バリューチェーン分析を行う際の注意点
信頼性の高いバリューチェーン分析を行うには、広い視野・客観的な視点を持つことが重要です。分析を行う上で、注意したいポイントを紹介します。
分析だけを目的にしない
バリューチェーン分析を行う場合は、分析することが目的とならないよう注意しましょう。バリューチェーン分析では、企業活動の全てをリストアップして、どのような付加価値が生み出されているのかを調べる必要があります。
全体を俯瞰する必要があり、一つ一つの項目にこだわりすぎると、いつまでたっても分析が終わりません。分析に時間がかかりすぎると、情報の鮮度が落ちるリスクもあります。どれほど詳細な分析でも企業戦略に生かすのは難しく、バリューチェーン分析の意味がありません。
客観性・環境の変化を考慮
主観に偏ったバリューチェーン分析では、信頼性・正確性に不安が残ります。企業戦略に組み込むのであれば、多角的な視点から情報を集めなければなりません。
企業内のメンバーのみでバリューチェーン分析を行うのであれば、さまざまな部署・役職のメンバーを集めましょう。分析者を同じ属性でそろえると、分析結果が偏る可能性があるので注意が必要です。
客観性を担保したい場合は、他社のバリューチェーン分析も併せて行いましょう。自社と他社それぞれの強み・弱みを相対的に比較することで、分析の精度を上げやすくなります。
また社会情勢・時流の変化により、市場の価値観は簡単に一変します。市場の変化を察知したら、新しい視点・価値観でバリューチェーン分析を再構築することが必要です。
自社完結型の企業以外には不向き
事業活動の一部に他社が介在する企業は、バリューチェーン分析に不向きです。
そもそもバリューチェーンとは、事業活動を個ではなく『価値の連鎖』とする考え方です。途中の活動が抜けてしまうと、活動間の影響の仕方や関連性、価値の連鎖を測定できません。バリューチェーン分析を行っても、正確なデータは得られないでしょう。
バリューチェーン分析が向いているのは、製造業でいえば、原材料の調達からアフターサービスまでを一気通貫で行う企業です。これに該当しない企業は、別の分析方法を探すことをおすすめします。
バリューチェーンの事例もチェック
成功している企業の多くは、自社のバリューチェーンを細かく分析・評価してアピールポイントとしています。バリューチェーンで、他社との優位性を確立している企業を見ていきましょう。
おいしいと安心を「味の素冷凍食品」
『おいしい安心品質』をモットーに掲げるのが、味の素冷凍食品です。公式HPでは消費者に向けて、自社がどのような取り組みを行っているのかが『開発』『生産』『販売』の3ステップで紹介されています。
例えば、開発工程では『品質管理を徹底していること』、生産工程では『工場マネジメントを適切に行っていること』、販売工程では『商品価値を伝えるために多くの担当が関わっていること』が紹介されています。
味の素冷凍食品のバリューチェーンは、全てが『おいしい安心品質』というモットーにつながっているのが特徴です。各段階での取り組みが、消費者に『おいしさ』『安心』『高品質』を強く印象付けているといえるでしょう。
参考:味の素冷凍食品株式会社
信頼に応える「東京ガス」
東京ガスの強みは、消費者の信頼に応える安全性です。公式HPでは、『ガスの輸入』『製造』『送り出し』『消費者への供給』までが、バリューチェーンとして紹介されています。
一連の企業活動を見れば、消費者は東京ガスがいかに安全に配慮して、ガスの製造・供給を行っているかが理解できるでしょう。
また東京ガスは、地震を計測するSIセンサー(地震計)を導入していることや、製造基地が阪神・淡路大震災や東日本大震災クラスの地震が起きても耐えられることを紹介しています。
地震を不安視する消費者が多いことを考えれば、地震対策を徹底している点は大きな強みといえるはずです。
参考:東京ガス
世界を目標に「伊藤園」
『世界のティーカンパニー』を目指す伊藤園は、お茶に関する総合力・技術力が強みです。経営戦略として、国内外の無糖茶市場の創造・拡大や、新たな茶文化の創造、茶産業の継続的な発展などを掲げています。
伊藤園のバリューチェーンは、『研究・企画・開発』『調達』『原料加工』『製造・物流』『営業・販売』までの五つです。製品開発のコンセプトを、自然・健康・安全・よいデザイン・おいしいとし、これらを実現するために各工程でさまざまな取り組みが行われています。
また伊藤園は、サステナビリティを重視した取り組みを重要視してる点も見逃せません。全世界共通の社会的課題への貢献は、国内外への大きなアピールとなるはずです。
参考:伊藤園
構成/編集部