小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

人生をダメにする!心のネガティブなつぶやき「チャッター」を減らす方法

2023.01.22

脅迫状がもたらしたもの

2011年春のある日、ミシガン大学心理学部のイーサン・クロス教授は、大学の自分宛ての郵便受けに、手書きの封筒が入っているのに目を留めた。

それは、憎悪に満ちた内容の脅迫状であった。その前週、教授はテレビに出演して自身の研究について解説した。その何かが、手紙の送り主の怒りを引き起こしたらしい。

手紙を読んだ教授は、「頭の中で絶望的思考が無限ループを描いて増幅」していったという―「警備会社に電話すべきか?銃を買ったほうがいいか?引っ越すべきか?次の仕事はすぐに見つかるか?」など、頭の中のしゃべり声はえんえんと続いた。

結局何も起こらず杞憂に終わったが、この体験はクロス教授にとって、「チャッター」への関心を深めるきっかけとなった。

チャッターとは、「循環するネガティブな思考と感情」を意味し、「内省という素晴らしい能力を祝福ではなく呪いに変えてしまう」力を持つと、著書『Chatter ―「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法』(鬼澤忍訳、東洋経済新報社)に記している。

■「内なる声」がチャッターとなるとき

人は誰でも「内なる声」を発している。電話番号を覚えるために頭の中で繰り返したり、昨日の会話の詳細を思い出すのも内なる声だ。

ある研究によれば、内なる声のスピードは、声を出して1分間に4000語を発するのに匹敵するそうだ。

この内なる声が、過去の嫌なことを反芻したり、未来の心配へと向かうとき、それはチャッターになる。

「なぜ昨日はあんなことを言ってしまったのか」「明日のプレゼンはうまくいくだろうか」といった、声には出さない繰り言は、時として人生の質を下げる張本人となる。

クロス教授の言葉を借りれば、「学生は試験の成績が下がり、俳優は舞台に不安を感じてささいなことで大騒ぎするようになり、ビジネスでは交渉が失敗に終わる」という具合だ。

■愚痴るだけでは解決しない

何か辛い出来事が引き金となり、頭の中がチャッターでいっぱいになった場合、どうしたらよいのだろうか?

多くの人は他人に打ち明けて(愚痴って)、スッキリしようとする。しかし、この方法には大きな問題がある。

親しい人が相手であっても、聞いてあげられる愚痴には限界があるからだ。愚痴も度を越せば、周囲の人はあなたと距離を置くようになる。クロス教授は、本書で次のように解説を加えている。

さらに悪いことに、こうした事態に陥ると、愚痴をこぼして知らないうちに周囲を遠ざけている人たちは、ますます問題を解決しにくくなる。すると、断絶した人間関係の修復が難しくなり、孤独と孤立という有害な結末に至る悪循環を招いてしまうのだ。(本書68pより)

米国の大学で凄惨な銃乱射事件が起きたとき、その大学に在籍していた学生の多くが、SNSや電話で苦しい思いを打ち明けた。

彼らは、この方法でチャッターを手放し、気が楽になったように思った。しかし、「感情を共有した程度では、彼らの鬱や心的外傷後ストレスの症状には実際の影響はなかった」という心理学の調査結果も記されている。

この難題を解くカギがある。チャッターに苛まされている人は、思いやりや共感という感情的ニーズとは別に、「どうすれば前進し終息感を得られるかについての具体的助言」(認知的ニーズ)を必要としていることだ。

双方のニーズが満たされなければ、チャッターは容易に消失しない。クロス教授は、悩める人に「顧問団をつくろう」とアドバイスしているが、「顧問団」とは感情的ニーズと認知的ニーズの両方を満たしてくれそうな人を指す。

仕事の悩みは、同僚がよき相談者となってくれるかもしれない。人間関係の悩みは、パートナーがその役割を担ってくれるかもしれない。悩みの内容に応じて「顧問」は数が多く、多様なほど好ましいという。

また、SNSの活用には注意が必要だ。「友達」のリア充全開の人生を垣間見て、「妬みにつながる自滅的な思考の悪循環を招きかねない」からだ。

アカウントを削除する必要はないが、SNSは「受動的」利用を減らし、他者と適度につながるような能動的な使い方に徹するよう、クロス教授はアドバイスしている。

逆に、もしあなたの近しい人がチャッターに苦しんでいるようなら、こっそり助ける簡単な方法が幾つかある。その1つが、「愛情のこもった身体的接触」だ。

「たった1秒肩に触れるだけで、自尊心の低い人びとが死についての不安を抱きにくくなり、他人とのつながりをより強く感じる」という研究結果をクロス教授は紹介したうえで、この方法を推奨している。

もちろんそれは、「愛する人に用いるにはある種の技術が必要であり、練習が必要なのは言うまでもない」と釘を刺している。

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年10月16日(水) 発売

DIME最新号は「感性を磨くホテル50」、オフィスで映えるスニーカー特集も!

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。