処方箋による医療用医薬品の需要はどのくらい?電子処方箋制度の効果は?
Amazonが参入するからには、医療用医薬品の需要は右肩上がりなのでは?と想像できる。その市場の推移は以下の通りだ。
■処方箋の発行・受取率の年次推移
2020年度(令和2年度)の処方箋発行枚数は約7.3億枚となっている。コロナウイルス感染拡大の影響で2019年度より発行枚数は減少しているものの、資料上は過去40年以上にわたって発行枚数が右肩上がりに増え、2020年度は国民一人当たり年間約6枚の処方箋を受け取っていることがわかる。
また、2020年度は発行枚数が減少したとはいえ、その原因となったコロナウイルス感染拡大の影響とそれによるオンライン需要を満たして、発行増の一要因となるのが、2023年1月から始まる予定の「電子処方箋」制度だ。
■電子処方箋の仕組み図解
引用元:電子処方箋概要案内/厚生労働省
機能面での説明では、処方箋データを管理し、病院と薬局の薬剤師とでのデータ確認や、重複の投薬チェックなどが行えるとしている。利用者視点では、現在、オンライン、郵送で処方薬を受け取ろうとする場合に、薬局へ処方箋を提出するときは、紙の処方箋データを撮影して薬局に提出しているが、その手間を減らすことができる。
仮にAmazonが参入した場合、薬局の解説には薬局開設許可の取得や、保険薬局の指定を受ける必要があるため、はじめのうちはすでにオンラインでの処方箋を受け付けて、医療用医薬品の郵送対応を行なっている薬局と提携したビジネスモデルになりそうだ。
薬局の視点に立てばAmazon経由で処方箋を持つ患者との接点ができるほか、Amazonの配送網を使って、薬をより早く患者へ届けられるメリットがある。この時かかるAmazonへの手数料はまだ未知数であるため、実際にコスト見合いでその薬局の営業が続けられるかが今後の注目点となる。
人口減少を見据えると長期的には、Amazon薬局は脅威にもなりうる?
2021年6月30日に厚生労働省が発表した資料(下図)によれば薬剤師の需給は供給過多になるとしている。
■薬剤師の需給推計
引用元:厚生労働省
処方箋の発行枚数に直接言及されているわけではないが、人口減少やデジタル化による合理化が進む中、Amazon薬局が頭角を現せば、特定の薬局にばかり需要が集中する懸念が生まれる。つまりAmazonと組まない薬局は、衰退の一路をたどるかもしれないといえる。
文/久我吉史