世界中が一丸となって目指している「カーボンニュートラル」。世界的な動きのはずなのに、これまで今ひとつ実感しにくくかったものの、2023年はより身近になりそうだ。今後、社会がどう変わりつつあるのか、専門家の話をもとに展望しよう。
【話を伺った人】ニューラルCEO 夫馬賢治さん
信州大学特任教授。ハーバード大学大学院修士課程(サステナビリティー専攻)修了。ESG投資やサステナビリティー経営の専門家であり、省庁で複数の委員を兼任。各メディアで解説も担当。著書に『ネイチャー資本主義』(PHP新書)など多数。
カーボンニュートラルはまだまだ〝序盤戦〟
政府は2050年までに、温室効果ガスの排出量と吸収量の合計をゼロにする「カーボンニュートラル」を実現すると宣言している。このロードマップにおいては、2030年の温室効果ガスを、2013年に比べて46%削減することが目標だ。7年後に迫った中間目標の達成に向けて、2023年はどういう位置づけの年になるのであろうか。信州大学特任教授の夫馬賢治さんは次のように話す。
「ひと言で言えば、まだ準備期間であり、実生活にまで大きく影響を与えるほどの変化はないかもしれません。しかし企業や自治体から2030年に向けた戦略や布石が発表されることになるでしょう」
各業界でソリューションを用意しないといけないことが山積みで、ひとつひとつの取り組みは小さなことが多いという。
「例えばEV関連の課題である充電インフラの整備に向けて、東京都では新築のビルや住宅に充電スタンド設置の義務化を検討しています。しかし、こうした変化は意識しないと気づけない小さなものです。今、こうした変化が積み重なり、私たち生活者が、自然とカーボンニュートラル社会に移行できるような社会づくりが進められています。まだカーボンニュートラルにピンときていない人でも、2023年は各企業の動向を通じて全体像が見えてくる……のではないでしょうか」
EV関連
自動車業界は2030年以降、完全EV化を目指している。しかしEVの販売価格や充電インフラの不足など課題は多い。まずは消費者がEVを受け入れられる土壌づくりに各社ともに力を入れている段階だ。2023年はバスやトラックなど、交通・物流インフラの変化も見られる模様。
EM1 e:
2023年夏ごろ発売予定
若者をターゲットにしたスタイリッシュなデザイン
ホンダは2025年までに全世界で10車種以上の電動2輪車を販売することを宣言している。イタリア・ミラノで開催されたモーターショー「EICMA 2022」では新たな電動スクーターを発表。同社初となる欧州市場での販売も予定中。
プリウスPHEV
2023年春に発売予定
25年の歴史を持つハイブリッドカーの第5世代が登場!
「いつまでハイブリッドを造り続けるんだ……」と言われる中、カーボンニュートラルには「みんなの手が届くエコカー」であるプリウスが必要だと考え、トヨタではBEVではなく、あえてHEVとともにPHEVの販売も決めた。