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アフターデジタルの世界に必要なのはペルソナではなく、状況を基点としたユーザー体験

2023.03.03PR

リアルがデジタルに包含される世界で、企業はどう変化すべきかを説き、大きな話題を集めた書籍『アフターデジタル』。著者である藤井保文氏は、最新刊『ジャーニーシフト デジタル社会を生き抜く前提条件』(日経BP刊)で、アフターデジタルの世界で変化する潮流を読み解き、企業が生き残っていくための条件として「提供価値のDX」をあげている。誰もがスマホを持ち、常にデジタルと一体となった時代。そのデジタル世界もWeb3という大きな変化が動き始めた今、求められる新たな「顧客体験」とは何か。前編では「提供価値のDXを推し進めるには、ユーザーの体験価値をしっかり捉えなおすことが重要」と述べていた藤井氏。後編ではWeb3がもたらす新たな顧客体験、日本企業がアフターデジタルの時代に生き残るヒントを伺った。

※前編はこちら

藤井保文
株式会社ビービット 執行役員CCO(Chief Communication Officer) 兼 東アジア営業責任者 一般社団法人UXインテリジェンス協会 事務局長
東京大学大学院 情報学環・学際情報学府修士課程修了。上海・台北・東京を拠点に活動。国内外のUX思想を探究すると同時に、実践者として企業の経営者や政府へのアドバイザリーに取り組む。累計22万部のベストセラーである『アフターデジタル』シリーズでは、これからの時代を生き抜くために、日本企業が取るべきアクションや、DXのあるべき姿を提示。「DXの目的は新たなUXの提供である」というコンセプトを世に広める。

顧客視点でなく提供価値をみる

──本の中に「顧客視点だけでは届かない」というちょっと衝撃的な一文がありましたが、これは自社の顧客としてだけユーザーを捉えることへの警鐘ということでしょうか。

まさにそうですね。顧客視点については我々もずっと言っているし、それ自体は大切なことですが、なぜそこに限界があるかというと、おっしゃるように顧客っていう言葉が指しているのが、あくまでも自社の既存顧客だったり、その業界のお客さんになる人のことだからです。

『アフターデジタル』の出版後、いろんな方に「アフターデジタル時代に、うちの業界はどうなると思うか?」ということを質問されたんですが、そういうことじゃないんですよね。これが「アフターデジタル時代の購買体験はどうなるか」という質問だったらわかるし、答えられるんですけど。あくまでもユーザーがやりたいことが先にあって、それに対していろんな選択肢があるということなんです。

移動するのにクルマを選ぶこともあれば、ライドシェアを使うこともあるし、歩くこともある。もう移動せずにVRで楽しむこともあるわけです。ユーザーに移動というものがどう見えているのかを理解しないと、見誤ってしまうことになります。この場合のどう見えているかは、いわゆる顧客視点とは違います。なぜなら、自社が提供しているサービスやプロダクト、業界に固定して考えてないからです。

たとえば自動車メーカーが顧客のクルマ体験だけを考えるなら、顧客視点に立って車を使っている時に何に困っていて、どこを直してあげたらもっと便利になるかを追求すればいいと思います。でも本当に新しいサービスとか新しい体験を提供したい、提供価値のDXを推し進めたいと考えるなら、他にもたくさんの選択肢があることに目を向けなければいけない。自社のアセットとユーザーが実現したいことを合わせて、どういう体験を提供できるかを考えなきゃいけないということです。

だけど既存の顧客からは、自分たちが提供している製品やサービスの問題点しか拾えなかったりするので、やっぱりそこからまったく新しいものは生まれない。だから顧客視点だけでは足りないし、届かないんです。顧客視点でできるのは、個別最適化だったり、局所最適化です。これからはそれだけでなく、『ジャーニーシフト』でお伝えしているような 大きなテーマで、ジャーニーを作っていく必要がある。

『ジャーニーシフト』っていう言葉には、ジャーニーという概念をアップデートしたいという思いを込めました。ユーザーが実現したいことのために、どう行動すべきか。そのステップとかフローを組んであげることこそが、ジャーニーをつくるということなのではないか。自分が思う理想の状態に近づけるからこそ、ユーザーはそのサービスや製品を選ぶし、選び続けてもらえるんです。

