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「民事再生」と「破産」との違い、説明できる?

2023.03.27

資金繰りが悪化し会社が経営不振に陥ってしまった際、民事再生で債務を軽減し、会社を立て直す方法があります。民事再生の意味や種類、申し立てから再生計画案実行までの流れを解説します。また、メリット・デメリットも知っておきましょう。

民事再生とはどういう意味?

会社の経営不振が続くと、資金繰りが悪化したり、債務超過に陥ったりして経済的に行き詰まってしまいます。経営を再建させるための手続きである『民事再生』について、解説します。

債務者の事業再生を図る裁判手続き

民事再生とは、会社の借入金・売掛金などの債務が支払い能力を上回り、経営が行き詰まったときに債務者が取る裁判手続きです。

民事再生の手続きでは、以降の再生計画を立てる必要があります。債務の一部免除を含むため、債権者から再生計画に対する賛同を得なければなりません。

債権者の賛同を得た上で、裁判所に『再生可能』と判断されたら、認可を受けられます。民事再生の手続きが進むと、手続き申し立て後も原則的に経営陣は交代せず、会社の再生を図ることが可能です。

債務者である会社にメリットがある手続きですが、いくつかの厳しい条件をクリアする必要があります。再生計画が債権者に賛同されなかったり、裁判所の認可が受けられなかったりすると、破産手続きに移行しなければなりません。

破産との違い

民事再生は会社を経営陣ごと残し、事業を継続しながら弁済していくことを目的としています。

一方の破産手続は会社の業務を全て停止し、破産管財人の管理の下で財産・債務を清算する手続きです。債務者の財産を換価処分し、優先順位に従い債権者に弁済します。

なお破産管財人は、裁判所によって選任されます。債務者の財産・法律関係の清算をした後、会社が消滅する流れです。

民事再生の3つの種類

現金を数える

(出典) photo-ac.com

事業再生を図る民事再生には、三つの種類があります。申立者に残っている事業の価値や、民事再生申し立て後の状況により、適用する型が変わります。それぞれの特徴について、把握しておきましょう。

自力再建型

民事再生は原則的に自力再建型で行われます。文字通り自分の会社の力で、事業の再建を目指す方法です。

事業で得た収益で債権を返済していきます。会社を分けない、また第三者の関与も受けない、小規模の会社でよく見られます。

債務者は民事再生の手続き時に立てた再生計画をもとに、裁判所を通して、債務圧縮をしてもらっています。自らの企業努力のみで、申立者が経営を立て直し、再生計画を実行するのが自力再建型です。

スポンサー型

スポンサー型の民事再生は、近年増加している形式です。申立者が、他の企業から経済的な援助を受けるものです。その資金で再生計画の実行を目指します。

最初は自力再建型で経営を立て直そうとしていても、難しい状況になってしまった場合、スポンサー型に移行するケースも見られます。

また民事再生を申し立てる前から、スポンサーになる企業を決めておく『プレパッケージ型』があることも、覚えておきましょう。

民事再生を申し立てると、銀行からの融資が受けられなくなります。手続き中の資金を、スポンサーに賄ってもらえる点が、プレパッケージ型のメリットです。

プレパッケージ型の注意点は、スポンサーの利益が重視されすぎないかどうかという点です。スポンサーの利益を重視しすぎ、提供資金が少なくなると、債権者への配当が損なわれることもあり、その場合、債権者は慎重になります。スポンサーが債権者に認められないケースもあるでしょう。

清算型

申立者の事業の一部、もしくは全部を譲渡し、清算する方法が清算型です。会社自体は消滅しますが、事業・ノウハウは残せます。

再生価値がある事業を、受け皿会社などに営業譲渡で移管して生かしつつ、会社自体は清算します。譲渡するためには手続き開始後に、裁判所の許可を得る必要がある点に注意しましょう。

営業譲渡で得られた金額は、再生債権の弁済に充てられます。

民事再生の流れ

会議の議事録をとる女性

(出典) photo-ac.com

民事再生手続を申し立てる際の、準備から計画の実行までの流れを解説します。しっかり準備をして、正しい順序で手続きをしなければならないので、流れを把握しておきましょう。

民事再生手続の申し立て

民事再生手続をする際の、準備・申し立ての手順を解説します。まず裁判所に支払う予納金と、弁護士費用が必要になります。

予納金は負債総額、手続きをする裁判所によって変わり、負債総額が5,000万未満〜10億円未満の場合、必要な予納金は約200万~500万円です。また弁護士費用は、予納金の1.0~1.5倍の負担であることも、覚えておきましょう。

  1. 弁護士に相談し、申立代理人になる弁護士を決める
  2. 裁判所に提出する資金繰り表・債権者一覧表などの書類を準備する
  3. 主たる営業所を管轄する地方裁判所で、民事再生手続の申し立てを行う
  4. 裁判所に『再生の可能性あり』と判断されたら、民事再生手続が開始決定される

