「仕事がはかどらない」よくある悩みの解決策
挙げた悩みのうち、3つの悩みに対する解決策を紹介する。
●クヨクヨしすぎて、立ち直りが異常に遅い。
【解決策】
失敗にフォーカスしてしまい、落ち込んで悩んでしまう繊細すぎる人に足りないのは、自分をいたわり、ねぎらう時間だ。しかし、反省は何度も繰り返す必要はなく、反省したら、区切りをつけて「次の一歩をどういう風に踏み出そうか」と考えていくことが大切だ。
しかし、切り替えが不得意な人もいるだろう。そういう人は自分から積極的にねぎらう時間を作ることが大切だ。映画を見る、森を歩く、おいしいものを食べる、推しのライブを楽しむ、旅行に出かけるなど、自分をクヨクヨさせる対象から離れ、ワンクッション置き、気持ちをリセットする時間を持つことをすると、自己肯定感が高まる。なかなか時間が取れないときは、30分ほどの有酸素運動が効果的だ。散歩や軽いランニングなどで、体動かすと副交感神経が優位になり、気持ちが前向きになる。脳内ではセロトニンが分泌され、ストレスが解消される。
立ち直りを早くするには、自己肯定感を高める必要があるという。活用できるものとして「スモールステップの原理」がある。達成したいゴールに向けて取り組むべき行動を小さなステップに分け、一つずつ確実にこなしていく。小さな成功体験を積み重ねていくことが重要だ。
●人前に出ると思うだけでもあがってしまう、緊張してしまう。
【解決策】
誰でも緊張はするが、繊細すぎる人がそうでない人と異なるのは、感情のベクトルの向かう方向だという。繊細すぎる人は「うまく話せるかな」などと自分のパフォーマンスについて考えた後、感情のベクトルを外に向ける。「緊張してうまく話せなかったら、聞いている人に迷惑をかけるかもしれない」「一緒に準備したメンバーのためには、成果を出さないと」「このメッセージ不快を感じる人もいるかもしれない」など、人前にに出る前から自分のパフォーマンスを周囲がどう受け取るかを想像してしまう。そうして自ら緊張度を上げてしまう。この場合の対策は、自分への励ましの言葉がけ「アファメーション」だ。
例えば、人前に出る緊張から不安を感じ、パニックに陥りやすい人は、「心配しなくていいよ。十分準備してきたから大丈夫」と自分に声をかけよう。
本番が近づくにつれて、「やれる!」と思う自分と「もしかしたらこんなふうに思われるかも」と相手の目が気になる自分のがせめぎあう場合、自分に「頑張れよ」と、励ましの声をかけよう。
緊張から気分がふさぎがちになる場合は、「準備はコツコツと進めてきたはずなのだから、大丈夫だよ」と自分で自分を優しく励ましてあげよう。
こうしたアファメーションを面談やプレゼン前に行うことで、適度な緊張感を持って本番に臨めるようになった人もいる。「過剰さ」がほぐれると人の評価を気にしつつも、自分で自分にプレッシャーをかけることがなくなっていく。
●人から見られている、意識されている気がして、本領発揮できない。
【解決策】
オフィスで仕事中、見られてはいないと思うのだけれど、見られている気がする。見られているかどうかが気になってしまってやるべきことに集中できない。見られている気がするから、もっと頑張らなくちゃと自分にプレッシャーをかけてしまう、などで悩んでいないだろうか。特に自己肯定感が低くなっているときは感じやすい。周囲の視線に過剰反応し、いつも以上に力を発揮しなければと自分を追い込み疲れてしまう。
これは自分の力や今できていることではなく、周囲の人の目に注意を向けてしまっているから。相手が本当はどう考えているのか、こちらを見ているのかどうかを確かめていないのに、ネガティブな想像ばかり膨らんでいく。
しかし、自己肯定感が高いときは、周囲の目は嘘話を聞いても客観視できるし、期待を寄せられているとプラスに変換することができる。
これに対する対策として、まず物理的な対策がある。オフィスの中でできるだけ安心して過ごせるパーソナルスペースを作ること。しかし、勝手にパーティションを置くというのはたいていのオフィスでは難しいだろう。その場合、パソコンのモニターの上に好きなフィギアや小物を置いてみる、隣の席との間にティッシュボックスやペン立てを置いてみる、斜め向かいの上司の目が気になるなら、ちょうど視線の通り道になるところに観葉植物を置いてみるなどが有効だ。自分の好きなものや視線を遮るものを置くことで、想像上のパーソナルスペースができる。
また自宅に戻ったら、自分をいたわり、エネルギーを回復させることが大事だ。感じ取った周囲からの刺激によって疲れてしまい、自己肯定感が低下しがちだ。それを回復するために、静かにリラックスできるソファでお気に入りの本を読んだり、薄暗くしたバスルームにキャンドルをともし、ゆったりと半身浴をしたり、肌触りの良いリネンを揃えたベッドでごろごろしたりしよう。本当にくつろげる、自分だけのパーソナルスペースでリラックスした状況を作ることで、自己肯定感の回復に役立つ。
繊細すぎる人が仕事で輝くには?