アフターデジタルの時代に自社のサービスや製品のことだけを考えていたら、先ほどのトランクの開閉とネットスーパーの例のように、別の提供価値にあっさり乗り換えられてしまう可能性がある。だったらユーザーが理想を実現する、成功状態までのジャーニーを引こうぜっていうことを言っています。

──今の時代、デジタル上も含めるとユーザーはいろんな顔を持っています。アイデンティティが多様化する中でどのようにその理想の実現にアプローチすればいいのでしょうか?

僕らはずっと状況理解こそが、ユーザーを理解する上で最も重要であるということを言っています。たとえば、作家の平野啓一郎さんが光を当てた考え方に「分人」があります。人間にはビジネスパーソンとしての自分、スポーツマンの自分、家族の一員としての自分のようにいろんな側面がある。individual(個体)のようでいて、実はdividual(分離した)である、それが「分人」というわけです。人は状況によっていろんなモードを使い分けている。そしてモードによって求めてるものも違うんですよね。

ペルソナではなく状況によってユーザーの行動は変わる。だから社会起点、生活起点で状況の方から考えないとUXが作れないんですよ。状況に応じて考え方や判断基準が変わるので、こちらもそれに合わせて視点や体験を変えることが重要なんです。パソコンなり、スマホなり、IoTで常時つながっていて、ユーザーの状況が解像度高く理解できるようになったアフターデジタルの時代には、その状況を中心にユーザーの体験を作っていかなければ、より良い体験価値を提供できないということです。

──今回、本の中ではWeb3についても言及されています。これからの顧客体験とか、提供価値を考える時には、やはりそこを見据えておかなければならないということなんでしょうか?

そうだと思います。実はこれは、冒頭に話したインドネシアの事例を目にしたときに、もう1つ考えたことでもあるんです。社会のペインを解決するだけで、人が幸せになるかというと、そうではないなと。たとえば好きなミュージシャンのライブに行ったら、ずっと聞きたかった曲をやってくれて、それを隣にいる友達と共有するといったような幸せもあるわけじゃないですか。ペインとは関係ない幸せやより良い体験というものもあるということです。

僕はそれは2つの方向性、つまり、ペインを解決することでより良い体験を提供する「利便性のレイヤー」と、好きを追求したり、共有することでより良い体験を提供する「意味性のレイヤー」に分けて考えています。

利便性のレイヤーでは、不便というマイナスを取り除けば良い。正解があるし指標もあるから、いろんな企業がそこを目指せる一方で、競争も激しいので生き残れるプレイヤーはそんなにいません。

一方の意味性のレイヤーでは、センスが良いとか、格好良いとか、面白いとかって、みんな感覚が違うので多様化、細分化していく。Web3をそのための技術のひとつだと捉えると、新しい体験が提供できる可能性が見えてきます。特に日本には、漫画やアニメだったり、2次創作が活発なこともそうですが、意味性のレイヤーが浸透しやすい土壌や文化があると思います。

意味性のレイヤーでは利便性のレイヤーとは逆に、その世界観が濃ければ濃いほど市場が狭くなります。だから競争は激しくないかもしれないけど、いくら日本にその土壌があるとは言っても、大企業がそこに参入するのは難しいでしょう。じゃあ大企業は何をやればいいのかというと、これからどんどん細分化された意味性を提供するプレイヤーが増えてくるので、そういうプレイヤーをサポートする方に回ればいいのではないかと思います。

──Web3に限らず、日本企業がアフターデジタルの時代に生き残っていくためには、どういうマインドチェンジが必要だと思いますか?

