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ニュースでよく聞く経済用語「第三者割当増資」の目的、メリット、株価に与える影響

2023.03.27

『第三者割当増資』とは、資金調達で用いられる手法の一つです。特徴は、株式の発行先として、企業に友好的な相手を選べる点です。事業規模の拡大・敵対的買収の対策などが見込めます。第三者割当増資を行う目的や、株式に与える影響について解説します。

第三者割当増資って何?

まずは、第三者割当増資の基礎知識について解説します。『株主割当増資』『公募増資』との違いも見ていきましょう。

第三者に株式を買ってもらう資金調達方法

『第三者割当増資(だいさんしゃわりあてぞうし)』とは、新株の発行で増資を行うことです。具体的には、特定の第三者に株式を引き受ける権利を与えることを意味します。

発行先として取引先の企業・役員が選ばれるケースが多く、別名『縁故者割当増資』と呼ばれることもあります。なお、株式の取得権を与える対象が既存株主かどうかは関係ありません。

第三者割当増資の特徴は、株式の取得権を与えられた譲受企業が、譲渡企業の経営に関与できる点です。経営に関与できるのは、譲渡企業の株式を50%以上保有しているかどうかで決まります。

経営に関与するようになると、経営権を譲受企業に移譲したことになるため、M&A(※)が成約したと見なされます。

※『Mergers(合併)and Acquisitions(買収)』の略で、一般的には企業の合併・買収を意味する

株主割当増資との違い

第三者割当増資に似た資金調達の方法として、『株主割当増資』があります。第三者割当増資との違いは、対象者を『既存株主』に限定している点です。

株主割当増資の狙いは、既存株主に新株を購入してもらい、資金を増やすことにあります。相手はすでに自社株を保有しているため、出資を打診しやすい点がメリットです。

公平性の観点から、株主ごとに株の発行比率を調整することはできません。会社法第109条1項にて定められている『株主平等の原則』により、既存株主の持株数に応じて、新株の発行比率を割り振るように定められています

市場価格よりも低い価格で発行されることが多く、企業・株主に対する利益のバランスが保たれています。

なお、株主割当増資には購入を強制する権限はありません。企業に投資するメリットがなければ、断られる場合もあるでしょう。

参考:会社法 第109条1項 | e-Gov法令検索

公募増資との違い

『公募増資』とは、一般の投資家を対象にした資金調達方法です。株主割当増資との違いは、既存株主以外でも株式を購入できる点です。

基本的には上場企業が行う手法で、企業の知名度・自社株の流通性を向上させるメリットがあります。一方デメリットは、新規株主の増加によって株主構成比率が変動する可能性がある点です。

構成比率が変動する原因は、株主が増加したことで発行済株式の総数が増えるためです。株式の総数が増えると、1株当たりの価値が下がるので、一時的な株価の下落につながります。

株価の低迷を阻止するためには、速やかな事業の成長・業績の向上が求められます。

資金調達以外で第三者割当増資を行う目的

現金と株価チャート

(出典) photo-ac.com

第三者割当増資を行う目的は、資金の調達だけではありません。提携先との関係性強化や、M&Aの成約などが挙げられます。

それぞれの目的について、詳しく解説します。

提携先との関係性強化

第三者割当増資は、会社にとって有益な相手を選び、関係性を強化できる点が魅力です。

自社の経営に関わってくる可能性もあるので、友好的な相手を選びたいと思うのは当然のことといえるでしょう。関係性を強化することで取引が円滑になり、事業が成長する可能性もあります。

また、提携先と協力すれば、敵対会社からの買収も阻止できます。企業が避けたいリスクの一つが、後述する『敵対的買収』です。

敵対会社が自社の株式を50%以上保有した場合、経営権を奪われてしまいます。しかし、第三者割当増資を利用すれば、友好的な提携先に限定した新株の発行が可能です。

結果として敵対企業の持株比率を減らせるほか、株主構成比率の調整も可能となります。

M&A

第三者割当増資は、M&Aの実施を狙って行われることもあります。具体的には、提携先の企業に投資を行い、議決権を得るという目的です。

資本を目的とした業務提携のほか、技術開発・営業活動の協力などが可能となります。自社株式の過半数もしくは2/3以上を渡すことで、経営権の移譲が認められます。

経営権を移譲することで、定款の変更をはじめとした重要な決議も、単独で実施できるようになるのです。

第三者割当増資のメリット

大金と電卓

(出典) photo-ac.com

第三者割当増資のメリットは、株式の発行先を決められることにあります。企業に対して友好的な相手を選べば、事業規模の拡大や敵対的買収の対策が可能です。

また、集めた資金に対して返済義務がないことや、税金が課されないことも大きな特徴です。それぞれのメリットについて、詳しく解説します。

事業規模の拡大ができる

第三者割当増資を利用することで、以下のメリットが生まれます。

  • 増資により、事業拡大のチャンスが生まれる
  • 短期間で資金の調達ができる
  • スピード感のある事業展開が可能

会社の運営に賛同してくれる企業・人が集まるため、増資による事業拡大を狙えます。資本提携だけでなく業務提携も可能になり、事業の多角化も可能です。

資本金が増えれば金融機関から信用されるので、社会的信用を得られる利点もあります。取引・資金調達をより円滑に進められるようになるでしょう。

また、資金調達に関する手続きが少ない点もポイントです。資金調達が短期間で済むため、スピード感のある事業展開が可能になります。

株式の発行先を決められる

第三者割当増資の特徴は、『株主の取得権を誰に与えるか?』を企業が決められる点です。株式の発行先を決められるので、望まない株主の参入を防げるメリットがあります。

望まない株主とは、経営に批判的だったり、今後敵対する可能性があったりする企業・人のことです。後述する『敵対的買収』にも関係してくるため、経営に関するリスクは可能な限り排除したいところです。