地方裁判所に民事再生手続の申し立てができるのは、会社自身もしくは会社の債権者です。裁判所から取り寄せる必要書類もあるので、事前に連絡をしましょう。

参考:民事再生事件の手続き費用一覧 – 裁判所

保全処分・債権者への説明会・開始決定

申し立てを行った後の裁判所の動きと、申立者がやるべきこと、債権者の対応の流れは以下の通りです。

  1. 申し立て後、裁判所が保全処分の決定を出し、監督委員を選任
  2. 債権者に再生計画を認めてもらうため、申立者が説明会を実施
  3. 裁判所が民事再生手続の開始決定を債権者に通知、債権届出書の用紙を送付
  4. 債権者は期間内に債権の金額・原因を届け出る

1.にある『保全処分』とは、債権者が強行的に債権を回収できないようにする対策です。

裁判所が再生手続開始の決定をするまで、申し立てから1~2週間ほどかかります。申立者が条件を満たしていない場合は、このタイミングで棄却されます。

申立者による債権者に対しての説明会は、必須ではありません。しかし会社を再建するためには、債権者の協力が必要です。債権者に対して、謝罪や再生計画の説明などをしておくべきでしょう。

再生計画案の策定・提出

裁判所が民事再生手続を開始したら、再生計画案を提出するための作業に入ります。

  1. 債権額の確定・財産評定を実施し、結果を裁判所に提出
  2. 申立者が、債権者から届け出された債権の認否を行う
  3. 会社は債務弁済計画を記した『再生計画案』を策定し、裁判所に提出

再生計画案は、債権調査・財産評定の結果に基づき、『債務カット後の弁済計画』として作成します。

また再生計画案は、債権者が裁判所に提出することも可能です。複数の再生計画案がある場合は、いずれも次ステップの債権者集会による決議にかけられます。

再生計画案の承認・計画の実行

会社または債務者が作成した再生計画案は、債権者集会で決議にかけられます。再生計画が可決されるためには、債権者の同意を得なければなりません。以下二つの要件を満たせば可決されます。

  • 債権者の過半数が同意(出席者・事前に議決権行使の申出をした人の頭数で)
  • 全債権額の1/2以上の同意

債権者集会で同意を得られた再生計画案を、裁判所が認可します。その後、再生計画案を実行し、債権者に弁済していくことになるのが一般的な流れです。

なお、経営不振の原因が経営陣にあり、その事実を債権者に知られた場合、退陣を求められるケースがあります。債権者の心証が悪いと、債権者集会で可決に必要な同意を得られません。手続きが進まなくなってしまうので、何かしらの対処が必要になるでしょう。

参考:民事再生法第172条の3第1項第1号 ※「(再生計画案の可決の要件)」| e-Gov法令検索

民事再生をするメリット

会計の打ち合わせ

(出典) photo-ac.com

民事再生をして会社の立て直しを図ると、どのようなメリットがあるのでしょうか?民事再生ならではの大きなメリットを、二つ紹介します。

会社を存続させられる

民事再生は、経営状態が悪化した会社を存続させるための最終手段です。再生計画案が承認されれば、事業を継続しながら、再生計画案にもとづいた返済を実行することになります。

民事再生は倒産と違い、会社経営権を維持できる点がメリットです。会社の経営を続けられる上、社長をはじめとする経営陣は退陣する必要がありません。また、社員も引き続き雇用できます。

これまで続けてきた事業・ノウハウを手放さなくてよいので、会社のブランド力を維持できる点もメリットです。

債務の負担を減らせる

民事再生は申し立て時に、債権調査・財産評定がされます。再生計画案は債務カット後の弁済計画として作成するため、可決されると債務負担が軽減される点がメリットです。

債務カットは、債権者に弁済の一部を免除してもらったり、支払いを猶予してもらったりして実現します。債務負担が軽減されることで、経営が好転する可能性がある点もメリットといえるでしょう。

なお、法的手続を経る民事再生に対し、法的な倒産手続を踏まずに債務を整理する『私的整理』というものがあります。会社・事業を継続させるために、関係者が協議する仕組みです。

民事再生は法律の規定により債務を減らしてもらえるので、私的整理よりも多く減額してもらえるケースが少なくありません。

民事再生をするデメリット

分析

(出典) photo-ac.com

会社の経営・事業を存続でき、債務負担が軽減される民事再生ですが、メリットばかりではありません。デメリットもしっかり把握しておくことが大切です。

社会的信用が低下する

民事再生をすると、官報による公告や帝国データバンクの倒産情報に記載され、公表されます。会社は存続するものの、経営不振に陥って民事再生をした事実は、遅かれ早かれ世間に知れ渡ってしまうものです。

会社のイメージが低下してしまうと、取引先に不安・不信感を与えてしまい、取引に影響が出てしまう恐れがあります。また、消費者が「あの会社は倒産しかけたらしい」と思うことで、商品の売れ行きが悪くなる可能性も否めません。

担保に出していた財産は没収される

民事再生手続の申し立てを行った後、裁判所が保全処分の決定を出すので、債権者から強行的に債権を回収されることはありません。

しかし、保全処分の対象は通常の債権のみで、担保権の付着した債権については、担保権の行使が可能です。多くの場合、担保として提供している資産は、会社の経営を存続するにあたって重要なものです。

例えば、借入をするために抵当権を担保権として設定した場合、担保権者に実行されてしまうと、重要な不動産を失うことになります。

つまり、民事再生手続中に担保権を行使されると、会社の重要な財産が没収されてしまう点がデメリットです。

参考:民事再生法第53条第2項 ※「(別除権)」| e-Gov法令検索

構成/編集部

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