■石川真禧照のK-CAR徹底解剖
1950~70年代にかけて英国に「ロータスセブン」というスポーツカーがあった。F1で有名なロータスが、安価にレースを楽しめるためにつくったスポーツカーだった。ロータスは資金調達のためにセブンの製造販売権を、ロータスの販売代理店だったケータハムに売却した。ケータハムはセブンを当時のまま生産販売した。
そして2021年、日本の会社がケータハムの株式を取得し、新しい一歩を踏み出した。「ケータハム・セブン」は同じボディにいくつかのエンジンが選べた。そのひとつに日本の軽自動車のエンジンを取り上げたのだ。しかもボディサイズを日本の軽規格に合わせたのだ。エンジンはスズキの3気筒ターボ。こうしてケータハム史上はじめての軽自動車スポーツカーが誕生した。
制約のあるが、なぜかワクワクするクルマ
試乗用に用意されていたのは「ケータハム170S」。スズキ製エンジンはターボでチューンされ、85ps、116Nmにアップしている。さらにサーキット走行を重視した「170R」もあるが、これはフロントガラスもないフォーミュラカーのようなクルマなので、今回は「170S」をチョイスした。それでもフォーミュラカーにホロを取り付けたような「170S」に乗りこむには、柔らかい身体と細身のシューズが必要だった。
キャンバスとアクリルのドアはストッパーなどないので、手で押さえながら、コクピットに身体を押しこまなければならない。コクピットはかなりタイトで、着座も低い。しかもペダル類は間隔も狭く、巾広の靴だとブレーキとアクセルを同時に踏んでしまいかねない。ボクサーシューズやレーシングシューズのような細身の靴はマストアイテムだ。上半身も動かせる範囲は限られており、不必要な動きは許されない。それほどに制約のあるクルマなのだが、なぜかワクワクする。
走り出す前に操作系をチェック。シフトは5段マニュアル。クラッチペダルはやや重めで、反発力は強い。シフトはストロークが短く、重い。でも、カチッ、カチッと各ギアに入る。ハンドルは小径で、握りが太く、フォーミュラカー的だ。
ウインカーはダッシュボード上のトグルスイッチを手で動かす。左は下、右は上にレバーを動かすとウインカーが点滅する。ホーンはボタンスイッチだ。指でボタンを押すと、ホーンが鳴る。メーターは目の前に大径のスピードメーターとエンジン回転計が並ぶ。エンジン回転計は8000回転まで、スピードは250km/hまで刻まれている。その左横には油圧、水温、燃料計が並んでいる。