スターターボタンを押し、エンジン始動。エクゾースト音はフツー。バク音系の音ではない。1速にシフトし、慎重にクラッチをミートさせると「170S」は軽快に走り出した。5000回転を目安にシフトすると、1速30キロ、2速50キロ、3速80キロに達する。そのまま加速を続ければ、4速115キロになる。フォーミュラカーのようなボディと、簡単なホロでの走行だが、低速では直進は重いがきりこんでいくと軽めになる。もちろんパワーアシストなどはないので、駐車するときのような超低速での操舵力は重い。
交差点のようなところでは、ハンドルを切ったら、そのままなので、自分で戻さなければ、曲がったまま突っこんでしまうことになる。それはワインディングでも同じ。切ったハンドルはきちんと戻さなければならない。この動きは、車速が高くなるとさらにハッキリと現象として表れる。高速の直進では手首のわずかな動きでも前輪はパッと向きを変える。コーナーではきったあとの戻しは重く、力を要した。
常にハンドルは両手できちんと握っていないと、何がおこるかわからない。そんな緊張感も「170S」のドライビングの楽しみなのだ。意外だったのは、高速走行でもクルマの安定感とか居住性は、不快ではなかったこと。その理由のひとつは、乗り心地だ。「170S」は「170R」とは異なり、ロードサスペンションが組みこまれている。タイヤは155/65R14の英国エイボン製のZT5を装着している。
この組み合わせは低速では上下動のキツさは少なく、ハネ上げも抑えられている。高速道路でも上下のハネ上げは小さく、直進性も路面の状況にとらわれず、しっかりとしている。車重が440kgと軽く、硬めのサスペンションなので、もっとポンポンとハネ気味かと想像していたので、これは意外だった。
ホロを外し、オープンにして高速道路を走ってみた。ドアは上下2ケ所のピンでとまっているだけなので、両手で持ち上げればすぐに取れる。外したドアは2ツ折にしてシートのうしろに置いておける。ルーフ部分はフロントスクリーンのフックを外し、折り畳める。ホロを全開にしたコクピットは「170S」独自の世界。ハンドルから手を離して車外に手を伸ばせば、路面に手が届くほど着座位置は低い。
オープンのまま高速道路を走ってみた。これは大失敗。風が巻きこむなんていうレベルではなかった。あわてて、せめてドアだけでも ということでドアを装着。これでだいぶラクに走ることができた。軽自動車だが、その走りの楽しさや速さは本格的なスポーツカー。このクルマを企画した技術陣に拍手を送りたい。セカンドハウスのガレージに置いておきたい1台だ。
■関連情報
https://www.caterham-cars.jp/cars/seven-170S.html
文/石川真禧照(自動車生活探険家) 撮影/萩原文博