麻の葉模様が美しい!
このフライパンで焼く肉は、なぜこんなにも美味いのだろうか?
火の通りも非常にスムーズで、筆者が当初目論んだ焼き具合になっている。
どうやら『Asano』で食材を焼くと焼きムラを抑えられるそうだ。このあたりの使い勝手は、正直に褒めるべきだろう。
それにしても、『Asano』表面の麻の葉模様にはついつい釘付けになってしまう。
南部鉄器とは鋳造製品即ち型に溶けた鉄を流し込んで作ったものである。
これは文字で書くほど簡単な仕事ではなく、まず鋳造は鉄の中に気泡ができやすい。
「ムラなく均質に鉄を型に注ぐ」というのは、修行が必要な特殊技術なのだ。
そうでない鉄器、単刀直入に言えば南部鉄器の偽物には「細やかさ」というものがまったくない。
南部鉄器は日本国内のみならず、海外でも大きな需要がある。そのため、通販サイトでは南部鉄器の偽物が堂々と売られていたりする。
そのような製品は表面の細工も大味で、流れ作業としての鋳造しか経ていないということが分かる。
『Asano』のような麻の葉模様などは、機械的なライン生産では再現不可能ではないか。
100年後も『Asano』は現役?
鉄分を常に補給しなければならないアスリートはともかく、こういう調理器具は普段遣いのためでなく「特別な日の料理のために」という使い方が一番似合っているのではないか。
いつもの料理はいつものテフロン加工フライパンを使い、家族の誕生パーティーに出す料理を作る時は『Asano』を使う。
こうした使い分けをすることで、年間の日常生活にちょっとしたメリハリをつけることもできるはずだ。
一般販売予定価格は1万8,700円。Makuakeでは1万7,952円で予約できるとのこと(1月23日時点)。
「フライパン」という括りで考えたら、1万8,000円はやはり安くない。ならば、これよりも安いテフロン加工フライパンを……ということになるかもしれない。
が、テフロン加工フライパンは表面のテフロンが剥がれてしまえばそれまで。ところが『Asano』は、メンテナンスを施せばまさに「いつまでも使えるフライパン」に成長してくれる。
そもそも南部鉄器とは、世代間で受け継がれるものである。
「この鉄瓶は曽祖父が若い頃に買ったもの」ということも、南部鉄器では珍しくない。
もしも『Asano』が100年後の日本のキッチンに鎮座していたら、その時は誰かが「100年前のフライパンで肉を焼いてみた」という記事を書いてくれるのだろうか。
【参考】
平安時代から伝わる伝統的な「麻の葉文様」が映える!南部鉄器の和柄フライパン-Makuake
取材・文/澤田真一