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給料を30万円下げられ降格そして解雇…会社を訴えた社員の逆転サヨナラホームラン

2023.02.22

こんにちは。弁護士の林 孝匡です。

宇宙イチ分かりやすい解説を目指しています。

裁判例をザックリ解説します。

鶴の一声で給料を30万円も下げられた社員さんの話です。社長が「私の命令を果たせなかったし、新規顧客も開拓できてないので給料を30万円下げますね」とマジで実行。

社員さんはその後、解雇されました。社員さんは訴訟を提起。

〜 結果 〜

社員さんの勝利です。裁判所はザックリ「その命令、会社にとって意味あんの?」「給与の減額は無効ね」「解雇も無効!」「もろもろ払え」と判断(コアズ事件:東京地裁 H24.7.17)

そうカンタンには給与を下げることはできません。以下、くわしく解説します。

どんな事件か

会社は警備業務などを行う会社。Xさんは営業開発部長です(当時54歳くらい)。

▼社長からの命令

Xさんは中途入社です(平成20年2月)。入社面接のとき、社長はXさんに対して「優秀な営業社員10名を採用」するよう命じました。

Xさんの仕事は新規顧客の開拓や既存顧客の維持でした。Xさんには2名の部下が配属されていました。

▼ Xさんが頑張るも…

社長からの特命を果たすべく、Xさんは合計8名の営業社員候補を社長に推薦しました。しかし社長は全無視。

何が社長の気に障ったのか分からないのですが、面接さえせず、全ての方を不採用としました。ここからXさんへの風当たりが強くなります。

▼ 給与の減額(1回目)

入社から約1年後(平成21年3月)、給料が80万円から50万円に下がりました。妻にめっさ詰められるレベルですね。以下の規程に基づく減額です。


給与規程 20条
3 勤務評価、人事査定の結果、現職にふさわしくないと判断された者は、あらかじめ予告して、降格、職種の変更または給与の減額改定を行うことがある。


▼ 降格

さらにXさんは、平成22年4月、部下が配属されない営業担当部長へと降格処分を受けました。

▼ 給与の減額(2回目)

とどめにXさんは、平成22年6月、給料を50万円から48万円に下げられました。

その後、Xさんは解雇されました…。Xさんが訴訟を提起。

裁判所の判断

Xさんの完全勝利です。

裁判所は、

・2回とも給与減額は無効
・降格処分も無効
・解雇も無効

と判断。

▼ 給与の減額について

■ 大前提

賃金規程などで「給与を減額することもあるからね」と定めていたとしても自由には減額できないんです。減額できるのは「減額されても仕方ないよね」というような合理的な事情があるときだけです。

合理的な事情があるかは以下の事情をミックスして判断されます。

・減額によって従業員が被る不利益の程度
・従業員の勤務状況などその帰責性の有無及び程度
・人事評価が適切になされているか
・会社と従業員との折衝の状況など

会社は以下のとおり主張しました。

■ 会社の主張

・Xさんが入社するときに「優秀な営業社員10名を採用せよ」と命じたけど果たせていないんですよ

■ 裁判所の判断

・その命令がホンマに重要なら入社時の書面などがあると思うんだけど
・ないじゃん
・Xさんは合計8名の人を会社に推薦したじゃん
・なのに面接さえせず不採用にしてるよね
・ってことは、この採用命令ってそんなに大事じゃないよね

■ 会社の主張

・Xさんは新規顧客をまったく行っていなかったんですよ

■ 裁判所の判断

・個々の取引先との関係で意味ある活動をしていた(いろいろ認定)

というわけで「給与を減額する合理的な事情がない」という理由で「給与の減額は無効」となりました。

▼ 降格処分について

■ 大前提

たしかに、職位の引き下げの降格について会社は大きな裁量権を持っているんですが、やりすぎの場合(=裁量権を逸脱、濫用した場合)は無効になります。

■ 今回のケース

・営業社員10名を採用できなかったことは降格の理由にならない
・Xさんの勤務状況はそんなに悪くなかった

以上の理由から「降格も無効」と判断されました。

▼ 解雇について

当然に解雇も無効になりました。

ほんで、なんぼ?

解雇が無効となると、会社にみぞおち1発が食らわされます。

▼ 衝撃のバックペイ

バックペイとは【解雇された日から → 訴訟になって → 判決が確定する日までの給料】のことです(民法536条2項)。

詳細は割愛しますが今回のケースでは以下の支払いを会社に命じました。

・H22.8〜H24.3 毎月33万円
・H24.4〜H24.7くらい 毎月80万円

その他もろもろ

もし裁判が4年続けば、4年分の給料がもらえます。働いていないのに。

転職してたとしても基本、6割の給料をもらえます。ただし「元職場に戻る意思がある」と認定できる期間分だけです。裁判官が「もう戻るつもりないよね」と認定した時点以降はもらえません。でも、かなりデカイですよね。会社からすれば衝撃です。

なんだよこの会社…

補足ですが裁判官が「なんだよこの会社…」と不信感を抱いたフシがありますね。

■ キチンと人事評価してた?

人事評価の基準などが不明瞭だったようです。裁判官は訴訟での会社の進め方を見て「訴訟になって焦って資料を収集しとるな」と感じたようです(判決文に書いてます)

■ 社長の鶴の一声で人事を決めてない?

って怪しんでますね ↓

こういうところで、裁判官の心の天秤がグイっとXさん有利に傾きます。裁判は小さなことの積み重ねなんです。小さなことからコツコツと。西川きよしさんのおっしゃるとおりです。

さいごに

給料の減額は自由にできません。降格処分も自由にできません。合理的な事情があるときだけなんです。

もし社長の鶴の一声などで給料を下げられたり降格させられたりした方がいれば労働局に申し入れてみましょう(相談無料・解決依頼も無料)。労働局からの呼び出しを会社が無視することもあるので、そんな時は社外の労働組合か弁護士に相談しましょう。

今回は以上です。「こんな解説してほしいな〜」があれば下記URLからポストして下さい。ではまた次の記事でお会いしましょう!

取材・文/林 孝匡(弁護士)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
webメディアで皆様に知恵をお届け中。「こんなこと解説してくれや!」があれば、下記URLからポストお願いします。
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