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【ヒット商品開発秘話】累計2万3000本以上売れている東京デリカ「リップル」

2023.03.09

連載/ヒット商品開発秘話

 新型コロナウイルスで控えざるを得なかった旅行が徐々に盛り返しつつある。久しぶりに泊りがけの旅行に行きたくなりスーツケースを買おうと考えている人も多いことだろう。

 いま旅客機内への持ち込みが可能な小型サイズで高く評価されているスーツケースが、全国600店舗以上のバッグ、ファッショングッズ専門店を展開する東京デリカのオリジナル商品『リップル』である。Sac’s Bar(サックス バー)、Grand Sac’s(グラン サックス)など同社の各ショップで販売されている。

『リップル』は同社のトラベルブランド『TRANSIT LOUNGE(トランジット ラウンジ)』から2020年12月に発売された。容量約34Lで、1〜3泊程度の滞在向き。旅行需要が激減したコロナ禍まっただ中に発売されながらも、これまでに2万3000本以上が売れている。

悪路の中、重さ30kgのスーツケースを引くこと3時間

『リップル』は『TRANSIT LOUNGE』誕生と同時に発売された。開発のきっかけは、同社が2009年7月から展開してきたトラベルブランド『SHIFT』を『TRANSIT LOUNGE』としてリブランディングすること。ライフスタイルブランドへのシフトなどを目的に、2019年の暮れに『SHIFT』のリブランディングを企画。これに合わせて新商品として企画されたのが『リップル』である。

『リップル』は価格8800円ながら、独自開発したハイパーサスペンションキャスターと、YKKがカバン用に開発したタフジッパーを採用。コストパフォーマンスが高いのが特徴だ。

 ハイパーサスペンションキャスターを開発することにしたのは、キャスターの調達コストの高さからだった。それまで同社のスーツケースでは、とある会社のキャスターで一番静かとされている高機能モデルを採用してきたが、東京デリカを含むサックスバーホールディングス傘下の事業会社各社でまとまった量のキャスターを必要とすることから、同等の性能を発揮するものを自社開発できれば低コストになると判断した。

 中国の工場で試作品をつくっては試験装置による各種試験を実施し、耐久性や衝撃吸収性、静音性を検証。『TRANSIT LOUNGE』ブランドの商品開発責任者である東京デリカ 第1商品部の榊克己氏も、中国で試験を手伝った。そのときの様子を次のように話す。

「重さ30kgの砂袋を詰めたスーツケースを引きながら工場周辺の石畳のようなガタガタな未舗装道を走ったり、かなりの悪路をずっと引いて歩いたりと、実使用を想定した試験も行ない、8種類ほどのキャスターの性能を確かめました。1人で3時間、重いスーツケースを引きながら歩いたり走ったりしています」

東京デリカ 第1商品部
榊克己氏

 だが、理想的なスプリングはなかなか見つからず開発は難航した。あまりにも難航したので、途中で妥協しそうになったほど。何とか妥協せず踏みとどまったのは、榊氏自身が音の静かなキャスターが欲しいと強く願ったからだった。その理由を次のように明かす。

「以前使っていたスーツケースはキャスターの音がうるさく、早朝から出かけるときは家を出てから100mぐらいは持って歩いていました。これが嫌なので家を出たら引いていけるようなものが欲しいと個人的に思っていました。お客様が何を望んでいるのかは、はっきりわかりませんので、自分が納得できるものをつくることにしています」

ハイパーサスペンションキャスター。双輪タイプで、中央にスプリングを配置

YKKの新ファスナーをいち早く採用

 YKKのタフジッパーは、榊氏が中国の生産工場でYKKの中国現地法人の担当者からスーツケースに使えそうな新しいファスナーとして紹介されたものだった。中国企業がつくったものでも問題なかったが、機能の高さとYKKのブランド力からいち早く採用を決めた。

