2024年問題
国の主導による働き方改革の一環として、2024年4月から、トラックドライバーの年間時間外労働の上限が、960時間に制限される。労働時間が実質的に減少することで「今後も現在の輸送システムが維持されるのか」という、荷主企業側の懸念から、〝2024年問題〟という言葉が生まれた。施行後も、現在の物流を持続できるのか。公益社団法人全日本トラック協会に聞いた。
「課題は2つあります。ひとつは荷待ち時間の改善です。現在2時間以上かかっている荷待ちが30分になれば労働時間は大幅に削減されます」(同協会 企画部長・星野治彦さん)。もうひとつの問題がドライバーの賃金だ。
「国の告示する〝標準的な運賃〟を荷主から収受できれば、労働時間が減ってもドライバーは全産業の平均並みの賃金を受け取れ、ドライバー不足解消などにもつながります」(前出・星野さん)
この2つが達成できないと賃金が下がり、ドライバー不足はさらに深刻化。2030年には現在の荷物の約3割を送ることができず、発送されても到着までに時間を要することになるという。2024年問題は、業界だけでなく利用者も一緒に考えるべき生活課題だ。
リレー輸送や船舶の併用といった案もあるが、ドライバーの調整やコスト増の壁に阻まれ実用化は難しいとか。荷物が送れない・届かないという最悪の事態は回避したいものだ。
■ 平均荷待ち時間
資料:国土交通省「トラック輸送状況の実態調査結果(概要版)」より
1運行当たりの、荷物の積み下ろしなどにかかる荷待ち時間は、55%で1時間を超える。改善されることで大幅な時間削減が期待できる。
■ トラックドライバーの年間所得額の推移
トラックドライバーの年間所得額は、全産業の平均と比べ、大型のドライバーで約5%、中小型のドライバーで約12%低く、労働時間は約2割長い。
取材・文/安藤政弘