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ソニー・ホンダモビリティの電気自動車「AFEELA」が示すスマホ化するクルマの未来

2023.02.14

スマートフォン化する車、AFEELA

法林氏:石川君は、CESの会場でAFEELAには乗ったんだよね?

石川氏:はい。AFEELAを作ったソニー・ホンダモビリティの社長兼最高執行責任者(COO)である川西泉さんは、aiboの生みの親で、一時はXperiaの開発を担当していたこともあって、プレイステーションもやっていた人。川西さんは、「今の車はかつてのケータイっぽくてデザイン過多。我々がやることはスマートフォン化で、シンプルなデザインでAFEELAを作った」という話をしていた。ソフトウエアのアップデートで車を進化させていくという考え方は、まさにスマートフォン的な考え方なので、こっちに寄ってきているなと。

ソニー・ホンダモビリティ株式会社 代表取締役社長 兼 COOの川西泉氏(左)と同社 代表取締役 会長 兼 CEO水野泰秀氏(右)

石野氏:まぁ、元々ソニーはそういう会社。

石川氏:そうですね。

房野氏:AFEELAは、IT系の企業と協業しているんですか?

石川氏:OSはAndroidベースですし、今回、クアルコムと提携を発表しています。AFEELAにはクアルコムのSnapdragon Digital Chassisが採用されている。なので、スマートフォンの延長線上的な感じにはなるのかなと。

 川西さんが言うには、クアルコムが車でやろうとしていることと、ソニーが車でやろうとしていることが結構近いと。電気自動車はいかにバッテリーをセーブするか、バッテリーのコントロールが重要。それは今、スマートフォンでやっていることで、今後、電気自動車でもそうなる。省電力が重要になるので、そこでSnapdragonやXperiaの知見を生かせると。

石野氏:Xperiaは発熱の問題が……(笑)

房野氏:それは怖い(笑) ところで、通信業界は電気自動車にどう関わっていくのでしょうか。

石野氏:5Gとかが搭載されていく。

法林氏:何段階かある。自動運転まで行ったら、5G SA(スタンドアローン)で、あるいは、もしかしたら6Gかもしれないけど、当面はやっぱりデータの伝送です。身近な例ではカーナビから始まり、ソニーなのでエンターテインメントでしょう。一昔前は車にCDプレーヤーを積んでいたじゃないですか。その後、ハードディスクが中に入っているナビになって、データを全部入れられるようになって、次はSSDになってと進んできて、今やストリーミングで聴くのが当たり前。そう考えれば、車でエンターテインメントは考えられる。後部座席の子供向けに、ディズニープラスの映像を見せるという話になると、それは5Gで伝送してとか、そういうことは絶対ある。

石野氏:今、ドコモがワンナンバーサービスを提供しているのは、Apple WatchとBMWなんですよ。それくらい相性が良いというか、スマートフォンのオプション、スマートフォンに紐付ける回線として、直接車に電話番号を書き込んで、通信ができる、電話ができるっていう仕組みができている。AFEELAはそんな単純なものではなく、プラットフォームにクアルコムのSnapdragon Digital Chassisを載せて、OSはAndroidベースで、自動運転を想定してエンターテインメントというか、石川さんがおっしゃっていたように、運転しなくなるからこそ生まれる時間を使わせるために、もっと通信を活用しようとしているなっていう感じがします。そこに、Xperiaでやってきた通信の知見みたいなものを活かせるかなという感じがしますね。

BMWの基調講演(CES2023)

房野氏:キャリアとの関わりはどうなるのでしょう。

石川氏:まだそこの話にはならないかなと思います。5GAA(5G Automotive Association)という、キャリアやメーカー、いろんなプラットフォーマーによる業界団体があって、キャリアが絡んでくる話はそこでされる。5GAAはMWCで動いているので、2月末のMWCまでお預けって感じ。

石野氏:今回、クアルコムはCESではプレスカンファレンスをやらず、AFEELAの発表会に社長のクリスティアーノ・アモン氏が登壇するって感じでしたね。

法林氏:車と通信の絡みはもう1つ、データがある。1番身近な例だとドライブレコーダーがあると思うんだけど、盗難とか管理はアメリカでは相当、意識されるだろうと思う。最近は日本も危ない。変な話だけど、紐付いたスマートフォンを持ってないと、その車に乗れない、みたいな。スマートフォンなのかスマートウォッチなのか、マイナンバーカードなのかはわかりませんけど、そういうことになることも十分に考えられる。

石川氏:AFEELAには、車の前と後ろにメディアバーというディスプレイがあるんですが、色々使いようがあって、もし盗まれたら「これは盗難車です。○○に連絡してください」みたいなことも表示できなくはない。

石野氏:iPhoneの「探す」とかAndroidの「デバイスを探す」みたいに。遠隔ロックで、自動運転をしている時に車を止めることもできたりして(笑)

房野氏:それは怖い(笑)

法林氏:止めるんじゃなくて、いきなりすごい加速をさせたりして(笑)

石川氏:車メーカーが作っているUIは使いにくいので、ソニーなりGoogleなりがしっかりやってほしいなって気がします。

石野氏:車体を作っているところはMagna(マグナ)?

石川氏:たぶん、まだMagnaベースなんじゃないのかな。一応、ホンダと組んでからデザインを考えたと言っていたけれど、「CES 2022」で発表した「VISION-S」とサイズが同じ。AFEELAはまだコンセプトモデルとしか言っていないので、来年、再来年くらいになると、違うデザイン、違うサイズのものになってくるんじゃないかなって気がします。

房野氏:車体はホンダが作るんですか?

