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【深層心理の謎】損得抜きで意思決定したほうがうまくいきやすい理由

2023.01.12

“損得抜き”の意思決定はうまくいきやすい!?

 通りを進み、早稲田通りと交差する交差点にさしかかる。信号を渡ってから左折することにしたい。

※筆者撮影

 得をしようとしたばかりに損をしてしまうという、笑えるか笑えないか微妙な話になっているわけだが、消費社会において一見してお得に見えるオプションはあちこちに転がっているだけに案外この手の話は考えられているよりも多いのかもしれない。

 そしてそもそもお得な選択肢を選んで客観的な利益を得たとしても、それが当人の満足感や幸福感を満たすのかどうかはまた別の問題にもなるだろう。自分にとって意味が感じられない利得が嬉しいはずもない。

 ということは“損得勘定”を優先させると碌(ろく)なことはないということなのだろうか。最新の研究でそれは一面の真理であり得ることが報告されていて興味深い。

 “損得勘定”と自分のエゴを超越した“損得抜き”の立場に立つことで、より自信が持てて、より敵意が和らぎ、より合理的な意思決定ができるというのである。


 自己超越強化行動アプローチシステム(BAS)の活性化に焦点を当てます。

 高められた状態のBAS活性化は、より少ない好戦性を仲介しました。

 効果は高レベルの意味追求者の間でのみ発生しました。

 この結果は価値、精神性、思いやりを超越する実験的操作にまたがって適用されます。

※「ScienceDirect」より引用


 カナダ・ウォータールー大学をはじめとする合同研究チームが2022年6月に「Journal of Experimental Social Psychology」で発表した研究では、自己を超えた抽象的な目標と意味の追求、つまり無私無欲の価値観への献身は、ストレスの多い状況で人々がより自信を持ち、敵意を和らげ、より寛大になるのに役立つことを報告している。

 実験参加者全員は過去に体験したストレスフルな体験を思い出し、人生の目標と意味、最優先される価値観について考える時間が与えられた。

 続いて参加者はキャップ型の脳波モニター装置であるEEG(ElectroEncephaloGraphy)を頭に装着し、力(power)と熱意(enthusiasm)に関連する脳活動のパターンが測定された。

 収集したデータを分析した結果、生活における無私の価値観(selfless values)に焦点を当てることで、脳波と個人の力の感情の測定値が高まり、加えて過酷に感じられる苦渋に満ちた判断が減ったのだ。重要な点はこれらの効果は常に人生の目的と意味の追求を行っていると報告した参加者の間でのみ発生したことだ。

 “損得抜き”の無私の価値観とは、自分自身を超えたより大きな利益に焦点を当てることであり、興味深いことに参加者を心理的により強く、より合理的にするという逆説的な効果をもたらしたことが確認されたのである。

 例の“Go To〜”をはじめ、各種のポイントサービスや割引サービス、あるいは時節柄の福袋など、お得さを享受できる選択肢が身近に溢れている状況にあるともいえるが、利得を最優先にしていれば時には知人のような「得をしようとして損をする」こともあり得るのであり、むしろ目先の損得から超越した“無私”の態度で事に取り組むことでいろんなことがうまくいきそうであることが最新の科学から示唆されているのはなかなか面白いといえるだろう。

人気町中華店で食べたことのない「おすすめ品」を賞味

 交差点の横断歩道を渡ってから左折し、早稲田通りを進む。お昼休みのピークは過ぎているので人通りはやや少ない。

※筆者撮影

 食べる場所はよりどりみどりで迷うところだが、とある老舗の町中華のお店の前にきて店内の様子をうかがってみると空いてるテーブルが確認できた。ここはなかなかの人気店で、特にお昼時は少し並んで待つことを覚悟しなければならない店なのだ。ということでこれはラッキーだ。入ってみよう。

 店先の外観から受ける印象通りのあまり広くはない店内だが、一般的な町中華のイメージよりも清潔感のある小ざっぱりしたインテリアだ。

 お店の人に空いている席に促されて席に着く。急遽飛び込みで入ったこともあって、何を注文するかまったく決めてはいなかった。町中華としてのメニューが一通りそろっているお店なのだが、個人的にはこのお店ではご飯モノのメニューのうちのある2つのメニューのどちらかを注文することが多い。

 ほぼ条件反射的に2つのうちのどっちにしようかという考えが浮かんだところで、壁に架かった小さなホワイトボードに本日のおすすめ品が記されてあるのに気づいた。

 どんなメニューなのか想像することはできなかったが、運よく待たずに入れたこともあるし“おすすめ”に乗ってみてもよさそうに思えた。コップの水を持って来たお店の人にホワイトボードに記されていた本日のおすすめ品の「干しエビ入り野菜炒め」をお願いした。

 本日のおすすめ品はもちろんお店側からの提案なのだから、何かしら原材料的にもお得であるようには勝手ながらに思えてくる。その意味では損得勘定を踏まえた意思決定と言えないこともないのだが、今の自分にとってはちょっと事情が異なる。自分はこのメニューを食べたことがないからだ。

 ファストフード店のキャンペーンなどでは特定のメニューが今なら○円引きというような消費刺激策が講じられることがあるが、その場合は利用者は食べたことのあるメニューを安くお得に食べられる機会を享受することになる。

 しかし今の自分の場合、注文すれば必ず満足できるメニューを見送ってまでもおすすめ品を選んだのだ。お店の提案に無条件で乗ったことは、大げさではあるがある程度は“無私の価値観”に基づくものであると言えるかもしれない。少なくとも“損得抜き”であったことは間違いない。

※筆者撮影

 料理がやってきた。どんなものが来るのかまったく先入観を持っていなかったが、メニュー名からすれば確かにこういうビジュアルになるだろうという見た目だ。ボリュームもたっぷりで食べ応えがありそうだ。さっそくいただこう。

 メニュー名通り干しエビがけっこう入っていて、エビの芳ばしい風味が鼻腔に広がる。強火で炒められたモヤシや小松菜もシャキシャキしていて美味しい。自然にご飯がすすむというものだ。

 このメニューを選んだことが得であったのか損であったのか、正解であったのか失敗であったのかはわからない。しかし少なくとも不満はないし、ちょっとした新鮮な食体験になったことは間違いない。

 食に関して何かと“コスパ”を求めたくなるのは人情だが、しょせん胃袋は1つしかないのだ。あまり深く考えることなく新しい味に出会える機会に乗ってみたっていいのだろう。損得抜きの判断に“後悔”の言葉はないのだから。

文/仲田しんじ

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