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マンダムはなぜ「宇宙で使えるボディペーパー」を製品化したのか?

2023.01.18

マンダムから、宇宙飛行士の宇宙での生活環境に適したボディペーパー「ギャツビー スペースシャワーペーパー」が登場した。その名の通り、“宇宙仕様”のボディペーパーだ。この商品は、宇宙飛行士の快適な生活を支えるアイテムとして、現在、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在している宇宙飛行士の若田光一さんも使用している。JAXAの助言を得ながらマンダム独自の技術を用いて開発したとのことだ。

宇宙に適したボディペーパーというのは、一体どういうものなのだろう、地上で技術の応用はできるのだろうか…。開発に携わった、フロンティア開発研究室の森野修氏、齋藤美幸氏に話を聞いた。

「ギャツビー スペースシャワーペーパー」頭皮用(左)ボディ用(右)各1100円 税込

極限環境における生活課題の解決

今回、「ギャツビー スペースシャワーペーパー」の開発に至った経緯は、JAXAが推進するビジネス共創プラットフォーム「THINK SPACE LIFE」の取組みに共感し、参画したことからだという。「THINK SPACE LIFE」は「宇宙飛行士等が生活する極限環境(微小重力、閉鎖空間、水・物資が限られる)における 生活課題を解決することで、宇宙と地上双方の暮らしをアップデートする」という、宇宙での生活用品の公募のプロジェクトだ。

「フロンティア開発研究室は、“close to the edge”というキーワードを掲げて研究を行っています。極限での挑戦が新たな価値を生むという考えです」

現代社会は物も溢れていて、日常生活で困ることはあまりない、と森野氏は話す。普段は必要な物は大体購入できるのに対して、“極限状態”ではさまざまな課題があるという。

「例えば、宇宙という制約の多い環境の中で生活をする宇宙飛行士もそうですし、大きなプレッシャーと戦うスポーツ選手なども極限状態にあります。そのような極限状況での課題を解決することで、日常生活での課題解決にもつながると考えています」

例えば、今回のコロナによるパンデミックで外出が難しい状況のときや、仕事での大事なプレゼンでプレッシャーが大きいときなどに、“極限状態”で行っている対策や対応が役に立てるという考えだ。

宇宙仕様のひたひたボディペーパー

「ギャツビー スペースシャワーペーパー」の特徴のひとつは、ギャツビーボディペーパー史上、最もひたひただということだ。マンダムとしても過去最大の含浸量とのこと(当社比)。その理由を森野氏は次のように説明した。

「宇宙では水を多く使うシャワーでの洗体が難しく、かなりの手間がかかるのです。ですが、地上に戻った時の体力維持のために、毎日のトレーニングは欠かせず、汗をかくといいます。そこで、取り出して拭くだけでサッパリできるような仕様を考えました」

確かに、実物を持ってみるとずっしりとした重みが感じられる。試しに1枚取り出して強く握ってみると、ポタポタと液体が滲み出てきた。

宇宙ではシャワーを浴びる代わりにペーパーを使用するという想定のため、拭くだけでまるでシャワーを浴びて洗ったかのような感覚を目指したという。

エタノールフリーでもサッパリするように

市販のボディペーパーは、エタノールを配合しているものが多い。マンダムの商品にも使われており、主に清涼感の付与、清浄、防腐といった目的のためだという。しかし宇宙仕様のボディペーパーは、エタノールフリーで開発する必要があった。そのことについて齋藤氏は次のように話す。

「ISS内ではエタノールなどの『揮発性水溶性成分』について、使用が厳しく制限されています。 これらの成分は、宇宙生活の生命維持に不可欠なシステムの性能に悪影響を及ぼすことから、ボディペーパーに配合することができませんでした」

エタノールは、ボディペーパー使用時に水と共に気化することで、肌から熱を急速に奪い清涼感を与えるという重要な機能を果たしている、そのため、エタノールフリーでも心地よい清涼感を実現するのに苦労したとのこと。

「マンダムの独自技術である『Kai-tech技術』を活用しました。『Kai-tech技術』というのは、人の体にある温度や化学刺激を感じる感覚センサーを活用し、心地よい清涼感を徹底追求する技術です」

エタノールを使用していないせいか、普通のボディペーパーは取り出して少しすると乾燥して湿り気がなくなるのに対し、「ギャツビー スペースシャワーペーパー」はずっとしっとりと湿り気があった。試しに取り出してから2時間ほど放置してみたが、2時間後もまだひたひたのままだった。(※あくまで今回試した環境の場合)

デザインや香りも宇宙仕様

デザインもまた、宇宙仕様になっている。「ギャツビー スペースシャワーペーパー」のデザインは、宇宙プロダクトデザイナー 高野峯羽氏、山下コウセイ氏によるものだ。

ボディ用は青い帯が体にかかっており、頭皮用はオレンジの帯が頭にかかっているデザインだ。使うところをパッとみて分かるようにデザインしたという。

ボディ用

頭皮用

「宇宙飛行士はミッションが多く、脳が常にフル活動です。そのため、ミッション以外の日常生活ではなるべく頭を休めたいといいます。そのような理由から“パッと見て分かる”ことを重要視したデザインになっています」

「ギャツビー スペースシャワーペーパー」のボディ用は開けてみると爽やかなグレープフルーツの香りがする。また、頭皮用はやさしいシャボンの香りだ。これらの香りにも理由があった。

「ISSは全て人工物でできています。そのため、中は人工的な匂いに包まれています。地上では日常生活の中で、自然とさまざまな香りに触れられますが、宇宙では香りがほとんどなく、香りが感じられるのは食事の時くらいだといいます」

宇宙飛行士の要望として“香りに触れたい”という声が多く、地上にある自然や日常生活を思い出せるような香りにしたとのことだ。

介護や災害対策への展開も視野に

宇宙でも使えるボディシートを開発した技術を用いて、地上のさまざまシーンでの応用も検討しているという。「エタノール不使用のボディシートが活用できる方向性としては、敏感肌の方や乳幼児、介護などへの応用が考えられます」と森野氏。他にも、なかなかシャワーを浴びたりできない災害時や、火気を使うためアルコール製品の使用をセーブしたいアウトドアシーンなども視野に入れているという。

「ギャツビー スペースシャワーペーパー」(1100円税込)は現在、マンダムのECサイトでのみ購入可能だ。宇宙仕様ならではの特徴をもつこのボディシート。今後、地上ではどのような広がりを見せるのか、展開に注目したい。

取材・文/まなたろう

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