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業績好調の東宝、東映とは対照的に営業赤字幅が拡大した松竹の行方

2023.02.28

松竹の業績が冴えません。2023年1月13日に通期業績予想の下方修正を発表しました。3億4,000万円から17億円の営業損失へと、営業赤字幅を大きく広げる見込みとなりました。

下方修正した要因として、松竹配給作品の実写版「耳をすませば」と「ある男」が予想に届かなかったと、2作品の不発を名指しで挙げています。

松竹はもともと通期で6億円の営業利益を予想していましたが、2022年10月13日に一転して営業赤字へと下方修正していました。その際は舞台公演が中止になったことなどを挙げています。

松竹は主力事業の映画が振るわず、舞台事業の回復も遅れています。

観客の期待を超えられなかった実写版「耳をすませば」

「耳をすませば」は雑誌「りぼん」に連載されていたマンガで、1995年にスタジオジブリがアニメーション映画を制作しました。アニメ映画「耳をすませば」は興行収入30億円を超える大ヒットを飛ばします。

ジブリ版の映画では、ヴァイオリン職人を夢見る天沢聖司と小説家を目指す月島雫の恋物語が描かれ、主題歌であるカントリーロードを効果的に使う演出でファンの心をつかみました。

天沢聖司がヴァイオリン作りに熱中する姿や、月島雫の歌に合わせて仲間たちが楽器を演奏するシーンは「耳をすませば」を語る上で外せないものですが、これらは原作にはないジブリ映画のオリジナルでした。スタジオジブリは原作を換骨奪胎し、印象的な恋物語を120分の映画に収めた手腕が高く評価されました。

実写版「耳をすませば」は二人の10年後を描くもので、編集者となった月島雫とチェロ奏者となった天沢聖司が過去を振り返りながら理想と現実の間で揺れ動く様を描いています。ファンが嫌う、アニメをそのまま実写化するものではありませんでした。

しかし、天沢聖司役の松坂桃李さんや、月島雫役の清野菜名さんがイメージに合わないなど、公開前から映画を批判する人の声がSNS上で絶えませんでした。

もし、実写版の内容が観客の予想を裏切るほどの完成度であれば、口コミで集客につながったかもしれません。しかし、アニメ版の名シーンを盛り込んだために実写版のストーリーが展開しきれないなど中途半端さも目立ち、ファンの期待を超えるものにはなりませんでした。

スタジオジブリは原作ファンを良い意味で裏切って期待値を超えましたが、実写版にはそれがなかったと言えます。

90年代にブームを形成した作品に熱視線

松竹が「耳をすませば」を実写化した理由に、90年代に青春期を過ごした世代の共感を集めることがあったでしょう。東映のアニメ映画「スラムダンク」は興行収入100億円を超えるメガヒットとなりました。スラムダンクが「ジャンプ」で連載されていたのは1990年から1996年までです。

東映は2023年6月に「美少女戦士セーラームーン」の映画化も予定しています。この作品が「なかよし」で連載されていたのは1992年から1997年まででした。

このころに青春期を過ごしていた世代は、30~40代が中心。仕事や家庭が安定し始め、生活に余裕が出ることです。映画会社はコアターゲットに刺さりやすい作品を模索しています。

「スラムダンク」のヒットもあり、90年代に盛り上がりを見せたマンガやアニメが、劇場版として公開される流れは今後も加速すると予想できます。

映画事業が明らかに伸び悩んだ

松竹は2023年2月期に48億5,000万円の純利益を予想しています。しかしこれは、25億7,000万円の補助金収入や、新木場の物流倉庫を売却して70億円の利益を得ているため。本業では利益が出ていません。

なお、東宝は2023年2月期に420億円、東映は316億円の営業利益を見込んでいます。一方、松竹は3期連続の営業赤字となる見込みです。

松竹の第3四半期の事業別利益を見ると、安定的に利益を出しているのは不動産事業のみ。歌舞伎座などの演劇事業はコロナ禍の最悪期を抜け、黒字化はできていないものの損失額は10億円程度にまで縮まりました。

決算短信より

映画事業がまったく伸びません。2023年2月期は、2022年9月に公開した「劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVEスターリッシュ」が興行収入15億円、6月公開の「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」、7月公開の「ゆるキャン△」が10億円を超えるヒットとなりました。

しかし、アニメ作品以外の映画でヒット作が生まれておらず、業績の回復も遅れています。

具体的な戦略を打ち出せずに後塵を拝す

松竹は中期経営計画を出していません。業績回復が遅れている要因の一つに、数字を交えた方針や戦略を打ち出していないことがあると考えられます。

東宝はコロナ収束の見通しが立たなかった2022年4月に「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」を打ち出し、アニメーションを成長ドライバーとしてコンテンツ関連に500億円を投資すると発表しました。更に「アニメ本部」を新設する組織再編も実施しています。

これにより、アニメーション部門の予算獲得がしやすくなり、迅速な意思決定が可能になりました。

東映は「TOEI NEW WAVE 2033」において、企画制作力を強化して新規IPの創出に注力するとしています。その足掛かりとして、国内外のプロデューサー人材の増員やアニメプロダクション、フェスティバルなどとの連携強化を図る計画を立てています。

松竹の近年のヒット作はアニメーションに偏っていました。2020年9月公開の「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は興行収入21億円を突破。2021年6月の「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」も22億円を超えています。

戦略的にアニメーションを強化するなど、何らかの手を打つ局面がきているように見えます。

取材・文/不破 聡

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