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「貸借対照表(BS)」とは?知っておきたい損益計算書との違いや見方、分析のポイント

2023.03.26

初めて決算書の作成に携わることになったのなら、貸借対照表の基礎を勉強しておきましょう。表の見方が分かるようになる上、企業分析を行うことも可能です。貸借対照表の見方や分析方法、損益計算書との違いについて解説します。

貸借対照表ってどんな書類?

企業は、株主・金融機関に財政状況を報告する目的で、決算書を作成しなければなりません。決算書で特に重要とされる書類3点のうち、貸借対照表の概要について解説します。

企業の財務諸表を構成する書類の1種

貸借対照表とは、損益計算書・キャッシュフロー計算書と併せて、決算書(財務諸表)を構成する書類の1種です。この書類3点は、決算書の中でも特に重要性が高い書類であり、まとめて『財務三表』と呼びます。

貸借対照表の読み方は『たいしゃくたいしょうひょう』です。英語では『バランスシート(Balance Sheet)』と呼ばれ、『BS』と略されることもあります。

貸借対照表を見ると、企業の資産・負債の内訳を把握することが可能です。具体的には、以下の3点が分かります。

  • 保有資産
  • 返済義務のある負債
  • 返済義務がない純資産(総資産負債)

財務三表のうち、企業の経営状況を知る指標となるのが貸借対照表なのです。

損益計算書との違い

企業の資産・負債の状況は、日々変わっています。特定の時点における成績を出す書類が、貸借対照表です。一般的には決算日の資産・負債・純資産の、金額・内訳が示されます。

一方、特定の期間における利益の推移や、経営の効率性を表すのが損益計算書です。決算期の利益・支出が示されます。

損益計算書の英語表記は『Profit and Loss statement』であり、略語は『PL』です。貸借対照表と損益計算書は関連性が高く、両者を併せて『BS/PL』と呼ばれます。

なお、もう一つの財務三表であるキャッシュフロー計算書は、特定の期間における現金の動きを表す書類です。キャッシュの増減とその理由が分かります。

貸借対照表の構成

貸借対照表は、大きく左右二つに分かれています。左側は『資産の部』、右側は『負債・純資産の部』です。

お金の流れは、右から左に向かいます。企業が資産を運用(左)する際は、先に資金を調達(右)しなければならないためです。

資金の調達状況が分かる右側と、調達した資金の生かし方が分かる左側は、それぞれの合計が必ず一致します。貸借対照表をバランスシートと呼ぶのは、このことが理由です。

例えば、資産・純資産ともに500万円の企業が、新たに100万円を借り入れたとします。資産600万円・負債100万円・純資産500万円となり、『資産=負債+純資産』が成り立つのです。

貸借対照表の見方

経理資料をチェックする

(出典) photo-ac.com

貸借対照表は左側の資産の部と、右側の負債・純資産の部に分かれています。それぞれの内訳や見方を確認しておきましょう。

資産の部

貸借対照表の左側にある資産の部は、企業が保有する資産を記載する部分です。企業の資金がどのように使われているのかを示しています。

資産に含まれるもののうち、物的な形を有している資産が有形資産です。現金・有価証券・預金・土地・建物などが該当します。著作権・借地権など目に見えない無形資産も、貸借対照表の左側に記載される資産です。

資産の部は流動資産・固定資産・繰延資産に分かれています。繰延資産とは、すでに支払いが済んでいる支出のうち、数年かけて償却する資産です。流動資産・固定資産と違い、実質的な資産としての価値はありません。

流動資産

貸借対照表の資産の部に記載される流動資産は、以下に挙げるものが該当します。

  • 通常の営業活動で生み出される資産
  • 1年以内に現金化・費用化できる資産

流動資産は、次の三つに分けられます。

  • 当座資産:現金化しやすい資産(現金・預金・有価証券・受取手形・売掛金など)
  • 棚卸資産:販売されて現金化される在庫(商品・製品など)
  • その他の資産:当座資産・棚卸資産以外の流動資産(短期貸付金・前払金・未収金など)

