3. 遺産分割をやり直す際の注意点
遺産分割をやり直す際には、以下のポイントに注意が必要です。
(1)税金の取り扱いに要注意
(2)時間が経ち過ぎると、特別受益・寄与分を主張できなくなることがある
3-1. 税金の取り扱いに要注意
相続人全員の合意に基づいて遺産分割をやり直す場合、税法上は相続ではなく、贈与・譲渡がなされたものとして取り扱われます(相続税法基本通達19の2-8)。
したがって、やり直しの内容によっては贈与税・譲渡所得税が課される可能性があるので注意が必要です。
無効・取り消しによって遺産分割をやり直した結果、遺産の配分が当初から変わる場合には、相続税額の修正が生じることがあります。
特に、相続税の減額を求める「更正の請求」を行った相続人がいる場合には、他の相続人が納付すべき相続税額が増えます。
この場合、納税額が増える相続人は、再分割完了日の翌日から起算して2か月以内に、税務署長に対して修正申告または期限後申告を行い、追加税額の納付を済ませなければなりません。
さらに、再分割によって不動産を移転する場合には、再び登録免許税がかかる点にもご注意ください。
3-2. 時間が経ち過ぎると、特別受益・寄与分を主張できなくなることがある
2023年4月1日から施行される改正民法904条の3により、相続開始から10年が経過した後は、原則として特別受益※と寄与分※の規定が適用されなくなります。
※特別受益:相続人が被相続人から特別に受けた遺贈および贈与です。特別受益のある相続人の相続分は減り、他の相続人の相続分は増えます。
※寄与分:事業の手伝いや介護などを行い、相続財産の維持・増加に貢献した相続人に認められます。寄与分のある相続人の相続分は増え、他の相続人の相続分は減ります。
再分割が相続開始から10年後以降に行われる場合は、特別受益・寄与分を主張できなくなる可能性があるのでご注意ください。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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