裁判所の判断
裁判所は「懲戒解雇OK」「Xさんは会社の信用毀損を毀損したから会社に30万円を払え」と判断しました。Xさんは以下のチャットをしていました。
▼ マシンガンチャット
・7か月の間で合計5万0158回のチャット
・概算で1日300回以上、 2時間くらい
Xさん自身も裁判所で「ちょっと多いっていうか、やり過ぎだと思います」と供述しているありさまでした。
このマシンガンチャットをみて裁判所は「私語の範囲を逸脱しており職務専念義務に違反す る」と判断
▼ 顧客情報の流出をそそのかす
XさんはBさんに対して「今日は徹夜してでも顧客情報データを持ち出すべき」という趣旨のチャットをしてました。
▼ 会社の信用を毀損
以下のチャットを送信。
・確実に潰れるから
・2月末に危機がきて、8月末でアウト
・Dちゃんから借りないとつぶれますね
・一般企業としてはもう死に体です。今の数字
・どう考えても資金不足になり倒産ですね。外部資金入れない限り
・すぐ減給ですから。確実にブラックです
▼ 部下Cをバカにする
以下のチャットを送信。
・Cは極度に無能です
・犬と一緒なんだよ
・早く踏み切りで無残に轢死すればいいと思う、日々です
・生きる価値のない命とはあれのことだね
・害虫レベルだな。。
・存在自体が害毒
・存在が迷惑だから死んだほうがいいんだよ
・だからこのバカは絶 対にうつ病ならない
・ゴミC
・死ね
・パワハラいじめしたいよー
・健常者ではない
・大人の発達障害です
・うちの発達障害も早く交通事故で死んでほしい
・知的に問題ある以外ありえない
さらにはXさんは、Cさんが書いた反省文を他の社員に送信してCを笑いものにしています。これはCさんが裁判所に来て証言しています。裁判所は「悪質な誹謗中傷というほかない」と断罪。
▼ セクハラチャット(女性社員を話題に)
女性社員2名について以下のチャットを送信。
・E 知らないところで。ユルくなって、裸でグチャグチャになってる
・○○△△臭
裁判所は「性的な誹謗中傷というほかない」と断罪。
これらのチャットを認定した上で裁判所は「こりゃ懲戒解雇OKだね」と判断しました。
▼基礎知識
かりにあなたが何かチョンボをして、それが就業規則の懲戒事由にあたるとしても、懲戒解雇ってカナリ難しいんです。以下の条文があるからです。
労働契約法 15条
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
でも今回はXさんが大暴れしすぎたので、裁判所は懲戒解雇OKと判断しました。
▼Xさんはシラを切った
裁判所はここにも着目してますね。Xさんは会社からチャットの内容について事情を聞かれたとき、チャットのやりとりをすべて否定してたんです。
おぉ~。
これはもう、ラブホに入っていく写真を妻に突きつけられたのに「せ、世界には同じ顔の人間が3人いる」と弁解するレベルですね。瞬で土下座しましょう。瞬座です。
今回、裁判所は「真摯に反省しておらず、会社がXさんの態度を改善させていくことが難しいと判断したのもやむを得ない」と言ってます。
▼ 残業代はもらえる
Xさんは懲戒解雇されちゃいましたが、残業代約235万円はゲットしています。懲戒解雇されたとしても、もらえるものはキチンともらえます。
さいごに
今回のケースは【チャットしすぎ +α のヒドイこと】があったので懲戒解雇がOKとなりました。チャットのしすぎだけだと懲戒解雇にはならないと思いますが、何らかの懲戒処分を食らう可能性はあります。
チャットの内容には注意しましょう。調査する必要性と合理性があれば、会社はあなたのチャットを調査できるので、大暴れするのはやめておきましょう!w
今回は以上です。「こんな解説してほしいな~」があれば下記URLからポストして下さい。また次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
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