民主化という大義で大胆なコストカットを断行
Twitterが上場後に黒字転換したのは2017年度4Qから。2015年にジャック・ドーシー氏が経営に復帰。動画アプリ「ヴァイン」からの撤退や、アプリ開発プラットフォーム「ファブリック」をGoogleに売却するなど、大胆なスリム化を進めます。
その成果が黒字転換として表れました。
事業をTwitterに集中したことが奏功したわけですが、中長期的には新陳代謝が進まないという別の課題を抱えていました。それがマスク氏の強硬な改革で明らかになったのです。
マスク氏は買収前から民主化という言葉を口にしていました。Twitterが多額の費用を投じ、タイムラインを“操作”していたことを熟知していたからでしょう。民主化という大義のもとであれば、広報部門の従業員が解雇されることにも納得がいきます。
今回のリストラによってマーケティングコストは大幅にカットできるはずです。
マスク氏はトランプ氏のアカウントを復活させる際にTwitter上でアンケートをとり、復活を望む声が多いという結果を得ると、「民衆の声は神の声」とコメントしました。民主化を進めるという大義を象徴する出来事です。
しかし、民主化を進めることで売上増にはつながりません。現に凍結されたアカウントを復活させたことで、大手企業が広告出稿を取りやめたと報じられています。企業イメージが損なわれるためです。
マスク氏は、この点を予想していたと考えられます。そもそも、Twitterは広告向きのプラットフォームではないことは前から明らかになっていました。それ以外の収益源を探す必要があります。
認証バッジの有料化は、Twitterのビジネスモデル転換の布石でしょう。
Twitterを買収する前のマスク氏は、政府や企業アカウントの一部有料化を示唆していました。Twitterは拡散力があるため、マーケティングで必須のツール。広告よりも、サブスクリプションモデルの方が中長期的な成長を望めます。
パラグ・アグラワル前CEOもそれに気づいており、機能追加によって売上を伸ばそうとしていました。しかし、マスク氏はビジネスモデルを転換することで、早期の伸張を実現しようとしています。
民主化という旗印のもとで大胆なコストカットを推し進め、機能追加という枝葉に目を向けずにビジネスモデルそのものの見直しを図るマスク氏の手腕は、見事というほかありません。
取材・文/不破 聡