SNSの中でも、Instagramを自社PRに活用する企業やブランドは多い。ファンの愛を高めるのはもちろん、新たなファン獲得や商品のPRも無料でできるのだから、活用しない手はない。
今回は、自社インフルエンサーが約70名存在する、人気雑貨店『3COINS(スリーコインズ)』通称『スリコ』に話を聞いた。
開設依頼、毎日、複数投稿してファン拡大
スリコの公式Instagramは、現時点(2022年12月15日)でフォロワー160.6万人。アカウントを開設したのは、7年前の2015年6月だ。スリコはアパレルメーカー『パルグループ』の一員だったことから「アパレルではすでにInstagramで商品をアプローチするのが一般的だったので、雑貨店であるスリコも商品の魅力を発信しようと開設しました(PR・小林まりあさん、以下小林さん)」。
当初はスリコへの認知も今ほどではなかった。そこで、まずは知ってもらう、投稿を見てもらうことを目標に、毎日、複数投稿し続けたという。
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月曜には新商品を投稿。投稿内容も、小林さんたち担当者が決めている
「今、Instagramは私1人で更新しているのですが、現在も毎日、複数投稿しています。基本的に、毎週月曜に新商品が発売されるので、1週間かけて新商品紹介。間で既存商品も紹介し、フィードはカタログのような投稿で統一しています」
オフィシャルアカウントのストーリーでは社内インフルエンサーも紹介
「ストーリーは、親近感を持っていただきたいのと、一つひとつの商品の深掘りができればと、自社インフルエンサーのストーリーをリポスト。見てくださる方が、商品はもちろん、インフルエンサーの存在を知るきっかけになればと考えています(小林さん)」
インフルエンサーに求めるのは自主性
自社インフルエンサーの取り組みを始めたのは、2016年ごろ。当時はアパレルブランドで自社インフルエンサーが流行り出したころで、スリコも社内施策としてスタートした。
「当初から『やりたい人はいませんか?』という挙手制で、今も2ヶ月に一度、公募しています。挙手制なのは、そもそもInstagramは好きじゃないと続かないから。店長、社員、アルバイトなどの立場やキャリアは関係なく、Instagramとスリコが好きであれば誰でも応募できます。
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インフルエンサーは、全国各地の店舗で働きながら商品の魅力を伝える投稿をする
やっていただくと決まったら、公式アカウントを付与します。現在は個人スマホで更新してもらっていて、ルールは最初に研修しますが、基本的には投稿内容や時期など全て自由。特に公開前にチェックはせず、直してほしい投稿を見かけたら声をかける程度です(小林さん)」
誰でも自由に楽しめることから、時にはネガティブなコメントやDMが届いてしまう場合もある。「これはさすがに、という場合は会社として対応しますが、距離の近さもInstagramの特徴なので、難しいところですね。でも、インスタグラマーたちが気持ちよく投稿し続けてくれたらと考えています(小林さん)」
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「スリコ」とひと口に言っても、インフルエンサーごとに個性豊か
ちなみに、インセンティブはあるのだろうか?
「一定の条件を超えたら付きますが、それまでは特に設けていません。だからこそ、そもそもInstagramが好きで、自主的に頑張れる人じゃないとインフルエンサーを続けるのは難しい。日々の業務がありますから(小林さん)」
Case1 スリコの名物インフルエンサー「Maikoさん」
スタート当初から活動し、現在ではフォロワー9.8万人(2022年12月15日時点)と、多くのファンがいるフラッグシップストア「原宿本店」スタッフ・Maikoさんに話を聞いた。
–自社インフルエンサーに応募したきっかけは?
「もともとインスタが好きで、一期生募集のタイミングですぐに手をあげました。もともと個人のインスタでフォローして参考にしているアカウントに、100円均一しばりのプチプラのもの限定で紹介している人がいて。そのスリコ版を、店員目線でやりたいと思って」
–実際にInstagramで発信してみて感じることは?
「好きだからか、大変に思うことはあまりないですね。ただ、お店が忙しいときは休日を使って更新したりするので、慣れるまでは少し大変でした。
インフルエンサーになってよかったのは、お客さまからお声が直に届くこと。スリコは基本的に接客をしないので、お客さまとお話をする機会がありません。だから、コメントやDMなど、SNSを通して間接的に接客をしているような感覚があります。
2018年ごろから始めたインスタライブも、間接的に接客をしているような感じです。私は喋るのがあまり得意じゃないので、最初はすごく緊張したのを覚えています。夏で、浮き輪のご紹介をしたんですが『頑張ってください』っていう応援コメントをいただいて(笑)。インスタライブはお客さまとの距離が近いのも、楽しいところ。
嬉しいのは、投稿を見て『スリコを好きになりました』『買いました』というDMをいただいたり、お店に会いに来てくださるお客様がいることです。あと、更新したアイテムが売れるのも、やっぱり嬉しいですね」
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Maikoさんが実感を持って紹介する「使い方アレンジ」投稿も人気
–投稿内容はどのように考え、投稿していますか?
