していた新幹線と在来線の乗り換えもなく、建設費などを大きく抑えることができることから様々なメリットがあり、この方式が採用された。なお、同様の方式は秋田新幹線でも採用されている。ちなみに山形新幹線の列車名である「つばさ」は、在来線特急時代のものを継承している。
フル規格の新幹線車両は在来線車両よりも大きく、普通車の車内は2列3列と合計5列のシート配置が基本となっているが、山形新幹線は2列ずつの在来線特急と同じ仕様。在来線を走行することから、それに合わせて車体も在来線サイズなので「ミニ新幹線」とも呼ばれることが多い。
現在活躍中のE3系2000番台の「つばさ」。E8系に比べて先頭形状は短く、シンプル
E8系、なぜ誕生!?
現在、東北新幹線の最高時速は日本最速の時速320km。一方、現在の「つばさ」は使用されている車両の仕様上、最高時速は時速275kmにとどまっている。
E8系ではまず、東北新幹線区間での最高時速向上が図られ、最高時速を時速300kmと25km向上させている。「なぜ最高の時速320kmじゃないのか」というのは当然の疑問だが、時速320km走行ができるのは東北新幹線の中でも宇都宮以北であり、「つばさ」は福島までしか東北新幹線を走行しないため、実際に時速320kmで走行できる区間は限られ、そのスペックを持っていたとしても速達効果は限定的になることが予想される。
加えて時速320km走行を行うためには車両面もコストがかかるほか、高速走行による空力性を向上させるために、より長く、なめらかな先頭形状を必要とし、その分座席数が減ってしまう。
そんな背景からE8系は、同じく新在直通新幹線であり、時速320km走行が可能の秋田新幹線「こまち」E6系をベースにしつつも、最高時速300kmで設計された。それでも、今までより速くなるのは変わりなく、一定の速達化が期待されている。
E8系のベースとなったE6系。時速320km走行を行うため先頭形状が長く、その長さは13mにもなる