米国企業VSシリーズ~アマゾンvsウォルマート〜
テクノロジー企業であるアマゾン(AMZN)と小売業であるウォルマート(WMT)。ECの台頭によってアマゾンが急成長する一方、世界最大の小売企業であるウォルマートは数年前は時代遅れになりつつある企業だと考えられてきました。
そもそもアマゾンやウォルマートの本質はどこにあるのでしょうか。
特にアマゾンの場合、ECやストリーミングサービス、クラウドサービスのAWSなど主力事業が多岐に渡りますが、中心軸にあるのは「データ」です。
これはGAFAMにも共通していえることですが、データは21世紀の「石油」であり、データを精製することで大きなビジネスが展開されています。
例えばGoogleは検索サービス、アマゾンはEC事業、メタはSNS、アップルはデバイス、マイクロソフトはアプリケーションと入り口は異なるものの、実は全てデータと繋がっています。
つまりアマゾンvsウォルマートの本質はデータ競争ともいえるのではないでしょうか。
そこで今回は「米国企業VSシリーズ」として、両社の歴史やビジネスモデルを比較しながら、今後の行方について考察していきます。
アマゾンとウォルマートの変革の歴史とビジネスモデル
ウォルマート
ウォルマートは流通業界において世界で最も売上高の大きい企業です。
創業当初は雑貨屋からスタートし、その後成長していく過程で販売商品に食品を加えてスーパーセンターへと進化していきました。
その他にも会員制スーパーマーケットである「サムズアップ」や雑貨や食品品、調剤やHBC(ヘルス&ビューティケア)なども取り扱う「ネイバーフッドマーケット」という3つのフォーマットが主体事業です。
創業者のサム・ウォルトンは「良いものを安く売る」ことを信条に、哲学であるEvery Day Low Price(毎日低価格)とEvery Day Low Cost(毎日低原価)を徹底的にやり切る強さもウォルマートという企業の特徴です。
そしてウォルマートは業界内ではいち早くテクノロジー技術を導入する変革企業体質を持っています。実際、1980年代には通信大手AT&Tを上回るデータベースを所有する企業でもありました。
このスピードに追随できる企業が業界には存在しておらず、独走状態であったウォルマートに黒船が登場します。それがアマゾンです。
アマゾン
ウォルマートが快進撃をしている最中に表舞台に登場したのがアマゾンです。
2011年に米小売売上高ではじめてTOP10入りし、わずか7年後の2018年にはウォルマートに次ぐ業界2位の売上高まで成長しています。
創業者のジェフ・ベゾスはアマゾンの小売業についてこんな見解を示したことがあります、
「小売業は2種類に分けられる。それは売価を上げることを目指す企業と売価を下げることを目指す企業です。Amazonが目指すのは後者です。」
こうした哲学が反映されているのがアマゾンのマーケットプレイスという仕組みです。
販売方法としてはアマゾンが直接仕入れた商品を販売する直販(ファーストパーティ)だけでなく、マーケットプレイス出品者の商品(サードパーティ)も並行して販売するという当時では画期的なものでした。この新しいアイデアがその後のEC売上の成長加速へと導く結果になったのです。
アマゾンゴー
2018年1月22日にシアトルにオープンした無人決済店舗「アマゾンゴー」は未来の小売業の在り方に一石を投じ続けています。
何が最も革新的であるかというと商品スキャンとレジが存在しないことにあります。
特に業界内ではスキャンがないことに衝撃が走ったといいます。
なぜなら小売業界においてスマホを使ったセルフスキャンによる決済は既に導入されていましたが、レジが不要とはいえ最終的には店員が確認しています。
しかしアマゾンゴーの場合はスキャンも店員による確認も必要としません。
当然、この技術はマネタイズ可能であるため、他社も技術を導入するためにアマゾンと契約する流れが加速するでしょう。こうしたアマゾンの独自技術の販売はクラウドサービスAWSも同じことがいえます。