就職・採用活動におけるメタバース空間の活用法
メタバース事業を提供するX 就職支援事業部 執行役員 稲葉祐一氏は、就職・採用活動におけるメタバース空間の活用方法について語った。
「メタバースは様々な領域で活用されていますが今回はHR領域での活用。リアルでは気合を入れて臨むことが多い企業説明会を、メタバースならではの気軽な参加で接点が持てるプロダクトになっています。2025年卒といった少し先に就活を控えている学生も参加でき、企業側も早くから学生と接点が持つことができます。
学生は海外を含めた遠隔地からでも、自分の都合の良い時間に顔を出さずに参加でき、企業側にとっても無料からの出展ができるので、コストリターンの点で最適化を図りながら早い時期に母集団形成ができるメリットがあります」(稲葉氏)
コロナ禍でオンライン面接が台頭してきた中で、学生の不安上位に挙がったのが、他の学生の就活の状況がわからないということ。今回は学生同士が情報交換できる広場やオープンチャットを設けて、アバターを介して気軽なコミュニケーションができる空間を設定。ここには企業が入れないので、学生同士が忌憚なく語り合えて、就職活動の進捗を共有できる場になっている。
会場では様々な場所でコインをゲットでき、コインを使って「ガチャ」を引いたり、担当者と会話したりと、ゲーム感覚を取り入れて気軽に企業の情報収集の場として活用できるのも特徴。企業側にとっては、早期に興味を示してくれた学生にアプローチでき、資料をダウンロードしてくれた学生にオフィス案内やインターン募集などもできる仕様になっている。
「川上から川下まで、採用フローのすべてをメタバースで実現するのは可能なので、いずれはこうした会社が出てくるのではないかと予想しています。橋本さんが指摘された偶然の出会いは就活のキーワードでもあり、メタバースのメリットはオンラインの良さを残しつつもオフラインと同じ温度感が得られることなので、極論すると、現実でできることはメタバースでも温度感が変わらずできるのではないかと思っています。
内定が出てからの後工程にもメタバースを活用できます。内定が出てから入社までは学生は非常に心理変容が多く、内定~入社までの時系列で学生・人事の間で多少なりとも気持ちの乖離が存在しますが、そこにフィットさせたメタバース空間を実装することで、最高のコンディションで入社を迎えることができます。自社のオフィスをメタバースに変換して、職場の中をアバターで歩きながら案内することも可能です。今後は内定後や、採用時の個社の面接でのメタバースプロダクトも検討していきたいと考えています」(稲葉氏)
【AJの読み】オンラインでありながら会場の温度感や偶然の出会いが得られるメタバースは就活の主流になるか
デモ版で試してみたが、就活スーツに身を包んで参加するリアルな合同説明会と違い、気軽に入れるメタバースEXPOは学生にとっても心理的負担が非常に少ない。スマホを横にして操作する様はゲームをプレイしているような感覚だ。
アバターで会場を歩いている時は設定したニックネームが表示され、参加するだけでは情報は企業側には流れず、企業のブースで資料ダウンロードを承諾した場合にのみ、その企業だけに情報が行く仕組みなので気軽に参加できる。
オフラインの合同説明会に積極的に参加していた企業がメタバースにも参加を表明しているとのことで、今回は100社以上の出展が決まっている。半数以上が首都圏以外の企業で、リアルな説明会だと地域ごとに実施されるが、エリアを問わず同じ空間に出展しているという点では、オフラインの説明会とは異なる特色といえる。
橋本氏や稲葉氏が指摘していたように、オンライン面接とは異なり、偶然の出会いやオフラインの温度感を得られながら、場所や時間を気にせず参加できるのがメタバースの大きな利点。昨年からメタバース就活イベントが国内でも開催されるようになり、今後ますますメタバースを使った就活・採用活動は活発になっていくと予想される。
文/阿部純子