企業目線ではないものの見方を、どれだけ大事にできるかだと思います。社会目線、社会的なペインっていう視点も必要だし、ユーザー起点とか体験起点でとらえることも重要です。つまりもう、企業が自分たちの独善的な利益を追求していればいい時代は、終わりつつあるということです。

利便性のレイヤーでは、社会のペインだとか、社会課題の解決みたいなところを中心に置いて、自社だけでなく業界も超えて協力していける状況を作らなければいけないし、意味性のレイヤーにおいても、企業がお金儲けのために言っているとなった瞬間に、ユーザーは冷めてしまうので。そのことをちゃんと理解をせずに進むと、提供価値のDXみたいなことはできないし、ユーザーに選ばれる存在にもなれないと思うんですよね。

今までの独善的な思想から離れて、いかに社会や人々の置かれている状況に目を向けて、そちら側から見られるか。そうやって見たあとにもう1回、ビジネスに戻ってきてもいいと思うんですよ。言ってもお金儲けにならないと会社が潰れちゃうし、それじゃ意味がないので。社会起点、生活起点の目線と、ビジネスの目線を往復できるようになる。往復なのか、社会とユーザーと会社の三つ巴なのかもしれないですけど。それぞれを行き来できる視点や仕組みや人材が求められていると思います。

ジャーニーシフト デジタル社会を生き抜く前提条件(日経BP刊)

「DIME Digital Trend Summit 2023」開催!

学びにどん欲なビジネスパーソンの方々へDIMEがお届けするビジネスセミナー「DIMEカレッジ」。昨年から多くの方々にご参加いただいておりますが、今回は年度が変わるタイミングということを踏まえ、スペシャル企画として「DIME Digital Trend Summit 2023」と題し、これからのビジネスで避けては通れないデジタル分野のキーワードやトピックを取り上げます。

参加ご希望の方はこちらから
(2023年3月6日23時59分締め切り)

登壇者

ビービット 執行役員CCO 兼 東アジア営業責任者 藤井保文さん

東京大学大学院 情報学環・学際情報学府修士課程修了。上海・台北・東京を拠点に活動。ベストセラーである『アフターデジタル』シリーズでは、これからの時代を生き抜くために、日本企業が取るべきアクションや、DXのあるべき姿を提示。新著『ジャーニーシフト デジタル社会を生き抜く前提条件』(日経BP)が発売中。

 Off Topic株式会社 代表取締役  宮武徹郎さん

バブソン大学卒。事業会社の投資部門で主に北米スタートアップ投資に従事。Off Topic株式会社を2021年に立ち上げ、米国を中心に最新テックニュースやスタートアップ、ビジネス情報、カルチャーを解説するポッドキャスト番組「Off Topic」を運営。
https://twitter.com/OffTopicJP

@DIME編集長 石崎寛明

司会:サッシャさん

開催日

3月16日(木) 19時頃~ 1時間半程度を予定

イベント開催会場

リアル会場のご参加とオンラインでのご参加、どちらかをお選びいただけます。会場のキャパシティには限りがございますので、応募者多数の場合は抽選となります。残念ながら漏れてしまった方には配信URLをお送りしますので、ぜひオンラインでご視聴ください。

・六本木ヒルズ アカデミーヒルズ オーディトリウム

https://forum.academyhills.com/roppongi/spec/auditorium.html

→後日ご案内状をお送りいたします。

・オンライン配信 

→後日配信URLをお送りします。

応募条件・申し込み方法

参加ご希望の方はこちらから
(2023年3月6日23時59分締め切り)。

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☆☆☆

※抽選時点で小学館IDを退会している方は対象になりませんのでご注意ください。
※不正な応募と判断された場合、また、当選者に連絡がつかない場合、応募が無効となることがあります。あらかじめご了承ください。
※本セミナーは、社会情勢によりオフラインでのセミナーを中止する場合があります。また予告なく内容を変更することがあります。
※オンライン受講の視聴URLは受講者のみご利用可能です。受講者以外の人と共有、SNS・ブログなど一般公開されるインターネット上に掲載することなどは禁止いたします。
※ライブ配信講座を録音、録画、写真撮影、ダウンロードして保存することは禁止です。また、録画、録音、ダウンロードした動画をインターネット上にアップロードすることも禁止いたします。

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「アフターデジタル」シリーズの著者が語る、提供価値の見直しとインドネシアに学ぶ新たな顧客体験

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取材・文/太田百合子 撮影/干川 修

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