石野氏:ホンダが入っていないと、それこそホントに発熱したり、走行中に急にハングアウトしちゃったりして「再起動します」とか言われるんじゃないか、みたいな心配がやっぱり出てくるんじゃないですかね。

法林氏:現在の車でもあるけどね。僕の友だちの車は交差点の真ん中で止まっちゃったそうで、「二度と外国車は買わない」と言っていた。

石川氏:自分のホンダのEVも、たまに全然反応しない時がありますからね。

石野氏:タイヤとかの物理的な部分とか、車体の構造をどうしたらいいかとか、そういうノウハウはソニーには一切ないわけじゃないですか。安全性の部分も。そういうことを考えると、ホンダと組むのは正しいと思います。Appleが車を作るってことがよくいわれていますが、個人的には初代Appleカーに乗るのはちょっと不安ですね(笑)

法林氏:電気自動車になると汎用部品が使えて、OSも汎用になるから、誰でも車メーカーになれます、みたいな流れがここ数年あったけれど、現実的に安全性などを考えると……。

石川氏:ソニーやAppleが車を作って死亡事故が起きたら、今の車の事故よりも大騒ぎになりそうなので、そこは相当、慎重にならざるを得ない。

法林氏:だからこそ既存の車メーカーの存在意義は大きい。

房野氏:AFEELAの実用化の目処はどれくらいなんですか?

石川氏:2025年には正式発表して、26年にはデリバリーと言っています。

房野氏:そんなに早いんですね。

石川氏:もう、ここ2、3年の話です。

法林氏:その頃に半導体不足とかが解決しているといいね。今、トヨタのプリウスを注文すると、納車が1年半待ちだそうなので。

ThinkPadと連携する「ThinkPhone」

石野氏:ほかにCESで気になったことといえば「ThinkPhone」ですね。

房野氏:ThinkPadブランドの30周年を記念した、Thinkブランド初のスマートフォンだそうですね。どんな印象ですか?

石川氏:いやぁ、普通のAndroidスマートフォンかなと……

石野氏:実物を見ていないので、なんとも言えないんですが、なんかちょっと……

法林氏:日本に持ってくるんでしょうね。

石川氏:日本だったら、たぶんセット売り的な感じになると思うんですよ。ThinkPadを使っている企業に対して「ThinkPhoneもどうですか?」という感じで売る。そういう商材価値はあるけれど、製品単体として魅力的かというと、うーん……

房野氏:レノボかモトローラの、どちらのブランドの製品なんですか?

法林氏:モトローラ。「ThinkPhone by Motorola」ですから。

石野氏:ThinkPadを作っている大和研究所の香りがしないというか……彼らの魂を感じない。

房野氏:ThinkPadの代名詞ともいえる〝赤ポチ〟はあるんですか?

石野氏:サイドに赤いキーがある。“そういうテイストだけ持ってきました感”なんですよ。一応、ThinkPadと連携するアプリはあるんですけど。

法林氏:Androidスマートフォンとの連携機能はWindowsにあるからね。

石野氏:そうなんですよ。

房野氏:価格はどのくらいですか?

石川氏:価格は発表していなかった気がする。

石野氏:ThinkPadといえば打ちやすいキーボードとか堅牢性が魅力だと思うんですが、ThinkPhoneはデザインをそれっぽくしただけじゃないかという感じがして……

法林氏:でも、背面はアラミド繊維で、IP68とかMIL-STDにも対応している。耐衝撃と防水防塵性能を備えているのはグローバルモデルとしては特徴的。モトローラ的にいうと、日本で出した「moto g52j」を進化させたみたいなことなんでしょうね。

moto g52j

房野氏:日本でも発売されるでしょうか。

石野氏:どうなんでしょうね。

法林氏:断言はできないけど、ブランド力はあるので、売る可能性はあるんじゃないかな、例えば直販だけとかで。

石野氏:むしろ、日本カスタマイズを入れて出したらニーズはありそうかな。

房野氏:カーボンは電波面で問題はないですか?

石野氏:カーボンは結構、電波を吸収しちゃう。ボーイング787が全面的にカーボンを使っていて、あれに乗るとケータイの電波がすごく入りづらくなるんですよね。

法林氏:炭素繊維協会によると、カーボンは軽くて強い、耐熱性が高い、電磁遮蔽特性が優れているということですね。電波の遮蔽は炭素繊維含有率によるみたい。

房野氏:アンテナは大丈夫ですかね?

石野氏:どこかを空けるでしょう。シャープのAQUOS sense7も筐体はメタルだけど、背面にアンテナ用の切り欠きを付けていて問題なく電波を受けている。いくらでも通し方はあるんですが、ワイヤレスチャージはできない気がする。

法林氏:スマートフォン全体の話として、背面ガラス仕上げがいいのかどうかは、認識がだんだん変わってきている気がする。値段が高いとか、壊れるとか、割れやすいといった不満も聞く。重いというのが一番多いですよね。それをどうするかという流れで、樹脂で、あまり傷や汚れが目立たないような塗装の仕上げにお金をかけた方がいいんじゃないのかっていう動きはありますね。中国メーカーの比較的安価なスマートフォンでは、そういうものが最近多い気がしますね。

……続く!

次回は、「arrows N」の価格設定について会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘
文/房野麻子

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