流動資産には、すぐに使える現金・預金だけでなく、将来的に現金に変わる可能性があるものも含まれていることが分かるでしょう。

固定資産

貸借対照表の資産の部に記載される固定資産は、以下の条件を全て満たすものが該当します。

  • 1年以上かけて現金化・費用化される資産(減価償却資産)
  • 通常の営業活動から生み出されたものではない

固定資産を構成する要素は、次の三つです。

  • 有形固定資産:形のある固定資産(土地・建物・建築物・設備・器具備品・車両など)
  • 無形固定資産:形のない固定資産(知的財産権・借地権・のれん代・ソフトウェアなど)
  • その他の資産:上記二つ以外の固定資産(投資株式・長期保有目的の有価証券・長期前払費用など)

ただし、土地・建物を販売して利益を得る企業の場合、販売する土地・建物は長期保有を想定していないため流動資産として計上します。

負債の部

貸借対照表の右側にある負債の部は、資産を入手するために、どのような方法で資金調達したかを表す部分です。返済義務があるもの以外に、対価を支払う必要があるものや、将来的な支出が見込まれるものに対する準備金も含まれるのが基本です。

負債の部は、以下の二つに分けられています。

  • 流動負債:通常の営業サイクルで保有する負債、または1年以内に支払ったり収益化したりする負債
  • 固定負債:支払うタイミングが1年以上後になる負債

負債とはマイナスの財産のことですが、負債が増えると資産も増えることになり、負債・純資産の合計が資産と同額になります。

流動負債

一般的に、決算日から1年以内に支払わなければならない負債が、流動負債です。主に次のようなものが該当します。

  • 買掛金:商品購入・仕入れで発生した未払い債務
  • 未払金:未払いの配当金・利息・消費税・法人税など
  • 短期借入金:決済日から1年以内を返済期限とする借入金
  • 支払手形:通常取引にもとづいて発生した手形債務
  • 預り金:役員・従業員・取引先の負担金を一時的に預かるお金
  • 前受金(手付金・内金):商品・サービスの提供前に販売先から受け取る代金
  • 前受収益:未提供の役務に対してすでに支払いを受けたお金

固定負債

固定負債は、決算日から1年以上経過したタイミングで返済する負債のことです。固定負債の例を以下に紹介します。

  • 社債:企業が発行する借用証(返済期限1年以上)
  • 長期借入金:返済期限が決済日から1年より長い借入金
  • 長期前受収益:前受収益のうち決済日から1年超の期間を経て収益化されるお金
  • 預かり保証金:取引・契約で担保とする保証金・敷金(返済期限1年以上)
  • 退職給付引当金:退職金支給に備えて計上するお金
  • 繰延税金負債:会計上の損益と税務上の所得の差額に相当するお金

なお、返済期限が1年以内の社債・預かり保証金は、流動負債に含めます。

純資産の部

純資産とは、資産から負債を引いた部分です。負債と同じく、貸借対照表の右側に記載します。返済の必要がない資金であるため、一般的に純資産が多いほど会社の財務状況は健全だと考えられます。

純資産の部を主に構成するものは、以下の通りです。

  • 株主資本:株主全体に帰属する資産額
  • 評価・換算差額等:資産の購入価格と時価の差額
  • 新株予約権:新株予約権の払い込み金

株主資本の部分は、『(資本金+資本剰余金+利益剰余金)−自己株式』で算出された金額を記載します。

貸借対照表の分析方法

資料と電卓

(出典) photo-ac.com

貸借対照表は、支払い能力や企業の安定性の分析に役立てることが可能です。見方の基本や、分析のポイントを見ていきましょう。

短期的な支払い能力は流動比率をチェック

企業の短期的な支払い能力を分析する際は、貸借対照表を用いて流動比率をチェックします。流動比率とは、次の計算式で導き出される割合のことです。

  • 流動比率=流動資産÷流動負債×100

流動比率を見ると、近い将来に支払う必要がある負債に対し、短期間で現金化できる資産がどのくらいあるのかが分かります。流動比率が高いほど、短期的な返済能力が高いと判断することが可能です。

短期的な支払い能力に問題がないとされる目安は、『流動比率200%以上』です。逆に、流動比率100%以下が続くようなら、自己資本の増強や流動負債の固定化を図る必要があるでしょう。

