一時期盛んに行われていた「過払い金請求」ですが、最近ではかなり下火になってきた状況です。それでも、過払い金請求ができるケースはまだ残っています。特に、2010年以前に借りたお金をここ10年の間に完済した方は、過払い金請求の可能性をご検討ください。
今回は、過払い金請求が下火になった理由や、現在でも過払い金を請求できる場合などをまとめました。
1. 過払い金とは
「過払い金」とは、利息制限法の上限を超えて支払った借入金利をいいます。
貸金業法等の改正(後述)以前は、消費者金融などの貸金業者が、利息制限法の上限(元本額に応じて年15%or18%or20%)を超える金利(=グレーゾーン金利)を付した貸付けを行っていました。
しかし、最高裁の判例によってグレーゾーン金利が無効化され、利息制限法の上限を超える部分の支払金利については、債務者への返還が義務付けられました。
これに伴い、債務者が弁護士などに依頼して過払い金の返還請求を行うケースが非常に増えました。
2. 過払い金請求はなぜ下火になったのか?
過払い金請求は一時期盛んに行われていましたが、現在では下火になっています。
2-1. 過払い金が発生した経緯
消費者金融などの貸金業者がグレーゾーン金利による貸付けを行っていたのは、利息制限法の上限を超える金利の支払いについても、以下の条件を満たせば有効とする法律の規定(=「みなし弁済」規定)があったためです。
(1)債務者が利息であることを認識した上で任意に支払ったこと
(2)貸金業者が債務者に契約締結時書面を交付したこと(所定の事項の記載が必要)
(3)貸金業者が債務者に受取証書を交付したこと(所定の事項を記載し、弁済の都度直ちに交付することが必要)
(4)出資法の上限金利(年29.2%)を超えないこと
しかし、一般消費者の知識の乏しさに付け込んで高利を得る点が問題視され、最高裁の判例によって、「みなし弁済」規定は徐々に空文化されました。
「みなし弁済」規定の空文化を決定的にしたのは、最高裁平成18年(2006年)1月13日判決です。同判決以降、グレーゾーン金利による貸付けを取りやめる貸金業者が増えました。
そして、2010年6月18日施行の改正法によりグレーゾーン金利が撤廃されて以降、(一部の違法業者を除いて)グレーゾーン金利による貸付けはほぼ見られなくなりました。
2-2. 過払い金請求権の消滅時効
上記の経緯を踏まえると、過払い金が発生するのは、基本的に2010年6月17日以前の借入れに限られます。当時から現在までは12~13年が経過していますが、ここで問題になるのが「消滅時効」です。
過払い金請求権は、以下の期間が経過すると時効消滅します。
(1)最後の取引が2020年3月31日以前の場合
→最後の取引(借入または返済)の日から10年
(2)最後の取引が2020年4月1日以降の場合
→最後の取引(借入または返済)の日から5年
過払い金が発生し得る2010年6月17日以前の借入れについては、今から10年以上前に完済されているものが大半と考えられます。
実際の過払い金請求に至るケースが減っているのは、仮に未回収の過払い金があっても、消滅時効の完成によって請求できない場合が増えたことが主要因と思われます。