繊細すぎる人は、仕事に自信を持てないことも多いと思われる。良いところを仕事にポジティブに活かすにはどんな意識を持つと良いか。中島氏に尋ねた。
「繊細すぎる人、HSPの方は、『自分の性質はスペシャルな才能だった!』とポジティブに捉え直し、ポジティブな自分の側面について『仕事に活かせるのだ』と再評価することが大切です。
そのために、次の4ステップを意識するのをおすすめします。まず第一ステップは、繊細さは5人に一人が持つ貴重な気質であるということ認知すること。第二ステップは日常の悩みや考え方の捉え方をポジティブに変えること。『リフレーミング』という短所を長所に変えることを習慣化しましょう。例えば『せっかち』→『素早い行動力』と捉え直すことです。
第三ステップは、仕事のときに、自分がどのような環境や状況のときに繊細さが発揮されるかをリスト化し、可視化しておくこと。第四ステップは、『繊細は才能であり、自分才能がある!』と受け入れることを意識すること。そのことであなたの自己肯定感が高まり、その自己肯定感がHSPに対して光と水を与えるかのように、自分らしさを発揮することにつながり仕事で活かせるようになります」
繊細すぎる人は「仕事」に対してどんな風にとらえると良いだろうか?
「まず、繊細さは生き物の生存本能『生き残るための戦略の一つ』として発達してきた生存戦略であり、あなた自身がそれを兼ね備えた素晴らしい人間であると思うことが大切です。有名人の中では、松本人志さんや田村淳さんもHSPであるとメディアで発信しています。HSPの人は語感が鋭く、他者の言動や感情を敏感に感じ取ることができます。このことは仕事のスキルに置き換えると開発・企画・発想の分野で役に立ちます。また他者の言動や感情を敏感に感じとって、相手に対して共感性の高さや感情移入できる力は営業の分野、また、人材マネジメントやリーダーシップに発揮できるのです。これからは、AI活用及びDX戦略がさらに広まっていきます。その中で生き残るために必要なのは人間が人間としての特性を活かすことです。その意味でも、HSPのあなたには8割の人にはないスペシャルな才能が備わっているということに自信を持って進むこと。これをおすすめします」
もし自分はHSPかもしれないと感じているなら、この事実から目を逸らさずに、むしろ強みと捉えることで、仕事はもちろん、人間関係も生活全般も理想的なものになるのではないだろうか。すべては自分の捉え方次第で変わる。
【取材協力】
中島輝氏
世界初独自の自己肯定感心理理論で『自己肯定感の教科書』が大ベストセラー。累計部数60万部超えの作家であり自己肯定感アカデミー/トリエ代表。NHK朝の人気番組「あさイチ」で「自己肯定感心理テスト」を監修。同番組内で著名な心理カウンセラーと紹介される。
取材・文/石原亜香利