人生最大のピンチを名声に変えたソロモンCEO就任
バフェットの名前が金融の世界だけでなく世界中に知られるようになったのは、1991年10月にソロモン・ブラザーズのトレーダーが無断で顧客の名前を使用して国債を入札していた違法事件がきっかけです。
財務省はソロモンに国債購入を禁止することを決め、ソロモンは倒産寸前に追い込まれます。
こうした絶体絶命のなかでバフェットはソロモンが潰れることによるウォール街への影響を危惧していました。そこで暫定的にソロモンCEOに就任し、財務長官に直接電話をして取引停止命令の解除を依頼します。バフェットがいることが条件で依頼に応じてもらえただけでなく、不祥事の原因や真実、法律問題に積極的に取り組み、最終的にソロモンが2億9000万ドルの罰金を支払うことで事件を解決へと導いたのです。
これはソロモンだけでなくウォール街を中心とした米国金融市場の安定性という観点からも、バフェットの手腕と名声が高まる歴史的な出来事となったのです。
バフェットの投資哲学と人生哲学
バフェットの投資哲学は大きく2つのポイントがあります。
① 投資先の企業のビジネスモデルを理解してわかりやすく説明できるか
② 企業の市場価格に惑わされてはならない
まず①ですが、バフェットは2016年にアップルに投資をするまでハイテク企業には一切投資をしませんでした。これはテクノロジー分野は専門知識が必要でありバフェット自身が専門家でないことから、この分野に投資をしていませんでした。ではなぜアップルに投資をしたのかというと、iPhoneなどのアップル製品が生活インフラとして欠かせなくなっており、これが投資を決断した大きな要因といわれています。
そして②ですが、バフェットが企業の本質的な価値について、定量分析と定性分析の観点から見極めることが大切であり、それは短期的な株価の値動きで売買の判断をしてはならないと発言しています。
一見シンプルですが、投資をすればするほど奥深いバフェットの投資哲学に納得する方も多いのではないでしょうか。
まとめ
今回は世界中の金融関係者から今でも注目を集めているウォーレン・バフェットについて解説していきました。もちろんバフェットは投資の天才であり、誰もが同じように投資をできるわけではありません。
とはいえバフェットはバークシャー・ハサウェイの株主総会で毎年「バフェットからの手紙」と呼ばれる年次報告書を発表しています。この手紙で過去に妻への遺言として「遺産の90%をS&P500に投資せよ」と書いています。
もちろん投資のスタイルは個々で異なるものですが、これこそバフェットが「誰もがマネできる」といわれる所以でもあるのです。
今なお現役で世界一の投資家と呼ばれるウォーレン・バフェットですが、投資だけでなく仕事や人生観など、多くの考え方をバフェットから学べるのではないでしょうか。
少なくとも筆者にとってバフェットは人生の教科書のような心強い存在です。
参考文献 https://www.berkshirehathaway.com/
文/鈴木林太郎
編集/inox.