より確実性の高い支払い能力は当座比率を確認

貸借対照表を用いて当座比率を算出すれば、より確実性の高い支払い能力を診断できます。当座比率の計算式は、以下の通りです。

  • 当座比率=当座資産÷流動負債×100

当座資産とは、現金・預金・売掛金・受取手形など換金性が高い資産のことです。当座比率で分析することで、短期的な支払い能力をよりシビアにチェックできます。

当座比率が高いほど、支払い能力も高いといえます。一般的には『当座比率100%超』が理想的です。ただし、当座比率による分析は流動比率より条件が厳しいため、80%程度を基準に考えるケースもあります。

企業の安全性は自己資本比率と固定比率をチェック

貸借対照表で自己資本比率を求めれば、企業の安全性をチェックできます。自己資本比率の計算式を確認しましょう。

  • 自己資本比率=自己資本(純資産)÷総資本(資産)×100

自己資本比率が高ければ借金の割合が低いことになるため、中長期的な観点から倒産しにくい企業であると判断できます。

また、企業の安全性は固定比率を用いることでも分析が可能です。固定比率は以下の計算式で求められます。

  • 固定比率=固定資産÷自己資本×100

固定比率は、自己資産に対してどれだけ固定資産があるかを表す指標です。固定比率が低い企業は、固定資産を自己資本でまかなえていることになるため、安全性が高いと判断できます。

貸借対照表を分析するときのポイント

電卓を操作する

(出典) photo-ac.com

貸借対照表を用いれば、支払い能力や企業の安定性以外にも、さまざまな観点から企業の状態を把握できます。貸借対照表を用いて企業分析を行う際のポイントを紹介します。

自己資本比率が高いか

貸借対照表から割り出せる自己資本比率は、企業の安全性をチェックできる指標の一つです。自己資本比率の一般的な目安は、以下のようになっています。

  • 40%以上:経営が安定している
  • 20%以上~40%未満:一般的な水準
  • 10%以上~20%未満:倒産リスクあり
  • 10%以下:倒産リスクがかなり高い

自己資本比率の目安は業界によって異なるため、上記の目安が全ての業界に当てはまるとは限りません。40%を超えていても安心できないケースもあれば、20%程度で経営が安定していると判断できるケースもあります。

例えば、固定資産をあまり必要としないIT業界は、自己資本比率が高い傾向があります。逆に、固定資産が多い飲食業界・宿泊業界は、自己資本比率が低めです。

現金化しづらい棚卸資産がないか

棚卸資産とは、流動資産として計上されるものの、現金化できない恐れのある資産のことです。在庫をイメージすると分かりやすいでしょう。

在庫が売れ残ると現金化できないため、見かけよりも経営状況は悪いことになります。貸借対照表による分析の際は、現金化しづらい棚卸資産がないかチェックすることも重要です。

短期間で売れそうにない在庫が多い場合は、『当座比率』を算出して支払い能力を確認しましょう。当座比率は、棚卸資産を除いた流動資産で算出されるため、より実態に即した分析が可能になります。

現金化しづらい棚卸資産が多いと、在庫管理コストの増加や保管の長期化による品質劣化など、企業経営に悪影響を及ぼしてしまうこともポイントです。

売上に対し売掛が多くないか

流動資産に分類される売掛金は、未回収のお金です。1~2カ月分までなら計上されていても問題はありませんが、それ以上は注意が必要となります。

売上の4カ月分以上の金額が売掛金として計上されている場合、回収が滞っている恐れがあります。回収までに時間がかかりすぎる取引先の存在も、チェックしなければならないでしょう。

売掛金の回収スパンが長くなるほど、資金繰りが厳しくなってしまいます。売上に問題がないのにもかかわらず資金繰りに困っている場合は、売掛金に関する取引状況を確認することが重要です。

仮払金・仮受金が多額に残っていないか

仮払金・仮受金は、期末に全て清算しておくのが基本です。貸借対照表に仮払金・仮受金が残っている場合は、未精算分があることになります。

清算されていない分が少額なら問題はありませんが、仮払金・仮受金の勘定科目が多額に残っている場合、銀行や税務当局から理由を問われるでしょう。

仮払金・仮受金は、内部不正の温床にもなりやすい科目です。貸借対照表に仮払金・仮受金が残ったままになっているなら、内容を確認する必要があります。

構成/編集部

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