食材の値上げから進化を続ける「アルモンデ」料理
「アルモンデ」とは聞き慣れない言葉だが、ある料理を作るために新たに食材を買って料理をするのではなく、その日『あるもので』工夫して作る料理のこと。2013年にスナップディッシュのユーザーが「あるもので」を「アルモンデ」と称したことから生まれ、一部のユーザーの間で使われ始めたワードだという。つまり値上げへの対応を節約や我慢と捉えるのではなく、賢く美味しくアレンジする料理をあらわすのが「アルモンデ」なのだ。2022年は食品値上げラッシュの影響で、アルモンデの投稿数が急増しているそうだ。
スナップディッシュが行った調査。必要な食材を買い揃えてから料理をする人はわずか14.9%で、約7割の人ができるだけあるもので工夫して料理するように心がけている。
「アルモンデ」料理の投稿例。左は「うどんスープでほっこり煮物」。冷蔵庫に少しずつ残った半端野菜や冷凍庫の生麩を使用している。右は「厚揚げとトマトとゆで卵のピザ」。ピザの具も厚揚げなど「アルモンデ」工夫している。
韓国のアルモンデ料理「ジョン」も投稿数が激増。食材に小麦粉と溶き卵をつけて焼くピカタのような料理で、余り野菜や中途半端に残ってしまったお肉、お魚など、食材を選ばず何でも作ることができることから、「余り食材がごちそうになる!」と評判になり、節約志向と韓国料理ブームの波に乗って投稿が急増した。
2023年の家庭料は、あり合わせから意識的な置き換えへ進化
2022年のトレンドを振り返ったところで、いよいよ2023年の予測だ。編集部が2023年にブレイクすると予測している家庭料理はズバリ、「オルタナ食材」。
コロナ禍で加速した健康志向と、食品値上がりによる節約から22年トレンドとなった「アルモンデ」。2023年はさらに進化し、健康的な食材や備蓄性の高い食材、サステナブルな食材など、よりプラスの価値をもつ食品に積極的に置き換えていく「オルタナティブ(代替・置き換え)」な食品「オルタナ食材」がトレンドになると編集部では予測している。
「例えば米はオートミールに、小麦粉は米粉や玄米粉に、砂糖はラカントやステビア、甘酒に、お肉は大豆ミート、高野豆腐、厚揚げ、車麩、乳はオーツミルクやアーモンドミルクにとオルタナ食材は増え続けており、2023年もまだまだ新商品や新食材の登場が期待されます。米粉の流行は続くでしょうが、さらに栄養が豊富な玄米粉や玄米麺へと広がっていくのでは」(佐々木編集長)。
左は「The焼き飯( ˙▿˙ )オートミールだけど」。右は「グルテンフリー玄米麺で汁なし韓国冷麺」。
オルタナ食材のニューフェイス!「豆腐干(とうふかん)」もブレイク直前!?
「豆腐干」とは豆腐を脱水し、圧縮して麺状に切ったもの。低糖質高タンパクのヘルシーさと、麺の代わりになって美味しくアレンジが効く使い勝手の良さで、家庭料理でも流行の兆しが見られます。タンパク質なのでお肉の代わりにもなり、糖質オフを実現する新たなオルタナ食材となりそうです」(佐々木編集長)。
豆腐干を使った料理の投稿例。左は麺の代わりに使用した「豆腐干の豆乳担々麺」。右は肉の代わりに使用した「干豆腐のチンジャオロース風味」。
SNS映え部門では、煮えたぎるチーズが悪魔的で映える「溶岩パスタ」
家族の健康を預かる家庭料理の性格からか、外食のトレンドよりもヘルシーな料理が目立つが、それと逆行する料理の流行の兆しも見られる。溶岩のように煮えたぎっているたっぷりのチーズを突き破って、下にあるミートソースやホワイトソースを絡めながらパスタを取り出す「溶岩パスタ」だ。もともとはSNS映えを狙って外食店が始めた戦略的な料理だが、2023年は家庭料理に流行が波及すると編集部では予測している。
投稿例「溶岩パスタ」
スイーツ部門では、SDGs時代の断面映えスイーツ「ボトルスイーツ」が来る!
コロナ禍のおこもり需要で、スイーツを手作りする家庭が急増。小麦や乳製品の高騰で市販のスイーツが軒並み値上がりしている2023年は、さらにスイーツの手作り化が進みそうだ。そんな中、すでにSNSで話題になっているのが「ボトルスイーツ」。
「瓶や缶に入ったスイーツやお土産品がすでに増えてきており、23年は差し入れやお持たせに瓶を使った『ボトルスイーツ』を手作りする人が増えると見ています。透明な瓶できれいな層を見せられることはもちろん、プラスチックを減らしリユースできることも支持される理由のひとつではないでしょうか」(佐々木編集長)
左は市販のお菓子の空き瓶を利用した「果朋みたらしの空き瓶に!」、右は「ボトルアイスケーキ」
SNS時代、家庭料理の意識変化や行動変化は「トレンド」となって顕在化
22年に続き、23年も食品値上げは続くと報じられており、家庭料理にも厳しいお財布事情が続きそうだ。だが佐々木編集長は、「そんなときこそ、今までにない料理アイデアや新たな楽しみ方が生まれやすいとも言えるのではないでしょうか」と期待を語る。
「多くの方がSNSを日常的に使うようになって、新しい楽しみ方や便利なアイデアはすぐにシェアされ、誰もが手軽に取り入れることができるようになりました。『節約』や『フードロス削減』のように、今みんなの意識が高まっているトピックは、多くの方が楽しみやすい参加型のトレンドとなって現れてきます。ショート動画の『踊ってみた』『歌ってみた』と同じように、『作ってみた』って楽しいですよね。変化の激しい今だからこそ、料理SNS『スナップディッシュ』でも料理に関心のある皆さん同士がいち早く食卓の変化やトレンドをキャッチしてシェアできる場を提供することで、料理を通じた嬉しい、楽しい体験を増やしていきたいと思います」(佐々木編集長)
取材・文/桑原恵美子
取材協力/ヴァズ株式会社