シームレスなインボイス制度対応でユーザー数を伸ばすfreee
インボイスを背景として有料課金ユーザー数を伸ばしているのが、クラウド型会計システムを提供するfreee。他社ソフトとの統合を図る新プランを投入しています。
従来の会計ソフトはインストール型だったため、新制度への対応が面倒という問題点がありました。インボイスがこれに当たります。追加料金を支払い、アップデート版をインストールする必要があります。
クラウド型のシステムは更新が迅速に行われるため、手間がかかりません。クラウド型が支持される理由はここにあります。しかし、ソフトをすでに使っている会社は、保存されているデータが膨大で移管作業に時間がかかるため、そのまま継続して使わざるを得ないケースが多く見られます。
フリーは利用者の間口を広げるため、2022年8月に新プラン「freee経理」をリリースしました。適格請求書の作成、保存ができるだけでなく、他社の会計ソフトとの連携が可能なサービスです。
※決算説明資料より
このシステムは受け取った請求書が適格請求書かどうかを自動で判断、分類するうえ、発行元、税区分、勘定項目を自動的に推測して経理作業を軽減する役割もあります。
導入済みの会計ソフトと連携しつつ、インボイス制度に対応できる「freee経理」は、インボイス対応を目的としたソフトの更新を検討する会社にとってメリットは高いでしょう。今後のアップデートはfreeeを通して行えば良いからです。
freeeは2022年7-9月の有料課金ユーザー数が前年同期間比で23.5%増え、売上高は34.5%増加しています。
インボイス対応の作業負担増大をあおる絶妙な戦略
テレビCMでインボイス対応を徹底的に訴求しているのが「楽楽清算」のラクス。俳優・滝藤賢一さんとお笑い芸人・横澤夏子さんを起用し、クラウド型の経費精算システムによる業務効率化を訴えています。
ラクスの2023年3月期上半期の広告宣伝費は30億6,100万円で、前年同期間比で1.6倍に跳ね上がっています。
※決算説明資料より
「楽楽清算」などのクラウド事業の2023年3月期上半期の売上高は103億4,900万円で、前年同期間比34.9%の増加でした。広告宣伝費が嵩んで減益となっているものの、売上高の成長スピードには目を見張るものがあります。
※決算説明資料より
インボイスは消費税を軸として、企業や個人事業主のDXを後押しするきっかけとなりました。特に中小企業は経理処理のデジタル化が進み、担当者の負担軽減が進む可能性があります。
制度が導入されるのは10月1日から。Sansanやfreee、ラクスのような企業は、駆け込みによるユーザー数の増大に期待できるかもしれません。
取材・文/不破 聡