アマゾンの台頭でスーパーマーケットにどんな変化が起きたのか
アマゾンの台頭によって多くの小売業が減少していきましたがウォルマートの業績は伸びています。
これは他のスーパーマーケットを利用していた顧客がウォルマートに流入したことが売上の成長につながっているといわれています。しかし理由はそれだけではありません。
例えばコロナ禍によるリモートワークの普及により、企業のDX化が進みましたが、
アマゾンなどのデジタルネイティブな企業のDX化は当たり前ですが、デジタルネイティブではないウォルマートがDX化に成功していることは日本企業の多くが学べる事例ではないでしょうか。
ウォルマート+
2020年9月には有料会員制プログラムである「ウォルマート+(プラス)」を開始し、
会員は月額12.95ドルもしくは年間98ドルで商品の無料配送や燃料割引、スポティファイの6ヶ月無料利用をすることが出来ます。それに加えて2022年8月にはパラマウントとストリーミングサービスで合意し、会員に広告付き月額4.99ドル、広告抜き月額9.99ドルでパラマウントのエッセンシャルプランのサービスを提供しています。
ちなみに米国のアマゾンプライムは月額14.99ドル、年額139ドルです。
このようにウォルマートはこの数年で最もDX化が進んだ企業の一つといえるでしょう。
何よりも小売業としての店舗販売機能を活かして、店舗を販売拠点としてだけでなく配送やECのピックアップ機能としても活用した鮮やかな経営に驚かされた人も多いのではないでしょうか。
いずれにせよアマゾンの台頭によって流通業界におけるテクノロジーの導入が加速されたことは間違いないでしょう。
景気に左右されない銘柄はどちらか
それではアマゾンとウォルマートはどちらが景気に左右されないのか、2020年以降の株価と売上高の推移から比較していきます。
アマゾン
アマゾンの株価は2020年3月20日(比較基準日)に92.30ドルから上昇を続け、2021年7月9日に185.97ドルまで上昇しました。しかしアマゾンなどのハイテク株はコロナによる金融緩和とリモートワークによって自宅で過ごす人が爆発的に増加したことによる恩恵を受けて成長が加速していました。その後外出規制が緩やかになり、人々の消費行動の変化と米国経済が苦しむ要因となっているインフレ問題が顕在化し、売上高と営業利益が鈍化しています。
つまり利益の先食いのような状態にあったのです。
これにより株価もコロナ前と同じ位置まで下がっており、現在は90~100ドル前後を推移しています。
ウォルマート
ウォルマートの株価は2020年3月20日(比較基準日)に113.97ドルから現在は140ドル台を推移しています。売上高も緩やかな上昇を続けています。
やはり生活必需品を扱うウォルマートは需要が安定しており、不景気に強い銘柄であることがハッキリと見えてきます。
このように景気にはサイクルがあるため景気上昇局面ではアマゾンが強く、景気に左右されにくいのはウォルマートです。どちらにも異なる特徴があるといえるでしょう。
まとめ リアル(店舗)とネット(EC)の未来はどこに向かうのか
リアルとネットの未来を考える上でテクノロジーの進化は必要不可欠です。
そして新たなテクノロジーによって店舗よりもECの在り方そのものが圧倒的なスピードで変化していく可能性の方が高いのではないでしょうか。
例えば今後10年、20年先にスマホなどのデバイス自体を使わなくなる未来がやってくるかもしれません。生活必需品は何もしなくても自動的に自宅に届くような時代の到来、もしくはメタバース上であっても現実社会と遜色ないフィジカルな体験が可能となれば、私たちのライフスタイルそのものが変化しているはずです。
つまりリアルとネットという境界がなくなった社会ではアマゾンとウォルマートだけがライバルとはいえないのかもしれません。
かつてジェフ・ベゾスは「いつかアマゾンは潰れる」と従業員に向けて発言していますが、
歴史的にどんな大企業であっても必ず寿命があることから、アマゾンとウォルマートにも新たなライバルが登場する日がやってくると考えるべきではないでしょうか。
文/鈴木林太郎
編集/inox.