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観劇やライブへの参加が趣味の人と話していると、『こけら落とし』という言葉を耳にすることがあります。演劇やコンサートになじみの薄い人からすると、何を指しているのか分からないワードですが、こけら落としには一体どのような意味があるのでしょうか。
「こけら落とし」という言葉の基礎知識
言葉の基本的な意味や言葉の由来を確かめるのが、新しい言葉を理解する上での近道です。こけら落としの意味や由来を知って、知識の基礎を固めましょう。
こけら落としの意味
こけら落としとは、新築・改築された劇場やホールで初めて行われる公演のことです。公演が催される場所のお披露目公演を指します。
こけら落としは、明治から大正にかけて演劇界で使われ始めたとされる言葉です。本来は劇場やホールでの初興行を指す言葉ですが、最近ではスタジアムや競技場が新築された際、初めて開催される催し物をこけら落としと表現する場合もあります。
近年催されたこけら落とし公演として有名なのが、劇団四季のJR東日本四季劇場[秋]で上演されたミュージカル『オペラ座の怪人』です。四季劇場[秋]は2020年10月24日にオープンしました。
こけら落としの由来
こけら落としという言葉の由来は、建築により発生した削りかすを払う行為から来ています。こけらとは、木を削ったときに出る木くずのことです。表面を覆っているものを薄く削ぎ落とす行為を『こく』と呼ぶことから、木の表面を削ってできた木くずをこけらと呼ぶようになりました。
かつて建築された劇場はすべてが木造です。新築する際には、たくさんの木くず(こけら)が発生したことでしょう。劇場が完成したら、屋根に残った木くず(こけら)を払い落としてから興行を行う必要がありました。
このことから、新しくできた劇場やホールで行われる最初の興行をこけら落としと呼ぶようになったのです。
こけら落としを漢字で書くと
こけら落としを漢字で書く際には、誤字に注意が必要です。こけらを表す漢字は他の漢字に酷似しているため、誤字が起きやすくなっています。
こけら落としのこけらは『杮』と書きます。一見『柿(かき)』とよく似ていますが、両者は異なる漢字です。柿(かき)のつくりは漢字の『市』で、上部は『なべぶた』になっています。一方の杮(こけら)のつくりは、縦棒1本が突き抜ける形になっているのが特徴です。
柿(かき)と杮(こけら)は、一見すると同じに見える漢字ですが、表現したいものに合わせて明確に使い分けられています。こけら落としを漢字で表現したいときには注意しましょう。
こけら落としの使い方
言葉の使い方を知ることは、ボキャブラリーを増やす上で重要です。具体的な使い方を知って、日常生活で新しい言葉を使えるようになりましょう。
「こけら落とし〇〇」と使うことが多い
こけら落としという言葉は、後ろに名詞をつなげて『こけら落とし〇〇』という形で使うのが一般的です。
こけら落とし自体が『その劇場で行われる初興行』を表していますが、公演やコンサートなどの名詞の頭に付けて、『こけら落とし公演』『こけら落としコンサート』といった形で使われるケースが多く見られます。
こけら落としは演劇の世界で多く用いられてきた言葉ですが、『初めて行われる催し物』との意味合いが独り歩きした結果、スポーツイベントを行うスタジアムや競技場などに対しても使われるようになりました。このような場合は『こけら落とし試合』『こけら落とし大会』などの形で使われます。
こけら落としの例文
こけら落としという言葉を使った例文には、以下のようなものがあります。
- 今回の舞台は〇〇劇場のこけら落とし公演だから、絶対に失敗はできないぞ。
- こけら落とし公演のチケットに当選し、今からわくわくしています。
- 1月に控えるこけら落とし公演のチケットはプレミアムチケットとなった。
- 〇〇劇場のこけら落としを務められるとは、なんと名誉なことだろうか。
- 〇〇スタジアムのこけら落とし試合は、誰もが息を呑む白熱した一戦となった。
こけら落としは、演劇やコンサートに対して使われることが多い言葉です。近年では用法が広がり、スポーツの試合などにも用いられています。
こけら落としの関連語
類義語や対義語などの関連語に対する知識を深めておくと、言葉に関する知識が増強されます。関連語の知識を身に付けて、ボキャブラリーの強化を図りましょう。
類義語は「初興行」「オープニング」
初興行(はつこうぎょう)とは、新しく作られた劇場やホールなどの施設で最初に行う興行を指します。
興行とは、観客から料金を取って催すイベントのことです。演劇・コンサート・映画・相撲・スポーツイベント・サーカス・寄席などが興行に当たります。『新築・改築された劇場やホールで初めて行われるイベント』という点がこけら落としと初興行の共通点です。
オープニングはイベントや催し物のスタートを表します。言い換えるなら『開幕』『開演』『開場』などと表現できるでしょう。オープニングは『新しく作られた劇場や競技場で初めて行われる催し』との意味は薄いですが、『最初に催されるイベント』という点でこけら落としと共通しています。
対義語は「千秋楽」
千秋楽(せんしゅうらく)とは、演劇や相撲の最終日を表す言葉です。演劇の世界では『楽日』『楽』と略される場合もあります。千秋楽は、もともとは歌舞伎や相撲の世界で使われていた言葉です。『物事の最後』という意味合いがあることから、現在ではミュージカルやコンサートの最終日を表す言葉として定着しています。
千秋楽には『取り壊される劇場で行われる最後の公演』という意味はないので、厳密にはこけら落としの対義語とはいえません。ただ『最後の興行』という意味があることから、こけら落としの対義語としてよく挙げられます。
構成/編集部