「新商品のカタログを見て、バズリそうなものを決めて、インスタライブをしています。そこで反応がいいアイテムをフィードに入れたり。
あとは、自分で買って、実際に何度も使ってみてよかったものが、どんなふうによいかをフィードに投稿しています」
–ファン(フォロワー)を増やすために工夫していることは?
「フォロワーを増やすのが一番大変です(笑)。フォロワーが1万人になるまでは、コツコツ毎日、一日3回投稿したりもしました。いろいろやってみて、どれがよかったのか正直わからないけれど、やり続けることが大事かなと。
そのためにも、あまり張り切りすぎず、頑張りすぎず、ずっと続けられる投稿を自分なりに模索することだと思います。
私がインフルエンサーとして活動し始めたころは、巷では映えた投稿が流行っていたけど、私はそういうのはあまり得意じゃありません。だから、おしゃれな写真にすることを頑張って、投稿回数が少なくなるより、簡単でもいいから毎日投稿しようと決めました」
–今後の展望を聞かせてください
「私みたいな人が、それぞれの店舗に一人いて、個々のお店のアプローチができるようになったらいいなと考えています。いつか、そのお手伝いをしたいです!」
Case2 数少ない男性インフルエンサー「サトウさん」
2022年9月にアカウントを開設し、すでにフォロワーが2万人(2022年12月15日時点)超え! 自社インフルエンサーの中でも2名しかいない、貴重な男性インフルエンサーとして活躍する「さんすて福山店」店長のサトウさんにもインタビュー。
–自社インフルエンサーに応募したきっかけは?
「僕は、雑貨屋が好きで、19才のころからスリコで学生バイトをしていて、フリーターを経て社員になりました。7〜8年前の当時から、ずっとSNSに興味があって。違う方のアカウントで1年半くらい投稿を手伝ったり、ブログを更新したりしていたのですが、今年の8月に『インスタはどう?』と、念願かなって声をかけてもらいました」
–実際にInstagramで発信してみて感じることは?
「個人のインスタは“見る専”だったので、いいねをするだけでした。それが実際に投稿してみると、なかなかいいねが伸びないんです……。とくに、フォロワーが1000人を越えるまでは、全然伸びない。余裕だと思っていたんですが、そもそもフォロワーがいないと投稿を見てもらえないので、いいねが伸びるわけないんですよね」
–ファン(フォロワー)を増やすために工夫していることは?
「いろいろ投稿してみた中で、ストーリーで商品をランキングするのは人気です。ストーリー自体に拡散機能はないけれど、フィードのように投稿が残らず、時間が経つと消えてしまうので、フォローするしかない状態を作っています(笑)。
あとは、新規フォロワー獲得のために、バズりやすい投稿をして3時間ぐらい様子を見ます。いいねのつき方で初動がよければ、バズった投稿を固定して、フィードの上にあげる。これは、3時間っていうのがポイント。1時間だと、フィードに乗る、乗らないでブレがあるので、3時間くらい見ると本来の結果が出るんです。
僕の家はおしゃれな部屋ではないので、インスタの機能を全部使って、努力で増やしています(笑)」
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「リールのBGMにマイナーなロックを使ったり、僕のファッションゆえか、ロック好きや美容師さんもフォローしてださるのがおもしろいです」(サトウさん)
–投稿内容はどのように考え、投稿していますか?
「フォロワーが1000人になるまでは、売れているものはもちろん、他の人がやっていないものを紹介して、他のアカウントと逸脱したインスタになるように工夫しました。
あとは、同じカテゴリでフィードが埋まらないように。キッチン、キッズ、ファッションなど、投稿ごとにカテゴリを変えて『いろいろ幅広く紹介しているんだな』と感じてもらえるよう工夫しています。一日、2〜3投稿を軸にしているので、たとえば2回キッチンアイテムが続くと、興味のある方にしか響かなくなってしまうので。
あとは、フィードのテンションがブレないように、最初から白背景、文字は黒で更新しています。やはり商品が主役なので、しっかり見ていただきたいですから」
–今後の展望を聞かせてください
「僕は今、店長ですが、店長って褒められる機会があまりないんですよね(笑)。だから、いいねをいただいたりフォローしていただけると、僕自身が褒めていただけている感覚になるというか。自己肯定感が高まるんです。
だから、今後はMaikoさんのように、僕を目掛けてお店に来ていただけたり、僕自身の存在も浸透したらうれしいですね。その上で、売り上げも上がれば、店長としてもうれしいです」
取材・文/ニイミユカ