■連載/阿部純子のトレンド探検隊
1月27日、28日に開催される「メタバース採用EXPO2024」は、約100社の企業が出展するメタバース空間を活用した新卒向けの初の大型合同説明会。メタバース空間のみでの開催で、大学2年生から参加は可能。参加者はアプリ「就活ひろば」をダウンロードしてスマートフォンから参加(ゴーグル不要、PCからの接続は不可)し、遠隔地から自身の都合の良い時間に自由に出入りでき、当日の飛び入り参加もOK。参加学生は5000名を見込んでいる。
「メタバース採用EXPO2024」は、新卒採用、就職支援事業を提供する「ネオキャリア」と、XR領域に特化したスタートアップ企業「X」による取り組み。EXPO開催に先立ち、両社の担当者から、就職・採用活動市場の動向や、HR(Human Resources=人材)領域でのメタバースの活用方法などが発表された。
コロナ禍で進んだオンライン就職・採用活動の利点と課題
大学生向けの就活セミナーや企業の新人研修などの講師のほか、YouTubeやTwitterで学生向けに就活情報を発信し、就活や採用に詳しい、ネオキャリア 就職エージェント事業部 副事業部長 橋本健一氏から、最新の新卒採用市場について紹介された。
新型コロナの感染拡大を受け2020年以降、従来行われていた対面型の就職イベントが一切開催されず、就職・採用活動はオンライン化が進んだが、この1年ほどは社数や人数に制限を設けてオフラインに戻す企業が増えている。
オン/オフライン双方にメリット、デメリットがあるが、2020年、2021年はまだオンラインに企業側も完全に対応できていなかった背景もあり、入社前に一度も対面でコミュニケーションを取れず、入社後に想定と違った状態が企業や入社する側の双方で発生し、1年足らずで離職というケースもあった。
「リアルな合同説明会では『偶然の出会い』があり、私はそれを“出会い頭”と呼んでいます(笑)。全く興味がなかった会社でも、たまたま隣にあった企業のブースから聞こえて来た内容が興味深かったとか、担当者の姿勢に共感して心が揺さぶられた、といった予期せぬ出会いですが、オンラインではそういった出会いがまったくなくなってしまいました。
また、学生さんが会場や帰りの電車などで就活仲間ができたり、企業側も休憩室で他の企業と話す機会もあることから、学生、企業共に全く違うジャンルの会社の話を聞けたり、情報交換ができることもオフラインのメリットです」(橋本氏)
一方で、地方の学生にとっては都心への交通費や宿泊費がかさむといった問題もオンラインによって解消され、地方の非常に優秀な学生が採用できた企業もある。
企業側も、合同説明会の会場設置の備品の準備や、コストの発生が抑えられ、1日中立ちっぱなしで対応する人事担当者の負担もオンラインでは解消される。
「オン/オフラインのメリットを保ちながら、デメリットを解消する方法として期待できるのがメタバースで、就職・採用活動と親和性が高いと考えています。
メタバースの特徴として、ウィンドショッピングのような『ウィンド見学』ができることが挙げられます。盛り上がっているブースの雰囲気は合同説明会に足を運ばないとわからないですが、同じ感覚がオンラインでできるのがメタバースの利点です。自分に向いている企業がわからないという学生には、もともと想定していた業界、会社とは違うところに興味を持つきっかけがウィンド見学なら可能になります。
また、メタバースはアバターを使うので、質疑応答の際にも福利厚生や、残業のことなど、顔出しでは聞きづらい質問も、他の参加者の目を気にすることなくできます。企業側も、メタバース空間ではブースの装飾もでき、学生に渡すツールもオンライン上で行えるため費用や工数をカットできます。
ただし、メタバースだけに頼ってしまうとオフラインになったときにコミュニケーションに支障が出る可能性もあるため、企業、学生の双方に合ったツールとタイミングを使い分けることが重要だと考えています」(橋本氏)