『持株会社』というワードを見聞きしたことはあるでしょうか?実際に、持株会社とは何なのかを知らない人も少なくありません。持株会社の基本知識やメリット・デメリットを解説します。知ることで、社会の仕組みをより理解できるようになるでしょう。
持株会社とは?
そもそも持株会社とは、どんな会社を指すのでしょうか?知識やメリット・デメリットを学ぶにあたって、まずは持株会社の基本理解を深めましょう。
支配したい会社の株を保有する会社
持株会社とは、支配する目的で他の会社の株式を保有する会社のことを指し、『ホールディングカンパニー』とも呼ばれます。
保有する株式の割合によっても異なりますが、基本的には株式を保有している会社が『親会社』、株式を保有されている会社が『子会社』と位置付けられます。
なお、他の会社の株式を保有していたとしても、投資目的である場合や、結束力強化のため双方で保有し合っている場合などは、持株会社とは定義されません。あくまで、子会社をコントロールする目的で株式保有しているケースが該当します。
つまり、他の会社の株式を保有していること、かつその会社の経営に携わる立場であることが条件となります。
持株会社は禁止されていた?
事業に対する支配力が過度に集中することが懸念され、かつて持株会社は独占禁止法によって禁止されていました。
しかし、グローバル化などの観点から1997年6月に法改正が行われたことにより、持株会社の設立が解禁されたのです。
さらに同年12月に、子会社の大半が金融に関する事業を行う『金融持株会社』も設立が解禁されたことで、各持株会社の再編成が加速することとなりました。
それ以降、多くの会社がグループの強化・業務のスマート化などを目的に、持株会社を設立しています。
参考:持株会社の解禁について – 日本経済団体連合会
参考:野村資本市場研究所|持株会社設立の解禁と金融持株会社
持株会社の種類
持株会社には、事業持株会社・純粋持株会社・金融持株会社の3種類があります。それぞれの役割と特徴を知りましょう。
事業持株会社
事業持株会社は、他社の株式保有に加え、自社でも事業を営む会社を指します。子会社からの配当収入だけでなく、自社事業からも収益を得られるのが特徴です。
業務・業績において子会社に依存することがないため、リスクを最小限に抑えられるという側面もあります。例えば、既存の会社が株式交換して親会社になった場合に、これまでの自社事業を継続するケースは少なくありません。
自社事業は継続しつつグループ全体として成長していきたいという場合や、副事業を子会社に任せたい場合などに、事業持株会社となることが多いといえるでしょう。
純粋持株会社
純粋持株会社は、自社で事業は営まず、子会社の株式保有と事業統制のみを目的として設立された会社です。自社としての売上はないため、子会社からの株式配当が主な収入源となります。
純粋持株会社の場合、基本的に子会社は独立した事業として認められているため、個々の会社が自由に事業を行いやすいのが特徴です。
また、特定の事業に傾倒しないため、広い視点でグループ全体の経営戦略が立てられるのもポイントです。なお、複数の会社を子会社に持つ場合、子会社同士に上下関係はなく対等な関係になります。
金融持株会社
金融持株会社とは、銀行・証券・保険などの金融機関の株を保有し、配下に置く会社のことです。純粋持株会社と同様に自社で事業は営まず、子会社の統括を目的として設立されたものです。
1997年の独占禁止法の改正により設立が許可されて以降、現在ではメガバンク・証券会社を中心に多くの金融持株会社が存在しています。
大手ホールディングカンパニーでは、銀行・証券会社・保険会社・クレジットカード会社・資産運用会社・消費者金融など、業界を超えてさまざまな金融機関を統括しているケースも多くあります。
持株会社のメリット
それでは、持株会社にはどのようなメリットがあるのでしょうか?持株会社の主なメリットを3点解説します。
事業経営の効率化ができる
持株会社は、グループ全体の経営判断を一手に担うため、経営方針のブレが生じにくいというのがメリットの一つです。
複数の部署・担当内での意見の調整が必要ないためスムーズな意思決定が行え、ビジネスのスピード感が上がるだけでなく、事業経営の効率化が期待できます。
また、親会社は経営に、子会社は事業に集中できるので、それぞれが最大限のパフォーマンスを発揮できる環境を作れるのも利点です。
新規事業や新製品・新サービスの開発など、新しい取り組みにも挑戦しやすくなるため、会社の新しい可能性もどんどん広がるでしょう。
経営リスクの分散が可能になる
二つ目のメリットは、経営リスクの分散が可能になることです。傘下の会社はそれぞれ独立採算制であるため、どこか一つの企業で大きな損失・業績の悪化が生じた場合でも、基本的にはグループ内の他の企業には影響を及ぼしません。
そのため、持株会社として複数の子会社を統括することは、経営のリスク回避としての役割も果たします。さらに、各子会社が別事業を営んでいる場合は、特定の業界で業績悪化が起こった際に共倒れを避けることが可能です。
また、ある子会社で生じた損害を他の子会社を売却することで補填するなど、何かマイナスのことが起きた場合にリカバリーしやすいのも大きなメリットとなります。
事業に合わせた運営が可能
持株会社は、事業に合わせた運営ができるのもメリットです。傘下の子会社はそれぞれが一企業として独立しているため、事業の進め方・運営方法は一任されているケースがほとんどです。そのため、各企業が事業に合わせて、独自の労働条件・人事制度を導入できます。
例えば、A社は不動産・B社は小売・C社はITといったように、各子会社がそれぞれ別の事業を行っている場合、繁忙期・労働形態は大きく異なります。働き方が異なるのに運営方法が一通りでは、あらゆるところで不具合が生じる可能性が高くなるでしょう。
その点、持株会社であれば細かな部分まで事業に合わせやすいので、従業員にしわ寄せがいかないところもメリットといえます。
持株会社のデメリット
最後に、持株会社のデメリットを説明します。持株会社のメリットはいずれも魅力的でしたが、デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?
管理コストが増えやすい
独立した企業を複数傘下に置いていると、管理コストが増えるというデメリットがあります。
独立体制の場合、人事・総務などのバックオフィスも各会社に配置されるため、子会社が増えれば増えるほど管理コストの増加は避けられません。
バックオフィス業務を親会社でまとめて行う方法もありますが、各子会社の業務を効率的に遂行するためには、自社にバックオフィスがある方が格段にスムーズです。
持株会社としてはある程度は必要経費であるという理解を持ちつつも、各子会社側ではできるだけコスト削減に努めるなどの姿勢が必要になるでしょう。
グループ企業間の連携がおろそかになるリスク
それぞれの子会社が法人格を持ち独立した企業として事業を営むことは、メリットがある半面、大きなデメリットとなる得る点もあります。それは、グループ企業間の連携がおろそかになる可能性があるというものです。
持株会社がうまく舵を取れないと、親会社・子会社の間だけでなく、子会社同士の意思疎通が困難になる可能性もあります。グループ内での連携不足は、業務の効率化・業績に大きな影響を与えかねません。
一企業としてではなく、グループの統括役として、全体に目を配りながら密にコミュニケーションを取る努力が求められるでしょう。
構成/編集部