採用活動の一環として、インターンシップを受け入れる会社が増えています。就職活動をする学生側にとっても、インターンシップに参加することは、志望する会社の内情を知ることができる良い機会です。
インターン生に対して給与を支払うかどうかは、会社によって方針が分かれていますが、無給インターンは労働基準法違反となる場合もあります。
今回は、インターン生を無給で採用することについて、労働基準法上の取り扱いや問題点などをまとめました。
1. インターン生の活動内容は?
インターン生の活動内容は、会社によって多種多様です。
数日から2週間程度の短期インターンは、今後の採用候補者となる就活生向けに行われる傾向にあります。
短期インターンの場合、会社を知ってもらうことや、インターン生の人柄・能力を見極めることを主眼とするプログラムが組まれるケースが多いです。
<短期インターンによく見られるプログラム>
・業務の見学
・課題の検討
・インターン生同士のディスカッション
・従業員による講義や質問セッション
など
これに対して、数か月間に及ぶ長期インターンは、すでに入社が内定している学生や、入社志望度が非常に高いと思われる学生向けに行われる傾向にあります。
長期インターン生には、従業員とほとんど同じ立場、あるいは従業員を補助する立場として、会社の業務を実質的に担当させるのが一般的です。
<長期インターンに求められがちな役割>
・従業員とのチームによる案件検討
・従業員の指示によるリサーチ
・就活生への対応
・雑務の処理
など
2. インターン生は無給で採用しても良いのか?
インターン生に対しては、給与を支払う会社も、支払わない会社も両方存在します。
会社が無給でインターンを募集する場合、労働基準法上の取り扱いを検討しなければなりません。もしインターン生が「労働者」に当たる場合、無給インターンは労働基準法違反となります。
2-1. 「労働者」なら無給は違法、「労働者」でないならOK
インターン生が「労働者」に当たる場合、会社には少なくとも最低賃金を支払うことが義務付けられます(労働基準法28条)。この場合、無給インターンは違法です。
これに対して、インターン生が「労働者」に当たらない場合、労働基準法は適用されません。
この場合は「契約自由の原則」に基づき、会社とインターン生の間で、給与の有無や金額を自由に合意することができます。したがって、無給インターンも適法となります。
2-2. 「労働者」に当たるか否かの判断基準
労働基準法上の「労働者」の定義は、以下のとおりです。「使用される」とは、使用者(会社)の指揮命令を受けて労働することを意味します。
(定義)
第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
(労働基準法9条)
会社の指揮命令を受けているか否かは、以下の要素を考慮した上で、就労の実態に即して客観的に判断されます。
(1)仕事の依頼、業務の指示等に対する諾否の事由の有無
→会社から指示された仕事を断れない場合は、労働者と認められやすくなります。
(2)業務の内容および遂行方法に対する指揮命令の有無
→仕事の進め方や時間配分について、会社の指示に従う必要がある場合は、労働者と認められやすくなります。
(3)勤務場所・時間についての指定・管理の有無
→会社のオフィスなど決められた場所で働く必要がある場合や、定時を守る必要がある場合は、労働者と認められやすくなります。
(4)労務提供の代替可能性の有無
→必ず本人が仕事をしなければならない(再委託が認められていない)場合は、労働者と認められやすくなります。
(5)報酬の労働対償性
→勤務時間や勤務日数に比例して報酬が支払われる場合は、労働者と認められやすくなります。
(6)事業者性の有無
→本人が所有する機械・器具が著しく高価な場合や、他の従業員と比べて著しく高い報酬を支払われている場合などには、労働者と認められにくくなります。
(7)専属性の程度
→他社の業務(または自分の事業)に従事することが禁止・制約され、または事実上困難な場合は、労働者と認められやすくなります。
(8)公租公課の負担
→会社が給与としての源泉徴収を行っている場合や、社会保険料を負担している場合は、労働者と認められやすくなります。
2-3. インターン生は「労働者」に当たるのか?
インターン生が労働者に当たるか否かの判断に当たっては、特に以下の各点が重点的に考慮されると思われます。
(1)仕事の依頼、業務の指示等に対する諾否の事由の有無
(2)業務の内容および遂行方法に対する指揮命令の有無
→参加するプログラムをインターン生が自由に選択できるなど、インターン生の裁量が広く認められている場合は、労働者と認められにくいです。
これに対して、会社の指示に従い、他の従業員と同等の業務をこなすことが求められている場合には、労働者と認められやすくなります。
(7)専属性の程度
→1日の拘束時間が短い場合や、短期インターンの場合は、専属性に乏しいため労働者と認められにくいです。
これに対して、1日の活動時間の多く(6~8時間以上)をインターンへの参加に費やす必要があり、かつインターン期間が長期(数週間以上)に及ぶ場合には、労働者と認められやすくなります。
総じて、短期インターンの場合は労働者性が認められにくく(無給でもOK)、長期インターンの場合は労働者性が認められやすい(無給は違法)という傾向にあります。
ただし、実際に労働者性が認められるか否かは、インターンの実態を踏まえて判断する必要がある点にご注意ください。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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