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ポップアートの先駆者、アンディ・ウォーホルのスゴさはどこにあるのか?

2023.02.09

ウォーホル作品の何がスゴイ?

ウォーホルは絵画の二次元性、表面だけのぺらぺら薄い感じを意図的に作品に盛り込み成功した画家です。たとえば、ウォーホルの作品のほとんどは、額縁に入っていません。

絵画の額縁は、ときに窓の役割があり、絵の向こう側を意識させる効果があります。

ところがウォーホルの作品には枠がなく、絵の向こうの世界がない、表面的な世界の描写なのです。たとえば作品のモチーフにした有名人、マリリン・モンローや毛沢東などの実体ではなくプロマイド写真や雑誌や新聞に載った写真を使い、シルクスクリーンなどで作品を反復することで、どんな人物でも「大衆化」してしまうことに成功したのです。ところが、存在が軽いからといって、作品が軽くなったわけではなく、むしろ作品の強度が増しているのです。

その理由は、ウォーホルの絵画の技術力とモチーフ選びの的確さに支えられています。

仮にウォーホル以外が同じように真似たところで、似て非なるものにしかならないのです。

シンプルで簡単に見える作品も、ここでしか均衡がとれない完璧に計算された構図になっていおり、だからこそ、いまでもウォーホルは評価され続けているのです。

そしてウォーホルはこんな言葉を残しています。

「僕について知りたければ表面だけをみてればいい、裏側には何もないから」

これは作品を端的に表している言葉なのです。絵画の表面だけを見ていればいいと。

しかし、その表面、絵画の二次元性には揺るぎない圧倒的な世界が広がっているのです。

三次元も凄い!ブリロボックス

ブリロ(Brillo)とは、アメリカではおなじみの食器洗いパッドですが、ウォーホルはそのブリロのダンボール箱に着目し、木の板でそっくりな「ブリロ・ボックス」を発表したのです。

これは絵画でも用いられる繰り返しの手法を使っています。つまり、商品を入れる箱としての機能を消して、箱というオブジェクトがそこに複数存在することで、ブリロが記号化するのです。

そして鑑賞者はその作品を見たときに、ブリロではなくウォーホルを連想することに成功しています。数多あるモノの中から、ブリロのダンボールを意図的に選んだのです。

この選ぶ行為こそ、現代アートの文脈を前進させたウォーホルの凄みです。似たようなものとして、レディメイドも選ぶ行為ではあるものの、マルセル・デュシャンは鑑賞者に「作ることと見ることの同次元的な緊張関係」を強いたのに対して、ウォーホルは「ポップアートは既製品を使った新たな視点の獲得」と、デュシャンとの違いを早くから意識していたはずです。

マルセル・デュシャン・・・20世紀前半に活躍したアーティスト。「レディメイド」という、既製品の用途を消して立ち現れる美について、作品を発表しました。網目的な絵画を否定し、哲学する芸術を提示した、現代アートの父ともいわれる人物。

PCで描いた28枚の絵

1985年にウォーホルはコモドール社のPC「Amiga」を使って描いた作品が、約30年ぶりに発見されました。きっかけとなったのは、ウォーホルマニアでもあるアーティストのコーリー・アルカンジェロがYouTubeでAmigaを使っている映像を見つけたことがきっかけです。そこから、美術館に保管されていることをつきとめ、専門家チームに復元を依頼したことで、作品のデータが見つかったのです。「キャンベルスープ缶」「自画像」という知っている作品だけでなく、ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」を三つ目にしていたりと、デジタルでの創作の可能性について広がりを感じていたはずです。そのどれもがウォーホルのデザイン感覚に支えられ、なかでも自画像はドット線を生かしていたりと、かなりの関心が伺えます。

現代では画家のディビット・ホックニーがiPadを駆使しながら絵を描いています。紙とは異なるデジタルを楽しみながら作品を発表しているのです。

もしもウォーホルがあと20年長生きをしていたなら、Macを手にしていたら、iPhoneを手にしていたら、一体どんな作品が生まれたのかと思うと創造が膨らみます。

おわりに

ウォーホルの作品は色褪せるどころか、さらに勢いを増して輝きを放っています。

インターネットが普及するずっと前、当時のウォーホルは作品を産む作業場に「ファクトリー」という名前を付けて、大きな論争を生みながらも大量生産できるアートの実験場をつくりました。

今でいうインスタグラムのように、作品のヴィジュアルを不特定多数の人々に拡散させる天性の才能をウォーホルは持ち合わせていたといえるのではないでしょうか。

最後にウォーホルのこんな言葉をご紹介します。

「お金を稼ぐことは芸術、働くことも芸術、
うまくいっているビジネスは、最高のアートだよ。」

今回の記事を読んで、少しでもウォーホルとウォーホル作品に興味を持っていただけたら嬉しく思います。

以上、アイデアノミカタ「アンディ・ウォーホル」でした。

引用
The Andy Warhol Museum
京セラ美術館
・西洋絵画の巨匠9 ウォーホル (小学館)

文/スズキリンタロウ(ギャラリスト)

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