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【深層心理の謎】なぜ人は不安の原因を見ようとせず現実から逃避するのか?

2022.12.30

 ひと昔前なら考えられなかった光景を目撃することが増えた。残念ながらその原因の多くはスマホにある――。

信号が青になっても気づかない人々

 どうしてそうなるのか、ちょっと考えてみなければわからないことが増えた気がする。ほんの少し前に目撃した状況もそうしたケースだ。

※筆者撮影

 所用を終え、文京区・千石界隈を歩いていた。まだ夕方6時過ぎではあるが真っ暗だ。今日はもう急ぐ用件もないし、あまり来ることもない場所なので少し歩いてみたい。どこかで何か食べてもいいだろう。白山通りの歩道を歩く。

 少し前に渡った横断歩道で、ちょっと奇妙で危険な光景を目撃した。なぜそんなことになっていたのか、順を追って検証してみなければすぐには理解できないことだった。

 自分は横断歩道で赤信号を1人で待っていたのだが、道路を挟んで反対側には女性が2人、同じく信号を待っていた。

 信号が青になり自分は横断歩道を渡りはじめたのだが、向かいに立っている2人の女性は立ち尽くしたまま動かない。2人共、手にしたスマホに視線を落としていて信号が青になっていることに気づいていないようなのだ。

 この時もし、2人の近くにもう1人信号を待っている人がいて信号が青になって歩きはじめたのなら、きっとこの2人の女性も釣られて歩きはじめたのだろう。しかし2人のどちらもスマホに没頭したままでずっとそこに立っているのである。

 自分が近づいてきたことに気づいたのかもしれないが、女性の1人が顔を上げると足早に歩きはじめた。タイミングが悪いことにそこへ左折してきた車がやってきて歩く女性の前でブレーキをかけて止まった。車は低速だったのですぐに止まったが、それでもけっこう危ない場面だろう。

 女性は少し驚いたリアクションを見せて小走り気味に駆け出して自分とすれ違っていった。もう1人の女性も歩き出していて止まっている車の前を通り過ぎた。

 車のドライバーがこの2人の女性は信号を渡る気がないのだと思ったとしても無理からぬことだ。あるいはそもそも信号が青になってしばらく経っているのに、まだそこに人がいるとは思ってもみなかったかもしれない。

 そしてスマホがこれほど普及していなければこうした光景を目撃することもなかったのだろう。その意味ではやや大げさではあるは今の我々はまったく新しい時代に生きているということになる。

 外でスマホを見るなとは言わないものの、時々は周囲を見渡して今自分が置かれている状況を把握してもよさそうなものだが、完全に新たな時代を迎えてしまっている今、そんなことは期待するだけ無駄なのだろうか。新しい情報を追い求めるあまり、周りが見えなくなっているとすれば本末転倒である。

不安を感じていると視線の動きが乏しくなる!?

 白山通りをさらに進む。ほぼ住宅街で意外なくらい人通りは少ない。明らかに何もないようだったらどこかで引き返すとしよう。それまでは何かないか辺りを見回しながら進むことにしたい。

※筆者撮影

 外出先でも必要な情報にアクセスしなければならないというケースも確かにあるのだろう。しかし四六時中、常に情報に触れていなければならない生活というのはいったいどうしたものなのか。常に情報を入手していなければ何か“不安”を感じてしまうということであれば、メンタルヘルス面での問題があるのかもしれない。

 最近の気になる研究では、社交不安を抱えている人は現実的な社会的環境において周囲の状況や人物をあまり見ないことが報告されている。不安を感じていれば、周囲の状況を微に入り細に入りチェックしようとするようにも思えるのだが、実際の社会的環境においては警戒して注視するよりも、現実を見たくないという気持ちが勝って視線が回避的になるというのである。


 この研究では実際の社会的状況での新しい視線追跡パラダイム内で参加者の視線を測定することにより、社会不安の人々の注意バイアスを調べました。

 学生の参加者は視覚的な検索研究であると伝えられた実験に参加した際、別の参加者を装った共謀者が部屋に入ってきました。

 すべての参加者は共謀者を見ることを避けましたが、社会不安レベルが高い者は、最初の凝視時に凝視する時間が短く、全体的に凝視と眼球運動の実行が少なく、視線移動が短くなりました。

 これらの調査結果は、より高い社会不安レベルの参加者における過分な回避を示しています。

※「PLOS ONE」より引用


 不安を感じた場合、安心を得ようと思えば不安な点を見つけ出して取り除くべく、何か異常な点がないかと細心の注意を払おうとするのは誰もが理解できる行動だ。

 しかしその一方、不安を感じつつもその原因となっているものを知ろうとしなかったり、見ようとしなかったりといった現実逃避的な態度で不安をやり過ごそうとする戦略もあり得る。

 不安を感じやすい人は現実の社会生活の中でどちらの戦略をとっているのか、英ボーンマス大学の研究チームが2021年10月に「PLOS ONE」で発表した研究では、アイトラッキング技術を駆使した実験を通じて、社交不安症の人は初対面の人物だけでなく、周囲の状態もよく見ることを避ける強い傾向があることを報告している。

 30人の大学生が参加した実験ではそれぞれ社交不安(社会不安)を測定するテストを終えた後、1人ずつ部屋に入ってアイトラッキンググラスを装着し、視線の動きを追う視覚探索タスクが課されることが伝えられた。

 しかしそれは本当の目的ではなく、これから実験をしようという段になってから実験実施者は忘れ物をしたので、すぐに戻ると言って部屋を出て行ったのだ。

 しばらく部屋で1人きりになっていた参加者だったが、そこに実験参加者(実は共謀者)の見知らぬ人物が挨拶をしながら部屋に入ってきたのである。

 先に部屋にいた参加者にとっては違和感しかなく不安すら覚える状況だが、はたして先にいた参加者はこの闖入者をどのように見ていたのか。すでにアイトラッキンググラスが装着されていることもあり、その視線の動きを追うことが実はこの実験の真の目的であったのだ。

 アイトラッキングのデータを分析したところ、社会不安レベルが高い参加者ほど、この闖入者をあまりジロジロ見ていないことが判明したのである。さらに人物だけでなく、その周囲についてもあまり見回したりすることなく、視線の動きがきわめて乏しい傾向も明らかになった。

 最新の情報を見逃すまいと若干の不安を感じつつも外でスマホをチェックしていれば視線の動きが乏しくなり、青信号や近づいてくる車に気づかなったりしても不思議ではないのかもしれない。仕事やプライベートでいろいろと情報収集が欠かせない時でも、時にはひと息ついて周囲を見回す心の余裕を持ちたいものである。

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