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あんぱん、カレーパン、イチゴサンド、訪日外国人を魅了するコンビニの菓子パンと調理パン

2023.02.03

オーストラリアで人気の「日式包店」?

そんなオーストラリアのパン業界で人気を集めているのが「Japanese Bakery 日式包店」という言葉をコーポレートスローガン的につけていた某パン屋チェーン。

最大手と言われる「ベイカーズデライト(Baker’s Delight)」と比べると総店舗数はまだ10分の1ほどの約70店だが、着実にファンを増やしている。

さて「Japanese Bakeryは日本風パン屋さんのことだとわかるが、日式包店ってなんだ?」と疑問に思われた読者も多いだろう。

じつは「日本風パン屋さん」という意味の中国語だ。このことからわかるように同チェーンは香港出身の中国人が創業したもので、アンパンやカレーパンやチョココロネなど日本風のものもあるが「肉まん(豚まん)の具を入れたパン」や「豚バラ肉をでんぶ風にしたものを上に乗せたパン」など中華風のパンも数多く並ぶ。

「日式包店」のアンパン。日本の喪のよりも少し大ぶりだが味は変わらない

キャシーさん(20代女性)も高校生のころこの「日式包店」の味に衝撃を受けた一人だ。「クラスメートの中に、日本で生まれたけど幼稚園からオーストラリアに住んでいる日本人の子がいて、彼女に『昨日あの店で日本のパンを食べたんだけど無茶苦茶おいしいじゃん!』って興奮気味に伝えたんです。そしたら彼女は『うん。でも日本にあるパン屋さんのほうが上だと私は思うよ』って教えてくれました。あれより上ってどれだけおいしいんだって」

その後しばらくはその「日式包店」のパンを楽しみながら「いつか本場日本のパンを」と夢を見る日が続いた。チャンスが来たのは社会人になって最初の長期休暇で日本を訪れたときのこと。

「ああ、彼女の言っていたことはウソじゃなかったんだって実感しました」

そんなキャシーさんのお気に入りは「ランチなどでガッツリ食べるときにはカツサンドやエピカツサンド。アイシングベタベタのオーストラリアのパンとは違うメロンパンのほんのりとした甘さも好きですが、その中にホイップクリーム入りのは最強だと思います。表面がカリカリと中のパン生地のふんわりとクリームのしっとりの組み合わせ。思い出しただけで、今すぐに日本に行きたくなりますね」

イチゴサンドに魅了された中年男性

日本の菓子パン&調理パンに魅了されているのはオーストラリア人だけではない。遠く離れた英国・スコットランドに住むスコット・フレーザー・ケリーさん(67歳)もその一人だ。奥さんが日本人のスコットさんだが日本の菓子パンとの出会いは偶然だったという。

イチゴサンドに魅了されたというマーケティングコンサルタントのスコットさん

「新潟に行ったとき現地で案内をしてくれた日本人と英国人のカップルと公園でピクニックランチをしようということになったんです。その買い出しのためにコンビニに入ったときに、そのカップルがそういえばこういうおもしろいものがあるよとたまたま紹介してくれたのがホイップクリームとイチゴのサンドウィッチでした」

サンドウィッチの起源は英国貴族のサンドウィッチ伯爵。つまり英国はサンドウィッチの起源であり本場。だがホイップクリームとイチゴの入ったものなど見たこともない。探求心旺盛なスコットさんは興味津々で試してみた。一瞬ですっかりファンになった。

「同じようにホイップクリームとイチゴを組み合わせたスイーツにストロベリーショートケーキがありますよね。でも食パンで挟んだイチゴサンドはそれらよりも軽やかな食感で、食パンそのものには甘みがないぶん中のイチゴとホイップクリームの程よい甘さが引き立っています。そしてわざわざケーキを焼かなくても、身近にある食パンで豪華なスイーツがつくれるという発想!なにより2枚で400円前後というお得感が素晴らしいです!」

以来、日本に行けば必ずコンビニでこれを探して買うという。

実際のピクニックの様子。画像中央下のイチゴサンドはまだ手をつけられていないが、このあとスコットさんは衝撃の出会いを体験する

日本のパンが英国人を驚かせたもう一つの例を紹介してくれたのはスコットさんの奥さんで英国在住ライターのケリー狩野智映さんだ。

「英国にはThe Great British Bake Offというアマチュア料理家たちが、パンやパイ、ケーキなどの腕を競う料理コンテスト番組があります(日本でもNHKがブリティッシュ・ベイクオフという名称で放送)。その審査員でパンの大家であるポール・ハリウッドという人がいます」

「彼が日本を訪問した際に撮影した別のテレビ番組があるのですが、日本を実際に訪問する前は、日本は米が主食の国だからパンはたいしたことがないだろうと思い込んでいたのにじつは日本のパン文化は非常に洗練されていることを目にして感動したとコメントしていました」

「焼きたてのおいしそうなパンを豊富な品揃えで売っているベーカリーが街のあちこちにあって、アンパンやメロンパン、カレーパンなど海外では見られない日本独特のものもあり、とても魅力的だと」

今回紹介した人々意外にも日本の菓子パン・調理パンに魅了されるインバウンド客も多いはず。ただ前出の20代のオーストラリア人女性キャシーさんは苦言も呈す。

「パッケージに入っているコンビニのパンですら英語の商品名がないものもありますし、パン屋さんも日本語表示だけのところがほとんどで、中身がわからずチャレンジできない人も多いと思います。せっかくおいしいものをつくっているのに残念です」

英語での最低限の説明を加えるなど、企業努力も必要だ。

文 柳沢有紀夫
世界約115ヵ国350名の会員を擁する現地在住日本人ライター集団「海外書き人クラブ」の創設者兼お世話係。『値段から世界が見える』(朝日新書)などのお堅い本から、『日本語でどづぞ』(中経の文庫)などのお笑いまで著書多数。オーストラリア在住

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