タフジッパーのサンプル

 業界内で紹介し広めることなどを約束し、リーズナブルな価格で調達。宣伝の意味から、専用のタグをつけてタフジッパーを使っていることを強調することにした。

タフジッパーを採用していることを示す専用のタグ

 内装にもこだわった。特徴は、両面ともファスナーで締め切り可能にしたことにある。

 一般的なスーツケースはフタの方を締め切り可能にし、反対側はクロスベルトであることが多い。両面をファスナーで締め切り可能にしたのは、榊氏にとってはその方が使いやすいと感じられるからであった。

「クロスベルトは荷物の量に合わせて調整できますが、使いにくいところもありました。自分が使いやすいと思えるものにすることと見栄えを良くするために、両面をファスナーで締め切り可能にしました」

両面ファスナーで締め切り可能な内装

流行を先取りしたくすみカラー

 デザインは、中国の生産工場にあるサンプルルームで原型になるものを見つけ、それに線の太さを変えたり線にエッジを立てたりという変更を加えてつくった。

 エッジはラインの端で1本1本に立たせているが、エッジの立っている位置がそれぞれ微妙に異なっている。これにより波がうねっているようにギザギザに見えるようになることから、英語でさざ波を意味する『リップル』を商品名にした。

横のラインの1本1本にエッジを立てているが、その位置が微妙に異なるので、少し離れてみると波がうねっているように見える

 カラーは全11色。最初はブラック、ホワイト、アクアの3色で考えていたが、工場から「3色だと寂しくないですか?」と言われたことから、暖色系を追加し大がかりな多色展開に踏み切る。幅広い年齢層の嗜好に対応できるようにする意味があった。

 色味はくすみ調。今でこそくすみカラーはトレンドだが、当時は「こんな色で売れるの?」と懐疑的な受け止め方をされた。

 ただ、榊氏はくすみカラーは支持されるという確信があった。その理由をこう明かす。

「アパレルなど他業界の人ともたくさん会っているので、これから流行るものや色の情報を聞くことがあります。その情報を元に『リップル』ではくすみカラーを先取りして採用しました」

 これから流行る色の情報を元にサンプルを製作。モニターの反応のよかった色を採用した。

2022年に一気に売上を伸ばす

『リップル』は2020年が51本、2021年が2436本と、コロナ禍で売上がまったく伸びなかった。全国旅行支援が始まったことや、とある新聞の企画で小型スーツケース10選に選ばれたことなどをきっかけにして、2022年に一気に売上を伸ばす。2022年の1年間の売上は2万829本である。

 ユーザーの反応で多いのが、コストパフォーマンスの高さに関するもの。価格の割には機能の高い点が受け入れられている。

 その一方で、高くてなってもいいのでさらなる機能追加を求める声も聞かれた。こうした反応もあって、『リップル』はアイテムを追加した。

 追加されたのは、『リップル22』と『リップルFO』の2つ。『リップル22』は『リップル』より大きいだけではなくエキスパンダブル(マチ拡張)機能を搭載し約53Lから約61Lにまで拡大可能。『リップルFO』は『リップル』とほぼ同容量だが、前開き仕様にして利便性を高めた。

『リップルFO』(手前)と『リップル22』(奥)

取材からわかった『リップル』のヒット要因

1.コストパフォーマンスの高さ

 8800 円という低価格でありながら、独自開発のハイパーサスペンションキャスターやYKKのタフジッパーを採用。価格以上の機能と品質を持ち、コストパフォーマンスが高い。

2.デザイン性の高さ

 さざ波を意味する商品名のように、波紋のようなグラフィックを配置。全11色で現在人気のくすみカラーを採用しており、デザイン性が高いものになった。

3.店舗スタッフによる提案

 販促をしなかったこともあり、店舗スタッフによる提案は不可欠。全11色を店頭で見せるなどして、来店客に「これを持って旅行に行きたい」という気にさせることができなければ、これほどの人気を得ることはできなかった。

 これまで、まったくと言っていいほど販促をしてこなかったが、今後はZ世代からの支持が高い媒体とのタイアップや広告出稿を検討するという。また、今後は旅行好きなZ世代にモニターとして使ってもらい、得られた声を商品に反映させていく考えだ。「消費者に聞くのが一番」と榊氏はストレートに言う。

製品情報
https://sacsbar.com/news/51522/

文/大沢裕司

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