運営に賛同してくれる企業・人を発行先に選べば、資金を調達しやすくなり、経営の安定化も図れます。

敵対的買収の対策ができる

そもそも買収とは、対象企業の株式を50%以上獲得し、経営権を得ることです。事業の一部、または全てを買い取るケースもあります。

『敵対的買収』とは、買収の対象とする企業に対し、経営陣の同意を得ないまま買収することです。敵対的買収が行われると、経営陣は会社から締め出される形となります。

敵対的買収を阻止するためには、買収を狙う株主の持株比率を強制的に下げる必要があります。そこで有効な手段として用いられるのが、第三者割当増資です。

運営に賛同する企業・人を対象に新株を発行できるメリットがある上、法的な問題もありません。とはいえ、既存株主の持株比率にも影響を及ぼすことは覚えておきましょう。

調達した資金は返済の義務・課税がない

第三者割当増資で調達した資金には返済の義務がなく、課税の対象外として扱われます。金融機関から受ける融資は返済義務が生じますが、株式を買ってもらうことで得た資金には返済義務がないのです。

あくまでも、『新株の発行によって得た資金』であることがポイントです。資金の売却・株式の譲渡にも当てはまらないため、贈与税をはじめとした税金も発生しません。

資金の返済に追われるリスクがないことは、大きなメリットといえるでしょう。

第三者割当増資のデメリット

株価チャートとノートを見る男性

(出典) photo-ac.com

企業側にとってメリットばかりの第三者割当増資ですが、デメリットはあるのでしょうか?ポイントは、『株式の希薄化』と、資金が増えることで生じる『税負担』です。

第三者割当増資で起こり得る、リスク・デメリットについて解説します。

既存株主の利益を損なう

第三者割当増資には、新株の発行により敵対的買収に備えられるメリットがあります。

しかし、株主構成比率が変わることで、既存株主が不利益を被ることも忘れてはいけません。株式の発行数が増えると株式の総数が増え、1株当たりの価値が目減りしてしまうのです。

これを、『株式の希薄化』といいます。株式の希薄化がもたらすリスクとは、株主の利益を損なう可能性が出てくることです。

場合によっては、株主から反発を受ける恐れがあります。損切りのために株式が売却される可能性があることも、覚えておきましょう。

税負担が重くなる場合がある

第三者割当増資で調達した資金は、基本的に課税の対象外です。ただし、資金が増えることで、税負担が重くなる場合があることも知っておきましょう。

税負担が発生する資金のボーダーラインは、1,000万円と1億円です。まずは、資金が1,000万円を超えた場合の税負担について解説します。

1,000万円以上の資金を保有する企業に課されるのは、『消費税』です。売上の消費税分も課税の対象となり、納税義務が発生します。

次に、企業の資本が1億円を超えた場合です。企業の資金が1億円以上になると、『法人税の軽減税率』が適用されなくなります。

これまでよりも税率が上がるほか、中小法人で優遇される税制も適用外となるため、税負担が重くなるのです。

第三者割当増資が株価に与える影響

パソコンと手帳と株価チャート

(出典) photo-ac.com

第三者割当増資が株価にどのような影響を与えるかは、増資の目的によって変わってきます。例えば、新事業の立ち上げ・事業規模の拡大・運転資金の確保など、動機はさまざまです。

株価の上昇・下落要因となるケースについて解説します。

会社の成長が見込まれると上昇要因となる

第三者割当増資を行うと、市場でプラスの評価を受けることがあります。例えば、新事業の立ち上げ・事業規模拡大を目的とした場合です。

第三者割当増資により業績の回復が見込まれるので、株価が上昇しやすくなります。また、引受先との『シナジー効果』を見込めるメリットもあります。

シナジー効果とは、簡単にいうと相乗効果のことです。複数の企業・組織同士が、事業によい影響を与え合うことをいいます。例えば、第三者割当増資による業務提携で、企業の売上が伸びるケースです。

事業提携で販路の拡大・コスト削減などが可能になれば、業績アップにつながります。業績が上がれば投資家から注目され、株価の上昇要因となるのです。

ネガティブな理由による増資なら下落要因に

増資がネガティブな理由で行われる場合、株価が下落する可能性があります。ネガティブな理由とは、『融資が受けられない』『運転資金を確保したい』などが該当します。

このような理由が背景にある場合、投資家・株主から『経営状況が悪化している』と受け取られかねません。状況によっては、株式が一斉に売却される可能性もあります。

そもそも投資とは、投資先の企業が利益を出し続けることを前提としています。投資先が得た利益を『配当』として受け取っているのです。

損切りとして株式が売却され続けてしまうと、短期間のうちに株価が暴落することもあります。

構成/編集部

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