マッチポンプは、ビジネスでも使われる言葉です。古くからある言葉で耳にする機会も多いですが、どのような意味があるのでしょうか。意味と由来、主な使い方を解説します。マッチポンプと似た使い方をする類語も見ていきましょう。
マッチポンプとは?
ビジネス用語や商法の一種として、マッチポンプという言葉が使われることがあります。マッチポンプとは、何を意味する言葉なのでしょうか?具体的な意味と由来を解説します。
マッチポンプの意味
マッチポンプは、火をつける『マッチ』と消火に使う『ポンプ』を組み合わせた和製外来語です。マッチは英語、ポンプはオランダ語ですが、マッチポンプという言葉は日本で生まれた独自の外来語といわれます。
マッチポンプは、自らマッチで火をつけ、ポンプで消火する様子を表した言葉です。自分で放火しておきながら率先して消火するような状態を指しており、一般的には悪い意味で使われることが多いでしょう。
主な使用方法としては、自らがわざと起こした問題に何らかの解決策を提示することによって、高い評価もしくは報酬を得ようとする様子を表現するときなどに使います。裏で問題を起こし、表では問題を解決する素振りを見せる状態もマッチポンプです。
マッチポンプの由来
マッチポンプという言葉が広まり始めたのは、1960年代のことです。1961年の国会議事録には、衆議院議員の発言に『マッチ・ポンプ方式』という言葉が見られます。
そのとき公共料金の値上げをマッチに例え、物価の値上げ抑制政策をポンプに例えていることから、当時も『自分で火をつけながら、消火して評価を得ようとする意味合い』で使われていたようです。
その後、1966年に政界で起きた『東京都議会黒い霧事件』と呼ばれる不祥事によって、マッチポンプという言葉が一般に広まったと考えられます。その事件で話題を呼んだ国会議員が、『裏であくどいことをしながら、表面上は問題を解決しようとする様子』を見せたことをマッチポンプに例え、新聞記事でも使われていたようです。
マッチポンプの類語
マッチポンプには、似たような言葉がいくつかあります。よく使われる類語を見ていきましょう。使う状況によっては、マッチポンプよりも類語の方が適している場合があります。
自作自演
『自作自演』にはもともと、自分で作った筋書きを自分で演じるという意味合いがあります。創作分野において、作り手と演じ手が同じであることを表しているのです。
また、自分で計画し、わざと問題を起こす様子も自作自演と呼ばれます。例えば、強盗に襲われたと警察に駆け込んだ人が大騒ぎしたものの、実は強盗事件は起きていなかったというパターンなどです。現在は創作分野の意味合いではなく、マッチポンプと似た意味での使われ方が多くなっています。
また、インターネット上でも『自作自演』はよく使われる言葉です。1人の人間がWebサイト上で複数人を演じ分け、都合のよいように話を進めていく様子は、『自作自演』または『自演』と呼ばれます。
捏造
『捏造(ねつぞう)』は、ありもしないことを事実のように作り上げることを指す言葉です。例えば、本来の売上とは異なる帳簿を作成し、それがまるで正しいものであるかのように見せかけた場合、帳簿を捏造したことになります。
捏造の『捏』は、捏(こ)ねる・捏(つく)ねるなどのほか、『捏(でっ)ちる』という言葉にも使われる漢字です。でっちるには、作り上げるという意味があります。
派生語として『でっち上げる』という言葉もあり、これもマッチポンプや捏造と同じような意味合いで使われています。
やらせ
『やらせ』は、テレビ番組や新聞などのメディアでよく使われる言葉です。取材相手や番組出演者とあらかじめ打ち合わせをしておき、メディア側に都合よく話を進めていくことを指します。
ドキュメンタリーや視聴者の生の声を伝える番組において、不必要な脚色や妙な誘導があれば、事実とは違う部分があるためやらせといえるでしょう。勝敗や答えをあらかじめ打ち合わせておき、おもしろいように番組を作り上げるのもやらせにあたります。
視聴者や読者に対しては、打ち合わせていることを気づかれないよう振る舞うことから、マッチポンプと似た意味で使われます。
マッチポンプの使用例や注意点は?
マッチポンプという言葉は、どのように使われるのでしょうか?主な例文を紹介します。また『マッチポンプ商法』と呼ばれるビジネスについても見ていきましょう。
マッチポンプを使った例文
マッチポンプという言葉は、実際の会話ではどのように使われているのでしょうか?一般的な使い方を例文で紹介します。
ただし、マッチポンプには『悪いことをしている』といった意味合いもあるため、たとえ自分で火をつけて消火に走り回っているように見えたとしても、本人にマッチポンプというのは避ける方が無難です。
【例文1】
A:あの社長は、あることないこと言って人を脅しているっていう噂だ。マッチポンプかもしれないな。
B:へえ、そうなんだ。注意しないとな。
【例文2】
A:この間、水回りの業者を呼んだらすぐに工事しないと大変なことになると大騒ぎされたよ。今日、来てもらう予定なんだ。
B:ちょっと待て、それってマッチポンプ商法じゃないのか?一度調べてもらった方がいいよ。
マッチポンプ商法に注意
マッチポンプ商法とは、本人が問題を発生させたり、ありもしない事実を捏造したりして、不当に利益を得ようとする商法を指します。
実際に問題を発生させるパターンでは、本来問題ないはずの商品を修理に見せかけて壊し、高い修理費を請求するようなケースがあります。
事実の捏造では、実際は何も起きていないのに『水が汚れている』『床下に虫が大量発生している』などと言って費用を請求するのがマッチポンプ商法です。
そのほか、『この商品が売れている』『すごい商品』と販売側が消費者の声を偽って広告を出すのも、マッチポンプ商法の一種です。現在は禁止されていることが多く問題視されていますが、ステルスマーケティングとも呼ばれます。
構成/編集部